第150話 異国情緒あふれる街
大当たりのお店を引けたことで、大満足のまま経由した街で一泊。
そこから更にもう一つ経由地を挟んでから、俺達は無事にクリンガルクの街へと辿り着いた。
「おっ、あの街がクリンガルクらしいぞ」
「うっひゃー! 王都も凄かったけど、クリンガルクも凄いね! 異国情緒溢れる街って感じ!」
「本当にそうですね。人の往来も凄いですし、疫病が蔓延しているとは思えない賑わいです」
アオイが言った通り、異国感が溢れている街並み。
王都はビオダスダールの上位互換って感じだったが、クリンガルクは全くの別系統の街って感じがする。
「提灯が綺麗! 屋台みたいなのも見える!」
「大陸の東側はこういった感じの街が多いみたいですね。クリンガルクはその国の移民によって盛り上がった街と聞きました」
「へー。ジーニアは詳しいんだな」
「出発までの間にクリンガルクのことを調べましたので。料理なんかも独特なものが多いと聞きましたね」
「美味しいなら食べてみたいな! でも、疫病が怖いから人混みには行きたくないかも!」
「確かにな。冒険者ギルドに行って情報を聞いたら、クリンガルクの中心部からは離れたい」
「残念ですが、討伐に向かう前に病に冒されて動けなくなったら元も子もないですからね」
入る前からワクワクするくらい珍しい街だし、ゆっくりと見学したい気持ちもあるが……ゆっくりする余裕はない。
先にドラゴンゾンビの討伐を行い、街を見学するのはその後だろう。
ということで、入門検査を行った後は街をチラ見する程度に留め、俺達は真っ先に冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドは街の中央にあり、大きな建物ということからも王都同様に権威を持っていることが分かる。
「大きな建物! ビオダスダールもこれぐらい大きくすればいいのにね!」
「無理だろ。街自体はそこそこ大きいけど、ビオダスダール近郊は平和すぎるからな。冒険者の価値があまり高くない」
「それ、グレアムのせいな感じするけど! 危険な魔物を一人で全部倒しちゃったもんね!」
「そう考えると中々難しい問題ですね。平和な方がいいに決まっていますが、危険な方が冒険者ギルドや冒険者の価値が高くなる。グレアムさんは事前に危険の芽を摘んでいるから、全く評価されないっていうのは少し理不尽に感じてしまいます」
「評価されたくて魔物を討伐した訳じゃないから、俺は別にどうでもいいけどな。……まぁでも、納得のいかない冒険者は多いだろうな。だから、ビオダスダールに冒険者が集まらないのかもしれない」
平和な街では冒険者の需要が低く、強い魔物もいないため冒険者が育たない。
ギルド長もよく嘆いているが、 こればかりはいくら俺が考えてもどうしようもできない。
「ベインに頼んで、自作自演で街に危機感を覚えさせればいいんじゃない? ベインはグレアムの手下みたいなもんだし、実際には危険じゃないけど冒険者の需要が高まる! 良い案だと思うけど!」
「絶対に駄目だ。ベインが汚れ役すぎるし、不安を抱えるというのは精神的にしんどいものがあるからな。平和なら平和でいいんだし、冒険者なんて本当は必要ない世界の方が正しい」
「えー! 良い案だと思ったのに……」
アオイの馬鹿な案を即却下しつつ、俺達は冒険者ギルドの中に入った。
外観だけでなく、内装もしっかりと造られていたが……冒険者自体はどこも同じで柄が悪いチンピラのような人が多い。
すれ違うだけで睨んでくる冒険者たちを無視しつつ、受付でギルド長へのアポを取ることにした。
意外にもすんなりと話を通してくれ、俺達はギルド長室へと案内された。
「ここのギルド長室も凄い場所にありますね」
「元ギルド長がグアンザだし、特注で作らせた可能性まであるな。部屋の感じが変だしやけに新しい」
「うわっ! 絶対にそうだ! 見栄っ張りのクズだったもんね!」
「そういえば、グアンザはクリンガルクに戻ってきているのでしょうか? 戻ってきているなら、会わないと駄目ですよね?」
「ギルド長から話を聞けた場合は会わなくていいとは思うが……聞けなかったら、グアンザから詳しい話を聞くことになるだろうな」
「うへー、会いたくない!」
アオイはベロを出しながら露骨に嫌な顔をしている。
改心したとはいえ、まだ許していないようだからな。
「失礼致します。お客様をお連れ致しました」
「ありがとうございます。ニックさんは戻っていいですよ」
「はい。失礼致します」
ギルド長は思いのほか、物腰の柔らかそうな人。
見た目も優男といった感じで、糸目で常に笑顔な感じの眼鏡をかけた三十代くらいの男性。
ただ体はかなり鍛えられており、袖から見える腕や手は傷だらけ。
ギルド長やサリースと同じ、冒険者上がりの武闘派ギルド長のようだ。
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加筆も加わっており、web版を読んでくださっている方でも面白く読めると思いますので、是非お手に取って頂けたら幸いです!
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