第151話 敵視
ニコニコとしているが、敵意を隠し切れていない。
来る前から分かってはいたが、やはり俺達は歓迎されていないようだ。
「……さてと、あなたたちは一体どなたなのでしょうか?」
「俺達はビオダスダールからやってきた冒険者だ。この街に疫病によって苦しんでいるという人達が大勢いると聞いて、解決するためにやってきた」
「やはりビオダスダールから来た方達でしたか。私はこの街のギルド長を務めております。グレグと申します。そして、あなたたちは疫病を解決するためにやってきた――と? 冒険者なのに医療の知識があるのですか?」
「いや、違う。疫病の原因があるという話を聞いて、その原因を断ちに来たんだ」
「その出鱈目な話は誰から聞いたのですか? 疫病の原因については、この街のギルド長である私ですらまだ突き止められていないのですよ? ……あー、いえ、一人だけいましたね。その原因を突き止めたと吹聴していた人物が」
その言葉と共に笑顔が消え、目を見開いて睨みつけるように見てきたグレグ。
先ほどまでは敵意を隠そうとはしてくれていたが、今では完全に殺気混じりの敵意を向けてきている。
俺達をグアンザの使いと判断して、敵と見做したのであろう。
これはまず誤解から解かないといけなさそうだが、解けるのか非常に不安。
「グレグは勘違いをしている。さっき言っておくが、俺達はグアンザとは一切関係ない」
「そうそう! グアンザなんて嫌いだから!」
「やはりグアンザさんとはお知り合いでしたか。先日、グアンザさんがビオダスダールに向かったという情報を聞きましてね。ビオダスダールからやってきたという話を聞いてピンと来たのです。疫病の原因があるから私に任せてほしいと、グアンザさんもあなたたちと同じことを言っておりましてね。それに加えて、あなたたちはグアンザさんの名前をここまで一度も出さなかった。これだけ状況が同じでも、まだグアンザさんと関係ないと言えますか?」
これはどう弁解しても信じてもらえることはないだろう。
頭ごなしに否定してくるタイプではないからこそ、説き伏せることは不可能だと思ってしまう。
「グアンザから話を聞いたことは確かに事実だ。ただ、グアンザと俺達が動いていることは関係ないと言っているだけだ」
「残念ですが、その言葉を信じることはできません。疫病よりも厄介なのは、再びグアンザさんがこのギルド長の席に着くことですので。それに……この街には優秀な冒険者も多いです。仮に疫病に原因があったとしても私達だけで解決できますので、ご足労頂いたところ申し訳ございませんが、どうぞお帰りください」
「なによそれ! せっかく来たのに帰らせることないじゃん! それにグアンザと仲間って心外すぎるから!」
「まぁ落ち着け。何を言っても無駄だろう」
「じゃあいいよ! 勝手に原因突き止めて、勝手に帰るから!」
笑顔のまま返答をしなくなったグレグに対し、アオイは思いのたけをぶつけてから部屋から飛び出していった。
初めての街だし、飛び出して行ったところで向かう先なんてないはずなんだけどな。
「ということだから、協力してもらえないなら勝手に動く。俺達の手柄とかにもしないから静観してくれ」
俺もそう言い残し、ジーニアと共に出て行ったアオイを追うことにした。
ギルド長から敵視される可能性が高いとは言われていたが、正直予想以上に最初から警戒されていたな。
それにしても……疫病よりもグアンザがギルド長に復帰する方が害ってのは凄い。
あの発言だけで、グアンザが冒険者ギルドのギルド長という立場を利用し、悪行の数々を行ってきたことが分かる。
「おい、アオイ。勝手にどっか行くな。というか、どこに向かっているんだよ」
「分かんない! でも、ムカつくから体が動いちゃってるの! ――本当にムカつく
つく! 長い時間をかけて来たのに、まるで犯罪者かと思うぐらい邪険にされた上、グアンザの仲間扱いまでされるんだもん!」
「確かにあの態度は酷かったです。本当にグアンザに協力して来た訳じゃないのに」
「仕方ないと思うぞ。俺達も逆の立場だったらきっと信じることはできなかっただろうしな。全部、グアンザが悪い」
「それはそう! グアンザはやっぱり許さない!」
「どんだけ悪い事をしてきたんですかね? 王都で会った時の態度を考えると、とんでもないことをやっていそうですね」
「だろうな。じゃないと、あれだけ嫌われることはない」
流石にグレグが悪く思われるのは可哀想。
二人の敵意をグアンザに向け直したことで、ようやく気持ちも落ち着いてきた様子。
「そう考えると、あのグレグってギルド長も被害者なのかな?」
「だと思うぞ。俺達がグアンザと関係ないと信じたくても信じられないんだと思う。とにかく俺達だけで動くことは伝えてきた訳だし、勝手に動かせてもらうとしよう」
「ですね。まずは情報集めからでしょうか? この街といえば……確か【紅の薔薇】さん達がいるはずですよね?」
「グアンザに連れられていたから、きっとこの街を拠点にしているはず。一応顔見知りな訳だし、【紅の薔薇】たちから話を聞くことにしよう」
「賛成! 【紅の薔薇】なら私達とグアンザの不仲も知っているし、協力してくれる可能性が高いと思う!」
「なら、まずは【紅の薔薇】探しからだな」
ということで、俺達はこの街のどこかにいるであろう【紅の薔薇】を探すことに決めた。
Sランク冒険者パーティと言っていたし、その上で女性のみで構成されている。
きっと知名度も高いだろうし、そんなに労力をかけずに見つけられるはずだ。
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ここまでお読み頂きありがとうございます。
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