問うに落ちず、語るに落ちる、騙り尽くして落とし込む
「――――――
倒れたビルが一望できる屋上で唐突に、品内先輩は質問した。
僕はそれにすこし戸惑いつつも、返答を返す。
「⋯⋯えぇ、まぁ」
こう書けばそんなに大したことができなさそうにも思えるが、上記二つはあくまでも基礎的な部分であり、本質的な部分はまた別にあると思われる。
なにしろあの口ぶりで、あの自信ぶりだ。もしかしたら基本的な能力ではなくて副産物なのかもしれない。
「少なくとも僕はそう推測しているけれど、実際のところはどうなんだい先輩」
「察しが良いわね後輩、彼女が語っていた侵食と混合はあくまでも基礎よ」
「へぇ、それじゃあ本領があるってことかい」
かつて
それがどのようなものかは僕は聞いたことはないけれど、少なくともそれ相応の理由があるだろうし、それとなく推理ができる。
「いい推理ね、悪くないしむしろ好ましくさえある推理よ。まぁ彼女の場合は意図的に隠していて、言ってみれば
「なるほど、
「俗に言うエリクサー症候群みたいなものね」
「一気に俗っぽくなっちゃった」
まぁ、僕はゲームを趣味としているから伝わるには伝わるが。
「しかし随分と勿体ぶるんだね先輩、無知蒙昧な僕はそろそろあの戦場にいかなければならないし僕に教えてくれたっていいんじゃないかい?」
「えぇそうね、でも今回は実例を見せながら教えてあげるわ」
傾聴なさい、と言ってから品内先輩はビルを指さした。
「
――――――――――――――――――――
「――――――さぁさぁいざいざご笑覧あれ!」
「是なるは
――――――ずるり
その姿を見た
すこしばかり眉を動かしたようにも見えて、その表情の動きは彼女の数少ない人間性が読み取れた。
だが彼女は直ぐに機械のような無表情に戻り、カチリと鯉口を鳴らしてから、両手を交差させて
ぬるり――――――
只、全力で振るった
つもりだった。
空鳴に向けられて放たれたようとされた、その一撃は鞘から抜かれることがなかった。
抜こうとしても見えない縄に縫い付けられたかのごとく、動きが止まっているのだ。
その光景に僕が息を呑んだのは言うまでもない。
「いやぁ、馬鹿正直に私を狙ってくれてご苦労!褒美に私を狙ったことを後悔させてあげるよっ!」
これには
鉄面皮とも称されるほどに動かなかった顔に、驚愕の感情が少しだけとはいえ浮かんだのだ。
しかしその驚愕は一瞬、時間にしてみれば一秒にも満たない極小の時間だろう。
だが、歴戦の戦士である二人はその隙を見逃さない。
方万 刀刃の真隣から突如として、地面から風紀委員長が現れる。
というよりも、這い出ずる。
真っ黒な液体を付着させつつ、巨大な十字架を振りかぶった状態で現れたのだ。
そのような状況で現れた彼の一撃を、一体どうやって避けられるのだろうか?
「っ!?」
しかし十字架に叩かれて吹き飛ばされた彼女が驚いたのは、万くんがいきなり現れたことではなく、十字架の方である。
なにしろ我が身を叩いた十字架が棺のように開き、その中から無数の鎖が伸びてきたのだ。
蛇のように狡猾なうねりを見せながら、明らかに物理学的事象から外れた、自身の身体を縛り付けようと動いてくるのだから、その光景を見て驚くなという方が無理だろう。
しかしそこは特定監視対象生徒と言うべきか、直ぐに彼女は思考を切り替えてその鎖をはたき落とそうと両手に握った野太刀を振り回そうとした。
ただし、振り回そうとしただけである。
不思議なことに振り抜こうとする瞬間に、その動きは止まったのだ。
「おいおい、折角のチャンスを逃すわけないじゃん?せっかくの初見殺しなのにさ」
無数の鎖が鍛えられてなお細い五体を持つ彼女に纏わりつく。
そうして、
「
「普段だったら
「早くしてくれてめえら!いくら俺でもこいつは長く拘束できねぇからなぁ!!」
「だからこそ、俺ちゃんがいる」
全身に巻き付けたKEEP OUTのテープを巧みに操って、彼女の両腕に絡ませるように巻き付ける。
「鎖とテープによる二重拘束に風紀委員長の概念能力による拘束だぁ!いくらお前といえどこれは破れねぇよなぁ!」
「今だけはお前に感謝してやるぜ特定監視対象の馬鹿二人ぃ!後は任せた!舌先三寸で語り尽くすのはてめえの仕事だぁ!」
僕は、
――――――――――――――――――――
あとがき
虚言廻しは名乗らない 人類愛好委員会 @kataritezaregoto
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