夫の帰りを待つ

藍実

わたしをひとりにしないで

最初から私は距離を置かずに

解決しようとした

今までの喧嘩での距離の置き方とは

規模が違うから


ただ、離れて分かるもあるから、と

距離を置きたいという

相手の気持ちを尊重した

尊重せざるを得ない状況だった


質問しても返事はいつだって曖昧


そしてある日

連絡は無視しないように、という

警察からの指示は

何も聞いてないかように

LINEは無視され続け

いつどこで何をしているか

何も掴めない日々が続く


距離置いてる期間は

果たして意味があるのだろうか

距離を置き続けることが

必ずしも正しいとは限らない

結局は2人で話し合わないと意味がない


少し体調が悪くても仕事に行く

報われてほしいと

心から願ったが叶わなかった


食欲なく、食べ物が喉を通らない

ただでさえなかなか寝付けないのに

猫が朝早くから私を起こす

元気を出して、といっているのか

ご飯を出して、といっているのか


どんなに仕事を頑張って

疲れて帰ってきても

自分のものしかない洗濯をしても

猫のトイレを綺麗に掃除しても

光のない生き地獄のような感覚


距離を置くことで

再確認したことはある

近くにいないと分からないこともある

歩み寄ろうともせず何が分かるんだ

決めつけるな

気持ちは第三者に代弁させるな

自分で言え


悪いことばかりが全てじゃない

今までたくさん乗り越えてきた

喜怒哀楽すべて一緒にいた

分け合ってきた

味方でいてくれた人を

粗末にするべきではない

未熟だからという言葉で片付けるな

完璧人間なんてどこにもいない


距離置くことが何の解決になるの?

一緒にいて起きた問題は

話し合って解決するべきでは?

またいつか

他の問題が起きたらまた距離置くの?


そんなんだったら何も解決にならない

ただ時間使って物事を

美化しているだけに過ぎない

感情を落ち着かせるのは大事だけど

根本的な問題の解決に

繋がらないのであれば意味なし

どれだけ時間をおいたって

相手も自分も発酵食品じゃない


私はたとえ喧嘩をしても

誰かに言いたくないタイプ


愚痴を吐いて一時的に

スッキリしたとしても

「でも結局仲直りするんでしょ」

っていう相手の目

人は所詮、相手のバットエンドを

面白がる生き物

それに、第三者に愚痴られたくない

何を知ってるんだって感じ

大事な人のことを悪く言う人は

嫌いって思っちゃう


だから、いつも頼る先は占い

結果で一喜一憂


外は、秋を通り越して冬の匂いがする


きっと他にもいい人はいるかもしれない

幸せにしてくれる人はいるかもしれない

ただそれでも一緒にいたいと思った

2人でいれば

悲しみと辛さは2倍だけど

そのぶん楽しさも2倍でしょ


たくさん話しかけて

元気付けようとしてくれるママ

ありがとう

こんな娘でごめんなさい


夢や理想が高い私

結婚してから

今までたくさんハードルを

下げて生きてきた


早く帰ってきて

会いたい話したいっていう気持ち

いつどこで何してるの

っていう不安は

何してるんだろう

事故に遭ってないかな

という心配に変わる

それに、離婚が確定したわけじゃない

死んだわけじゃないから

ってまたハードルを下げる


いくら送り続けてもつかない既読

安否確認のために作られた既読システム


わざとつけないなら

LINE運営側も不本意である

私の心配をよそに

一体何をしているんだろうか

このまま時間が過ぎていって

やっぱり元には戻れないと

言われたとしたら

私の今までは何だったんだろう

毎日どんな気持ちで

過ごしていることか


神様、私の願いが叶いますように

お助けください


小さい頃は

親が敷いてくれたレールの上を歩いて

自分で物事を決められるように

なるまで成長した

それからは自分でレールを作って

何度も何度も自分で壊しては

修理してここまできた

修理の仕方が分からなければ

周りの人に聞く

自分で直せない時は

直してくれる人がきっといる

どこまでも真っ直ぐなレール

なんて存在しない

曲がったって、入り組んだって

それも悪くない

そのレールで前に進み続けること

には変わりない

時には後戻りしてしまうかもしれない

そんなこともあったっていい

道を間違えたら方向転換すればいい

まだ終点に着くのは早すぎる

今はただ、ひとつの大きい駅に

停まっているだけ

列車には、たくさんの思い出と

希望と夢が詰まってる


2人で作った厚くて高い壁は

1人では乗り越えられない

2人で話し合って、協力してこそ

乗り越えられる

その厚くて高い壁の向こうには

もしかしたら大きな魔物がいるかもしれない

だけど2人でならアイデアも2つ

1人だったら怖くて立ち向かえない

強そうな魔物

2人でだったら勇気がでて

倒せるかもしれない

そんな魔物も、もしかしたら

味方になるかもしれない

どんなに悪い魔物でも

誰かにとっては救いの存在

見方はそれぞれだし

受け取り方もいろんな面がある


大好きな趣味を

泣く泣く手放してここにきた

楽しい未来が待ってると

期待して手放した

寂しいけど、仕方ないと言い聞かせた


片手で収まる

数百円に変わってしまった

なにもかも離れていってしまった

わたしをひとりにしないで


死んだら楽になるかもしれない

でも自分が死んだあと

周りの人に迷惑がかかること

を考えたり

悲しむ人がいるかもしれない

って思ったりして

涙がでることは

まだこの世界に未練がある

からなのかもしれない

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夫の帰りを待つ 藍実 @aimi84

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