第6話 地球の住人になるのは誰か

 宇宙は、知的生命体の誕生を想定してビッグバンを起こしたのか。この宇宙は、破壊の連続だ。この宇宙は、地球という知的生命体が誕生したことを喜んでいるのか。地球人は、孤児として系外惑星のどこかに兄弟姉妹や親類、知人などがいるのではないかと探している。天文学者は地球が住めなくなる星なので、生き残りをかけた惑星探査をしている。



 大国は原子力潜水艦に10年分の食糧と選ばれし500人を乗船させる。そこには、大統領はいなく、技術者と配偶者だけで、10万年後に人類を残すことを託した。しかし、こんな事を氷期に突入してから知らされるなんて、経済至上主義で成り立たされてきた現実世界の最期の方策だった。地上の巨大シェルターには大統領と共に経済界の選ばれし1万人が収容される。ここは巨大都市空間で、地底人として生き残るためのあらゆる技術が備えられていた。また、100万人のシェルターも各地に建設されていて、選ばれし人たちが収容される。しかし、10万年後に人類を繋ぐ保障は何もない。

 覇権国家は小規模なシェルターで何年も持たないだろう。民主国家は、小集団で事前準備をして対処できた者たちが、理想の社会を10万年後に残そうとしている。戦争のない、男女差別のない、人種差別のない、ジェンダー差別のない、貧富の格差などがない、平和で始まり幸福な世界を築き上げるだろうか。


 各国の政府は、氷期の到来を国民に隠していた。それは、これだけの人口を助けられないからだ。知らないのは国民だけで、密かに救済される選ばれし者たちのシェルターは建造されている。しかし、経済だけは人口自然減少の中で維持されている。専制国家が増えているのは、そのためだ。生き残れるのは一部の者たちだけだから。地球温暖化を止めたから、災害が防げるというものでもない。その後に起こる氷期は、間氷期の自然災害の比ではない激しい気候イベントとなる。それは、人類消滅の最大の問題となるはず。


 いつもと変わらない、日々が続いている。このままいくと軍拡と少子化問題に明け暮れ、氷期の対策をせずに人口の多いまま世界は氷期に突入する。動物は察知していた。いや、人類だって遺伝子に氷期の対処能力は刻まれているはず。だからこそ、危機意識を持った者たちの計画組織は、世界に点在できた。しかし、それぞれの理念の相違は計り知れなく、統合するのは危険だった。


 10万年後の地球の住人は、地球人なのか宇宙人なのかそれはわからない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

奇跡の惑星 地球 本条想子 @s3u8k

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る