第5話

 放課後、1日の授業が終わり生徒たちが自由になる頃。

 中堅STI・幕治文化学院まくはりぶんかがくいんの学生寮そばにある食堂では、生徒たちが勉強やお喋りなど思い思いに過ごしている。

 そんな中、壁がガラス張りで明るい食堂の片隅で、5人の生徒が丸テーブルを囲んで話し合っている。周囲の明るい様子と打って変わって、このテーブルの雰囲気はどこかシリアスだった。

「だーかーら、あたしが隊長やるって言ってるの‼」

「いーや、強くてしっかりしてる奴が隊長になるべきだ」

 テーブルを挟んで、2つ結びの少女とメガネの少年が椅子から立ち上がっていがみ合っている。2人はそれぞれの意見をぶつけ合って全く譲る気がないようだ。そしてその様子を、隣から2人の少女と1人の少年が見守っていた。

「なんてったって、この部隊を作ろーって最初に言い出したのはあたしなんだからあたしが隊長になるべきなんだよ!」

 そう言って髪を2つ結びにした黄色いパーカーに黄色いネクタイの少女、仁戸田にへだ 紀奈のりなは胸を張る。しかし彼女の目の前に立つ深緑のセーターに緑のネクタイでメガネの少年、熊橋くまはし 寵也ちょうやはなんだよそれと不満げに言う。

「自分が始めたことだから自分がやるとか根拠が薄すぎる」

 あと、と寵也は続ける。

「お前は隊長に向いてない」

「なんで⁈」

 あたしのどこがダメなの⁈と紀奈は声を上げる。寵也は1つため息をつく。

「…例えば1人で突っ走る所とか」

「うぐっ」

 紀奈は思わずうろたえる。

「べ、別にこないだはそうでもなかったじゃん…」

 紀奈はそう言って俯くが、寵也は吞海どんかいが言ってたぞと続ける。

「少し前の戦いで単身カゲに突っ込んでったって」

 そんな奴に部隊を任せられるかよ、と寵也はそっぽを向く。紀奈はともえ…と隣に座る臙脂色のニットベストに赤いリボンタイでサイドテールの少女、吞海 巴の方を見やる。巴は何よと言わんばかりな表情をしていた。

「じゃ、じゃあ寵也はなんで強い人に隊長になってほしいの?」

 それだけ譲らないのならそれ相応の理由があると思うんだけど、と紀奈は不満げに訊く。

「理由?」

 そりゃあ…と寵也は少し考え込む。

「強くないとみんなで生き残れるかもしれないから?」

「えーそれだけ~?」

 想像と違う答えに紀奈は拍子抜けする。

「もっと他にないの~⁇」

 紀奈は椅子に勢いよく座って尋ねるが、寵也は紀奈から目を逸らして続ける。

「確かに他の理由もあるけど…」

 1番大きいのがそれってだけだな、と寵也は淡々と言い切った。しかし紀奈は納得がいかないらしく、え~と嫌そうな顔をする。

「寵也だって根拠が薄いじゃーん」

 それだったらあたしの案がいいよ~と紀奈は口を尖らせた。

「ねぇ?」

 みんな、と紀奈は寵也との言い合いを見守っていた3人に目を向ける。3人は思わず目をぱちくりさせた後、少し考え込んだ。

「…私は熊橋くんの意見に賛成よ」

 巴はポツリと呟く。

「いくらスパークラーが光の力を持つが故にカゲに侵蝕されないとは言え、カゲに対して無敵とは言えないわ」

 戦う上で隊長を失ってしまうのは部隊において痛手よ、と巴は続ける。

「それに強い人が隊長になることで、部隊全体の能力を引き上げることができるわ」

 そういう訳で、私は熊橋くんに賛成と巴は言い切る。

 寵也は巴の言葉にやっぱりなと頷く。それを見て紀奈は落胆するが、今度はピンクのニットカーディガンにピンクのリボンタイを身に着けた少年、福貴迫ふきさこ はずむがはいはーい‼と手を挙げる。

「ボクは紀奈の意見に賛成!」

 だってこの部隊を作り始めたのは紀奈だし、と弾は明るく言う。紀奈は弾…!と明るい顔をし、寵也は顔をしかめた。

「それにただ強い人に引っ張ってもらうだけじゃつまんないし!」

 あえて紀奈に引っ張ってもらった方が面白いかもよ~と弾は笑った。紀奈はそれを見て嬉しそうな顔をするが、寵也はふてくされたような顔をした。

「みあきちはどう?」

 不意に弾が話を振ったので、肩につかない程度の髪に水引のような飾りをつけた、灰色のブレザーとスカートに水色のリボンを身に着けた少女、加賀屋かがや 水晶みあきはハッとしたように顔を上げる。

「紀奈と寵也、どっちの意見がいーい?」

 弾がそう笑いかけると、水晶は暫くの沈黙ののち…別に、と呟いた。

「どっちでもいい、かな」

 水晶の言葉に紀奈、巴、弾、寵也の4人は驚いたような顔をする。

「…これで2対2ね」

 巴はポツリとこぼして椅子に座りなおす。

「部隊の最小構成人数が集まったから部隊名と部隊長を決めようとしたのに、これじゃあらちが明かないわ」

 巴がそう言うと、紀奈は寵也が悪いんだよ~と口を尖らせる。

「寵也が頑固だから話が進まないの~」

 紀奈の言葉になっ!と寵也は驚く。

「仁戸田が懲りないのが悪いんだよ!」

 お前が身を引けば済むだけの話だってのにと寵也は腕を組む。紀奈はそんなことないもん!とテーブルから身を乗り出す。

 2人はテーブルを挟んで睨みあった。巴はその様子を見てため息をつき、弾はまぁまぁ2人共…となだめようとする。水晶はその様子をポカンとした様子で見ていたがふと、ねぇと寵也に話しかける。その言葉で後の4人は彼女の方を見た。

「熊橋くんは強い人が隊長になるべきって言ってるけど…その強い人って、例えば誰なの?」

 水晶の言葉に確かにと弾が呟く。

「寵也はその辺に関して何も言ってないよね」

 弾がそう言うと巴はそう言えば…と顎に手を当てる。

「ね、具体的には誰なの⁇」

 教えて寵也、と弾は寵也に目を向ける。寵也以外の一同は彼に注目し、寵也は一瞬驚いたような顔をした。

「そ、それは…」

「それは?」

 興味ありげに尋ねる弾に対し、寵也の目は泳ぐ。やがて寵也はなんとも言えない面持ちでこう言った。

「これから考える」

「えー何それ~」

 つまり何も考えてないってことじゃーんと紀奈は声を上げる。寵也は仕方ねぇだろと返す。

「まだ俺たち仲間になってから日が浅いんだし」

 分からないことも多いからなと寵也はそっぽを向く。それを見て紀奈はじゃああたしの案の方がいいじゃん!と明るく言う。

「早めに隊長を決めた方が早く部隊もまとまるかもだし」

 善は急げってよく言うじゃん?と紀奈は笑う。しかし寵也は不満げだ。

「じゃ、じゃあボクが隊長になるのは⁇」

 よく強いって言われるし…と不意に弾が手を挙げる。だが寵也はすぐに却下と跳ねのけた。

「え~どうして~?」

「だってお前自由過ぎるから」

「そんな~」

 寵也に否定されて、弾はふてくされる。

「じゃあさじゃあさ、それならあたしがやった方がよくない?」

 弾がダメって言うならそっちの方がいいよ~と紀奈は笑う。

「ねぇみんな?」

 紀奈が皆に同意を求めると、弾は明るくうん!と頷き、巴は確かにそうかもねと呟く。水晶はうーんと考え込む。

「…なんだよ」

 仁戸田の案が優勢かよと寵也はこぼす。それを見て紀奈はえー文句~?と尋ねた。

「まぁ文句っちゃ文句だな」

 お前の案は非合理的だしと寵也は椅子に座る。それに対し紀奈は非合理的って…!と椅子から立ち上がる。

「ふわっとした理由で強さにこだわる寵也の方が非合理的だよ!」

 ていうかなんでそんなに強さにこだわるの⁈と紀奈はテーブルに両手をつく。寵也は驚いたような顔をした。

「…そんなの、どうでもいいだろ」

 暫しの沈黙ののち寵也はそうこぼすが、紀奈はどうでもよくない‼と言い返した。

「これは、あたしたちの部隊みんなの問題なの‼」

 だからちゃんと教えて!と紀奈は声を張る。寵也は思わず俯いて黙り込むが、やがてもういいと呟いた。

 紀奈はえっ、と驚く。

「お前らの好きにしろ」

 そう言って椅子から立ち上がると、寵也は椅子にかけていたリュックサックを背負ってテーブルから離れた。紀奈はあ、ちょっと…と呼び留めようとしたが、彼はそのまま食堂から出て行ってしまった。

 水晶たち4人の間に、微妙な沈黙が流れた。




 夜6時近く、すっかり日が暮れた頃。

 幕治文化学院の食堂は、夕食の時間になって多くの生徒や教職員で混み合っていた。

 そんな中、水晶、紀奈、巴、弾の4人は夜6時からの“出撃待機”の任務のため、早めの夕食を終えて寮へと向かっていた。

「そういえば、熊橋くん食堂にいなかったわね」

 電灯があるとは言え、薄暗いSTI敷地内を歩きながら巴がふと呟く。

「そりゃあ夕方にねちゃったからじゃない?」

 あたしたちと会うのが気まずいんだよ、と紀奈は歩きながら口を尖らせる。巴は、それはそうだけど…と心配そうな顔をする。

「それにしてもちょっと変だったじゃない」

 妙に強さに固執する所とか、と巴は続ける。

「それはきっとあたしのことが気に入らないとかじゃない?」

 多分だけどと紀奈は付け足す。巴はどうかしら…と言うが、ふと弾にねぇ福貴迫くんと話しかける。

「あなた熊橋くんと寮で同室って言ってたけど…」

 彼、寮にいたかしら?と巴は尋ねる。弾はえ、寵也ー?と巴の方を見る。

「ボクが夕飯前に荷物を置きに寮へ帰った時はいなかったよー」

 まぁどっかにいるんじゃないかなと弾はのん気に笑う。

「さすがに管轄地域の外には行ってないと思うけど」

 スパークラーが所属STIの管轄地域外の出る時は手続きが必要だしと弾は後頭部に手を回す。巴はそうと頷く。

「…でもさ、ボク寵也が強さにこだわる理由、分かる気がするんだよね」

 不意に弾がそう言いだしたので、水晶たち3人はぴたと足を止める。弾はそれに気付いて、あーこっちの話と立ち止まる。

「当人はあまり言いたがらないけど、寵也は昔カゲ災害で家族を失ったことがあるからさ」

 だから“強さ”にこだわるんだと思う、と弾は続ける。

「もう2度と、周囲の人を失わないために…」

 弾の言葉に水晶、紀奈、巴の3人は複雑な表情をする。それに気付いた弾はあ、ゴメン!と手を合わせる。

「暗い話しちゃったね」

 あんまり気にしないで!と弾は笑う。

「寵也もあまり気にしてほしくないみたいだか…」

 弾がそう言いかけた時、不意にサイレンが鳴り響き出した。

『管轄地域内でカゲの出現を確認、管轄地域内でカゲの出現を確認』

 出撃可能スパークラーは速やかに出撃せよ、場所は…と張り詰めた口調の放送が辺りに流れる。水晶たちは思わず顔を上げ、巴はスカートのポケットに入れていたスマホを見る。

「6時3分…」

 私たちの出撃当番が始まっているわね、と巴は呟く。

「行こう」

 みんな、と紀奈は仲間の顔を見る。水晶、巴、弾の3人は頷き、そして4人はP.A.がしまわれている“武器庫”へと向かった。




 日がすっかり暮れたあとの海沿いの公園にて。

 人気ひとけのない公園の街灯が、ハゼのような姿の小さなカゲの群れをぼんやりと照らしている。カゲたちは周囲を侵蝕しながら市民が住む市街地に向けて進んでいた。

 そんな公園に、幕治文化学院のスパークラーたちが続々と集まっている。スパークラーたちは各々の武器“P.A.”でカゲたちを倒し始めていた。その中には、深緑色のセーターを着たメガネの少年、寵也もいた。

「今回は小型種がほとんどとは言え数が多いな」

 早く倒さないと…と寵也はマシンガン型P.A.“コルバス”のトリガーを引く。体長50センチメートル程だからなのか小さく飛び跳ねて移動することしかできないカゲたちは、銃器型P.A.の連射で簡単に一掃できた。周囲のスパークラーたちも、次々とP.A.で小型のカゲを倒していく。

 しかし、寵也はふとあることに気付いた。

「そう言えば、ヌシはどこだ?」

 次々とカゲを倒していく内に、彼はカゲの群れのボス的存在“ヌシ”の姿が見えない事に気付いたのだ。ヌシはカゲの群れにその身体を維持するためのエネルギーを供給し指揮する役割を持ち、大抵は群れの中心にいることが多い。だが今回は、群れの中程に入ってもヌシらしき大型のカゲは見当たらない。

「ヌシが見当たらないとなると、厄介な…」

 寵也がそう呟きかけた時、不意に足元が持ち上がるような感覚に襲われた。足元を見ると、カゲに黒々と侵蝕された地面が急に盛り上がり、体高2メートル程の大型のカゲが現れた。寵也は急に足元にカゲが現れたことでバランスを崩してしまい、後ろへ向かって倒れる。慌てて立ち上がろうとするが、地上をうごめくカゲたちの上に落ちたことで思うように立ち上がれない。

 突如現れた大型のカゲに、周囲のスパークラーたちは呆然とする。

 寵也はひるむことなくコルバスのトリガーを引いて自分の周りのカゲたちを撃ち抜いていくが、数が多くて中々捌き切れていなかった。

「クソっ」

 寵也はカゲに揉まれながら思わず呟く。このままカゲを倒し続けても侵蝕された地面からカゲが発生し続けるため埒が明かないし、このままだと光の力が切れてしまう。しかし無理矢理カゲの群れを突破しようにも、この上手く立ち上がるのもままならない状況下では難しい。

「どうすりゃいいんだよ…」

 寵也はポツリとこぼす。ずっとコルバスを撃ち続けている内に、彼の身に宿る光の力の量は低下しつつあった。このままでは光の力が切れてカゲの侵蝕を受ける可能性がある。

 寵也は追い詰められていた。

「このままじゃ…」

 寵也がそう呟いた時、不意に寵也ーっ‼と聞き覚えのある声が聞こえた。寵也が声のした方を見ようとすると、ピンク色のカーディガンを着た人物が上から飛び込んできて彼の腕を掴み、そのまま飛び上がってカゲの群れから脱出した。

「ぐぇっ」

 寵也は突然のことに混乱し、バランスを取れないまま地上にしりもちをつく。彼が顔を上げると、ピンク色のカーディガンを着た小柄な少年、弾が振り向いていた。

「…なんだ、お前か」

 見慣れた顔に寵也は呆れた顔をする。そのそばには水晶、紀奈、巴の姿もあった。

 弾は寵也の顔を見てえへへと笑う。

「出撃する時に持たされる発信機の反応があったから助けただけだよ」

 だから拗ねないでと弾は笑いかけるが、寵也はちぇっと舌打ちする。

「お前らの助けはいらねぇってのに」

 強さなんてどうでもいいんだろ、と寵也はそっぽを向く。しかし弾はまぁまぁと返した。

「1人だけ強くたって、他の子が弱いままじゃ意味がないよ」

 みんなで集まって強ければ、それでいいんじゃない?と弾は続ける。

「そしたら、キミみたいに1人だけ生き残るってことはないと思うからさ」

 弾がそう言うと、寵也はお前…と顔を上げる。弾は少し笑って寵也の手を引き立ち上がらせた。

「ほら、早くヌシを倒そう!」

 ヌシがあの大きさなら“代表部隊”は来ないだろうし、と弾は手に持つハルバード型P.A.“ヘンゼル”を肩に担ぐ。

「ボクらなら、あれくらい倒せそうでしょ?」

 弾がそう訊くと、寵也は少し俯く。

「でも俺は光の力があまり残ってないし…」

 多分戦ってる内に切れそうなんだよなと寵也は呟く。弾や紀奈、巴は驚いたような顔をする。

「光の力が残り少ないって」

「これ以上の戦闘は難しいってことかしら」

 紀奈と巴はそう話し合うが、その様子を見ていた水晶があの、と話に入る。

「この間みたいに、熊橋くん以外のみんなでカゲへの道を拓いて、ヌシには熊橋くんがとどめを刺すっていうのは、どうかな」

 水晶の提案に、4人はハッとする。

「…それなら、光の力が残り少なくても戦える!」

 すごーいみあきち!と紀奈は飛び跳ねる。巴や弾もなるほどねとかおぉーと感嘆の声を上げる。寵也はゆっくりと立ち上がり、分かったと頷く。

「加賀屋の作戦で行こう」

 寵也はそう言うとヌシがいる方を見る。ヌシは地面を這うように公園の外へ向かっていた。

「やるぞ」

 寵也がそう呟くと、あとの4人はそれぞれ返事をし、カゲの群れに向かって駆け出した。水晶、巴、弾の3人はそれぞれの刃物型P.A.でカゲを切り裂き、紀奈はボウガン型P.A.“ダープン”でカゲのコアを撃ち抜いていく。そして寵也は4人が作った道を進んでいった。

 やがてヌシの前まで辿り着くと、寵也はコルバスをヌシの頭部に向けた。するとヌシは寵也の存在に気付き仲間を呼び寄せるように雄叫びを上げた。周囲のカゲたちは寵也に飛びかかろうとし、寵也はヌシにコルバスの照準を合わせていたがためにもろにその攻撃を受けそうになる。寵也は驚いてヌシへの照準をずらしてしまうが、そこへ水引のような髪飾りをつけた少女、水晶が飛び込んできてまとめてカゲを切り裂く。

「熊橋くん!」

 水晶の言葉に我に返った寵也はまたヌシの頭にコルバスを向け、トリガーを引いた。光の弾丸は真っ直ぐにヌシの脳天を貫き、ヌシはつんざくような悲鳴を上げて霧散し始めた。

「…やった」

 辺りのカゲたちもエネルギーの供給元を失い消滅していく中、寵也はポツリと呟いた。暫く彼は呆然と立ち尽くしていたが、不意に後ろから寵也ー‼と明るい声が聞こえてきた。彼が振り向くと同時に彼の身に弾が抱き着く。

「やったね~」

 弾が抱き着いてきた勢いで寵也は転びそうになり、恥ずかしいからよせ!と思わず抵抗した。その様子を見て紀奈と巴は微笑む。暫く寵也は弾を引きはがそうとしていたが、ふとこちらを見る水晶に気付いて弾を引きずりながら近付いた。

「加賀屋」

 今日はありがとな、と寵也は水晶に言う。水晶は驚いたような顔をした。

「お前がいなかったら、あのヌシを倒すのにもっとてこずってた」

 だから感謝してる、と寵也は水晶に笑いかけた。水晶はそこまでのことは…と呟くが、途中であ、と寵也が遮った。

「もしかしたら部隊長には加賀屋が向いてるかもしれないな」

「え」

 突然の言葉に水晶はポカンとする。寵也は続ける。

「作戦立てられるし、結構強いし」

 意外と向いてるかも…と寵也はこぼす。

「確かに向いてそう!」

 みあきち強いもんね!と紀奈は手を叩く。巴もそうねと頷き、寵也にくっつく弾もいいじゃんそれ~と楽しそうに笑う。

「じゃ、みあきちが隊長がいいって人!」

 手ー挙げて!と紀奈が促すと、巴、弾、寵也はスッと手を挙げる。水晶はええええと驚く。

「よーし、じゃ、みあきちが隊長ね~!」

 よろしく~と紀奈は水晶の肩に手を置く。じゃあ部隊名は加賀屋隊かな!と弾は水晶に笑いかける。

「…えー」

 水晶は呆然としたまま呟いた。




〈第5話 おわり〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鏡界輝譚スパークラー CRYSTAL テトモンよ永遠に!/佐久咲 @grandala0215

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画