第275話 腐呪龍
「龍の神の
「さあ……。これはあくまでも伝聞なので、真偽のほどはわからない。古エルフ族の里に拒絶された私は、その後、各地を回り、魔法の研鑽を積みながら、古エルフ族同様に、≪
また、遠くで巨大な何かが咆哮をあげた。
「ねえ、続きが気になるところだけどさ。こんなところで悠長に話をしている場合じゃない気がするんだけど……」
「伝説が確かであれば、問題ない。その怨霊は、もっと奥地の方にあるらしい枯れた世界樹の切り株のある場所の周囲を昼も夜もなく徘徊し、そこに近づきさえしなければ、襲っては来ないそうなのだ」
「それならいいけど……」
なんか微かに地面が揺れてる気がするし、発せられた咆哮も一度目よりも二度目の方がこちらに近づいていたような気がする。
「どこまで話したかな。そう、そしてその龍の神の怨霊だが、それはかつて、大勢の魔物と眷属たる
「なるほどね。でも、その伝説はどうやら少し違うみたいだよ」
「……そのようだな」
俺は、コマンド≪どうぐ≫の一覧から、ザイツ樫の長杖を取り出し、身構えた。
マルフレーサとブランカも戦闘の態勢を整える。
揺れが徐々に大きくなり、はるか先の方からこちらに物凄い勢いで迫るなにかの頭部のようなものが小さく見えた。
その小さく見えていたものが徐々に大きくはっきり見えるようになるまでに、さほどの時間はかからなかった。
長く、太い、新幹線くらいはあるんじゃないかという胴体とその側面に並んで生えている長い無数の触手のようなもの。
全身は醜く爛れて、その見た目は龍というより
その身に帯びるのは、どす黒い瘴気と腐臭。
そして、たしかに神々と同様の気が微かにではあるが感じられた。
その長い胴体をくねらせて蛇行し、周囲の岩などを蹴散らして向かってくるその姿は、あまりにも現実離れしすぎていて、まるで怪獣映画の一幕のようだった。
大地を抉り、地形をも変えてしまうほどの巨体に思わず引きつったような笑みが浮かんでしまう。
俺たちのすぐ近くまでやって来ると、≪腐呪龍≫はその鎌首をもたげ、俺たちを
『リィ……ィザ…………、オヴ……ロン……、ユルズマジ……トコジエ……ニ……ユルズマジ……リィ……ザァ……』
腐り溶けた皮膚の合間から除く≪腐呪龍≫の赤く光る八つの目には狂気と憎悪が宿り、その視線のすべてはなぜか俺に集中しているように感じた。
セーブポインター 何も起こらない物語 無能認定されて追放された勇者は異世界を往く 高村 樹 @lynx3novel
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