第4話 お縄
洋一は小学校6年の時、父親を山の事故で亡くした。母親の富子は農協に働きに出て、洋一と妹の和子を養ってきた。
遅い夕食が始まった。洋一は権蔵爺さんたちのおかしな行動について、少しだけ話した。富子と和子は笑っていたが、富子は急に我に返った。
「そう言や、今日な、爺さん、農協からお金引き出したんや」
昼間の出来事だった。まとまった金だった。
「そんなに、何に使うん?」
富子は訊いた。
「いろいろと支払いがあってのう」
権蔵爺さんの応対はしっかりしていた。
隆は洋一からその話を聞き、首を傾げた。
「洋ちゃん。仮に、権蔵爺さんたちがタヌキに化かされとるとしても、金を引き出すのはおかしいで。まあ、とにかく正気に返らせるのが先やなあ」
隆と洋一、修司は長老を訪ねた。
「狐狸の災いを取り除く
長老は不承不承ながら、実演してくれた。
土曜の登校時、通学班は背広姿の男とすれ違った。前日にも見かけた男だった。
権蔵夫婦が岩盤浴をしていると、最近入ったという番頭がやってきた。
「小杉様。月末なので……今月分の……お願いします。……で三万ほどになって……」
ちょうど、村の防災無線放送がかかって、番頭の話は聞き取れないところがあった。
「なんぞ、放送しとるぞ」
夫婦は耳を澄ませた。
「こちらは防災千足です。警察署からのお知らせです。最近、管内に特殊詐欺グループが出没しています。お金のからむ話には十分お気を付けください。ポンポコ、コンコン。ポンポコ、コンコン」
「怖い話やなあ、爺さん」
婆さんは眉をひそめた。
「なんで、爺さん、裸になっとるん? 何か着んと風邪ひくで」
「婆さんこそ、何か羽織らんと。素っ裸やないか」
番頭の姿はなかった。
富子の家に、兄の勲がバイクでやってきた。いつもよりスピードを出していた。
「警察はえらい騒ぎやったで。爺さんが大金引き出したことに疑問を抱いたとかで、富子に感謝状を出そうという話が持ち上がっとるで」
勲叔父さんは興奮していた。
まず富子が気づかなかったら、犯人はまんまと大金をせしめていただろう。
「隆たちも犯人の情報提供したので、表彰されるで。お手柄3中学生や」
叔父さんの言葉に、3人は思わず腰を上げかけた。
(無名の少年探偵団のままがいいか)
隆は2人を座らせた。
続 村の少年探偵・隆 その9 妖怪 山谷麻也 @mk1624
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