第125話 生の映画アメリカ編 その3

「クソッ!こっちもだめだ!」


イーライはそう叫んでハンドルを叩き、地図にバツ印をつける。


まだ続けるのこれ?


続けるよ。だって面白いんだもんよ。見ろよあの必死な顔!お笑いだろ!


うっわー、性格悪ぅーい!


じゃあ何だ?楽しくないのか?


いや?最高に楽しいけど?


「イーライ……」


「クソ、クソ、クソ……!どうしてだ、何で!」


「イーライ!」


「……サラ」


「もうやめて。今日は休みましょう?」


「……ああ」


はーん?なるほどね?サラちゃんは役立たずに見えて、イーライの希望であり、精神安定剤代わりでもある訳だ。


そうなるな。大の大人がガキに支えられてんだ。益々お笑いだな!


む……、あまりそう言う言い方は……。


何だぁ?文句あんのかヴォルフ?


いや……、彼も努力しているだろう?


とか何とか言っといて、別に助けたりはしないんだよなこいつ。


む、それはそうだろう。俺が利益を度外視して助けるのは家族とその周りだけだと決めている。俺は神ではない、全ての人間は救えないのだ。


こいつは、イーライは救えるんじゃないのか?


そうだな。だが、彼以外にも彼と同じような境遇の者は山ほどいるはずだ。彼だけを優先して救うことはしない。それでも、こんな姿を見るのは……、悲しい。


けっ、杓子定規だな。


む、ドイツ人だからな。




おえ?こいつら、二人とも眠り始めたけど、これ大丈夫なの?


何が?


夜の見張りとか。


ん、ああ。イーライが夜行性の鳥型モンスターをテイムしてるっぽいな。


なるほど、夜の見張りはテイムモンスターがするんだね。


そういうことだ。


それと、トラックの荷台の上で寝てる犬型のテイムモンスターも、『察知』系のスキル持ちだから、奇襲の心配はないだろうな。




で、次の日。


また移動?


その前に食事だ。


何食べてんの?


見とけ。


「サラ、食事だ」


「……うん」


うえ、温めてもいないチリビーンズの缶詰?ウォッチメンじゃないんだからさあ。


温めるほどの燃料の余裕はないんだよ。


魔法は……、あー……、そっか、ジョブが兵士系では無理か。


西部では、水属性魔法、ついで火属性魔法のスクロールの値段が極めて高い。魔導書なら、街一つと交換できると言われているほどだ。


確かに、水や火が魔力さえ有れば好きなだけ手に入るのって、何気にチートだよねえ。


そのチートをばら撒いたアホがハリアルシティの市長らしいんすよ(笑)


いやぁ〜、だって僕、毎朝熱いシャワーを浴びないと調子出ないからさあ。


「……美味しくない」


「すまない……。今日中には小さな街に着くはずだ。そこなら何かあるかもしれない……」


「……うん」


で、また移動して?


街に到着、と。


ジャンクを漁ってるねえ。


クラフトしてなんか作るんじゃねーの?


何作るの?愛?


ラヴをクラフトしたら、碌でもないのが出てきそうだがな。


ネクロノミコンとか?


悍ましい事実に気づいてしまったアーニーは、SAN値チェック10/50です。


えぇ……。僕は何を見てしまったんだい?ニャルに直接会ったとか?


「よし、これを薪にして……」


おお、温めた缶詰にありつけたようだね。


良かったなあ。




モンスターとも戦う。


「うおおおおっ!!!」


『グギャアアア!!!』


おっ、あれは……、水平二連ショットガン!良いねえ、シブいよ!


こういうサバイバルな事態では、精密な拳銃は信頼性に欠けるからなあ。


しかもあれ、ハンティング用のスラグ弾!あれだけのデカい弾なら、大型獣モンスターの胴体にも風穴が空くね!


近接戦闘ではトマホークか。


トマホークがあればどんなに楽なのやら。


そっちのトマホークじゃねえよ、斧の方だ。手投げできる程度の小型の斧で、モンスターの頭をパカパカ割っていってる。


蛮族って感じだねえ!


あとは手製の火炎瓶か。


アメリカは獣系モンスターが多いから、火炎瓶って意外と有効なんだよね。


そうだな、獣系は火が燃え移るとパニックになる。


逆にアンデッド系にはあんま効かないんだっけ?


いや、効きはするけど、燃やす攻撃は死ぬまでに時間がかかるからな。アンデッド系モンスターは怯まないし痛みを感じないから、とにかく物理的に手足をへし折るとかしないと止まらないんだよ。


へえー、中国はアンデッド系モンスターが多いんだっけ?


ああ、だからあっちでは剣とかで首を斬り飛ばしてる。


格闘武器強いよねこの世界。


そうだな。ってか、相対的に銃が弱くなったと言うべきじゃねえのか?


あー、そんな感じ。


にしてもやるなあこいつ。この辺のモンスターは、レベル三十帯のサベージビーストだぞ?


あー、ヒューストンでも出たアレ?


そうそう、虎くらいデカくて、ヒグマより強くて、チーターより速くて、ついでに馬くらいの体力があるバケモンだ。


レベル十くらいの奴なら、見つかっただけで確実に死ぬもんねえ。


それと、足手纏いを庇いながらも対等に戦うんだ。とんでもなくできるぞ、この男。


あー、いるよね。日本の異名持ちの……、『鬼武者』だっけ?あのサムライ君みたいに、ステータスの実数値以上に戦いが「上手い」タイプの奴。


そうそう。こいつもそのタイプだな。


見ろアレ。


「おおあっ!!!」


『ギイッ?!』


うわ、撃ち切った水平二連を投げつけて怯ませて、その隙に脳天にトマホーク?


「はああっ!!!」


『グエエッ?!!』


トマホーク刺さった死体をぶん投げて後ろに回り、マグナムを肛門に向けて斉射……。


……やるねぇ!FPSの主人公みたいにタフで、カッコいいじゃないか!んー、良いなぁ!


こいつにはタグ付けしとこうぜ。ブックマークだ。


うんうん!お気に入りだ!また今度、暇な時に覗いてみよう!

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