第7話・ハラグロ家は一枚上手、成り行き任せでルチエとカレンが学生結婚⁉〈ラスト〉

 ゼクロス部の合宿も終わり数日後──だいぶ、男の体にも慣れてきたルチエが男子寮の自分の部屋で一人。

 ベットに仰向けになって、魔法書を読みながら朝のルーティン化した。

 パンツの中に手を入れて、自分のシンボルの健康状態の確認をしていた。

 同室のザマはザクロスの早朝練習と言うことで、数十分前に部屋からいなくなった。

「今日も元気ですわね……わたくしのシンボル」


 朝のシンボルの状態確認は、キザムがルチエと同室のザマにも進言して行わせているルーティンだった。キザムの進言に納得したネトラレ・ザマは。


「確かにセイの主治医が言う通り、男のシンボルの状態はザクロスの練習にも影響がでますね……わかりました、セイと一緒に朝晩のルーティンにします」


 こうして、ザマとルチエは並んだベットに仰向けになって、互いに確認した男のメイン・シンボルとサブ・シンボルの状態を報告しあう関係になった。

 最初はパンツの中に手を入れて、軽く確認するだけの二人だったが。

 男同士の同部屋ということもあって、次第に遠慮なく大胆になってきて。

 男二人が下半身丸出しで、シンボル確認をするようになった。

(もう、面倒くさいので、下は脱いでしまいましょう)

 ベットで下半身露出したルチエ〈セイ〉は、自分のシンボルに元気になる魔法をかけて、手でではじめた。


「男になったばかりの最初は、少しおぞましい異物感がありましたけれど……慣れてくるとペットのような、いとおしささえ感じますわね……動きなさい、わたくしのシンボル」


 魔法をかけられた、ルチエのシンボルが、嬉しそうにはしゃいで動き回る。

「男の体は神秘ですわね……あら? 乳首ルビーを触っていたら固くなってきましたわ、今度はこの『一日勃起魔法』を乳首のルビーにもかけてみましょう」

 ルチエは、自分では気づかないうちに、傍目から見て変態化していた。


 ルチエが、魔法書を仰向けで読みながらシンボルと乳首ルビーを可愛がっていると部屋のドアが開く音が聞こえた。

 下半身丸出しで寝転がっていたルチエは、ザマが忘れ物を取りに、もどってきたと思って声をかける。

「ザマ、忘れ物か?」

 魔法書から視線を離して、ドアの方を見たルチエの表情が固まる。

 そこには、ハラグロ・カレンが立っていた。

(ど、どうして男子寮にカレンが?)


 ポカンとしていたカレンが、にこやかに微笑みながら言った。

「あたくし、セイさまの秘密の行為を目撃してしまいました……セイさまの秘密をつかんでしまいました、セイさまぁぁ!」

 ベットにダイブしたカレンが、ルチエ〈セイ〉に抱きついてキスをする。

「ち、ちょっと待って! シンボルが折れるぅ、んぐっんぐっ」

 ルチエは、自然とカレンを抱き締めて熱いキスをする。


 ルチエから、唾液の糸が引く唇を離してカレンが言った。

「セイさま、朝のルーティンの秘密をバラされたくなかったら。とりあえず、次の学園休日にあたくしとデートしてください……デートしてくれないと、セイさまが部屋で変なコトをしていたって学園中に言いふらしちゃいますよ」

「なっ⁉」

 この時、冷静に考えてみればカレンが男子寮に忍び込んで来たコトの方が重大な問題だったが。

 今のルチエには、そこまでの冷静な思考力は無かった。

 ルチエは半ば恫喝どうかつされているような形で、カレンとのデートを承諾した。

 

  ◇◇◇◇◇◇


 学園の休日──カレンに腕を抱きつかれ、並んで学園都市の町をデートして歩くルチエ〈セイ〉と、カレンの姿があった。

「セイさまぁ、もっとあたくしの腰をセイさまの方に引き寄せた、〝腰寄せ〟をしてください」

 弱みをにぎられたルチエは、言われるまに、カレンの腰に手を回して自分の方に引き寄せる。

(どうして、わたくしが、婚約者を奪った女とデートを)

 もう、ワケがわからなくなっていたルチエは、カレンにねだられて露店で売っていた化石のペンダントをプレゼントする。

 首に黒光りする恐竜の爪の化石ペンダントを巻いているカレンを見ている時、ルチエは股間の違和感を覚えた。


(どうして、女性のカレンを見てドキドキしてきて……あっ! ポジションが)

 ルチエはキザムに言われていた。男性にはそれぞれのシンボルの曲がり具合で決まった定位置があり。

 その定位置がズレていると、なんとなく気持ちが悪く落ち着かなくなる……と、言っていたのを思い出した。

(これがキザムが話していた、シンボルのポジション……本当に、いつもの決まった、曲がりの定位置に収まっていないと気持ち悪いですわ)


 ルチエは歩いていても、シンボルの位置がいつもと異なっている位置なので気持ちが悪くて落ち着かなかった。

(ポジションを直す場所も無いですし……こうなったら、最後の手段ですわ)

 ルチエは、とんでもない大胆な行動に出た。

 人の目が無い場所までカレンと一緒に並んで歩いてきたルチエは、いきなりカレンの体を壁際に押さえつけた。

「セイ……さま?」


 そして、ルチエはカレンを抱き締めると、体を密着させてキスをした。

「んぁ……んんっ……セイさま」

 ルチエの目的は、カレンとのキスではなく。

 カレンの腰骨を利用して、シンボルのポジション調整をして定位置に整えるコトだった。

(もう、少しで位置が……あっ、ポジションが定位置に、もどりましたわスッキリ)


 このルチエの大胆な行為が、カレンに誤解を招いた。

 昂揚こうようした顔でカレンは、セイ〈ルチエ〉に抱きついて言った。

「決めました、セイさまこそ、あたくしが探し求めていた運命の伴侶です──在学中に、あたくしと結婚してください」

「な、なにを言って?」


 興奮したカレンは、一方的に話し続ける。

「あたくし、この学園に入学した本当の目的は、ハラグロ家の未来を託せる婿養子を見つけるためでした……セイさまは、その条件にピッタリです。あたくしの腰にあんなに熱烈に、求愛で体をスリ寄せてきた精力的な殿方は初めてです」

「ち、違うさっきのは……ポジ」


 ハラグロ・カレンは思い立ったら、暴走が止まらなくなる女だった。

「結婚は早い方がいいですね……三週間後くらいに使えるように学園の敷地内にある、教会の屋外挙式場を確保しましょう、参列者への連絡もありますから忙しくなりますね……結婚してくれないと、朝のベットでセイさまが、やっていた変な行為を学園中にバラします」

「ひえぇぇぇぇぇぇ!」


  ◇◇◇◇◇◇


 三週間後──ハラグロ・カレンと、バキャロ・ウ・セイ〈ルチエ〉の二人が、神父の前で結婚の誓いをしてい姿があった。

 参列者の中には、ネトラレ・ザマやキザムやアスナルの姿もあった。

 神父が言った。

「それでは、誓いのキスを」

 唇を重ねるルチエとカレン。

 キスをしながらルチエは内心。

(どうして、こんなコトに……あぁ、もうワケがわかりません)

 そう思った。


  ◇◇◇◇◇◇


 祝福された結婚から半年後──学園を自主退学して、ハラグロ家に婿養子として入籍して、屋敷のバラ園でぼんやりしていた男体ルチエのところに。

 嬉しそうな顔でやって来たカレンが、下腹部をさすりながら言った。

「セイさま、喜んでください……セイさまのお子を受胎しました。あたくしの胎内にセイさまの子供が宿りました……これでハラグロ家は安泰です」


 やはり、ハラグロ・カレンはルチエよりも一枚も二枚も上手だった。

(子供? わたくしとカレンの? わたくし子供を作ってしまったのですか? あぁぁ、なんというコトを)

 婚約者を奪われた復讐を目論んでいたルチエは、したたかなカレンから完全に『ざまぁ返し』をされて、その場にショックで膝から崩れ込んだ。


  ◆◆◆◆◆◆


 その頃、ルチエがいなくなり一人部屋になった学園の男子寮の部屋では。

 この時間帯だけザマの願いで男装からメイド姿に一時的にもどったアスナルが、スカートの裾を持ち上げると床に置いた皿の上にしゃがんで言った。

「それでは、ザマさま……今朝のルーティンの産卵をします……んぁぁぁ」

 湯気が出ている無精卵を産むアスナルの姿に、ネトラレ・ザマは興奮する性癖の持ち主だった。


 産みたての卵を手にしたザマが、恍惚とした表情でアスナルの近くに立っている、今はザマの主治医になったキザムに向かって言った。

「産卵する女性最高です……しかしまさか、セイがルチエだったとは。真相を聞かされるまでわかりませんでした」

「ルチエさまは、ルチエさまなりに幸せなんですよ……ザマさまの近くに一緒にいるコトができましたから」

 キザムの言葉に、うなづいたザマがアスナルに言った。

「この、君が産んだ卵で朝食のハムエッグをお願いできますか」

「はいな、ザマさま……任せてください」


 翼竜が学園の上空を通過して、遠方から蒸気機関車の警笛が聞こえる……平和な異世界学園の朝がまた、はじまった。


  ~おわり~ 

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異世界学園の姫生徒会長【ウ・ルチエ嬢】は男になってイヤな女に復讐する 楠本恵士 @67853-_-

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