第6話・股間の痛み、男同志の合宿はデンジャラス……正しい復讐ザマァのやり方

 その日──ルチエは、キザムの部屋で、男性の体についての講義を受けていた。

「男性のメイン・シンボルの先端……つまり、尿道口からは、半透明な体液『カウパー腺液』が、み出てくる場合があります……これは、女性が興奮した時に潤いを保たせる、アノ体液と似通った役割と性質を持った体液で……聞いていますか? ルチエさま」

「えっ、あぁ聞いています……続けてください」

「では続けます、カウパー腺液にも粘度の違いがあり」


 この時のルチエは、うわの空で講義を聞きながら、談話室でのカレンとの熱いキスを思い出していた。

(流されるままに、カレンとあんな関係になってしまって……果たして良かったのでしょうか?)


 カレンへの復讐で、女子生徒にモテモテ男になってカレンに嫉妬ジェラシーさせるはコトは、ハラグロ・カレンにはダメージが少ないということはわかった。

 カレンは、邪魔な女は消していくタイプの腹黒な女だった。


 ネトラレ・ザマを男の体でカレンから奪い返すコトも、元婚約者のザマが男同士の趣味は無いのでムリだとわかった。


(そうなると、やはりハラグロ・カレンに男体のわたくしを惚れさせてから。捨ててやるのが一番の復讐になりますわね……わたくしが、カレンとつき合う? 女同士で? いえ、今のわたくしは体は男ですからこれは、男と女のつき合い? 考えれば考えるほどに、頭が痛くなってきましたわ)

 ルチエが考えていると、アスナルのルチエを呼ぶ声が聞こえた。


「……ですから、合宿のお荷物まとめておきました。ルチエさま、聞いていますか?」

「えっ、なんの話しですか?」

「明日から、ザクロス部の強化合宿があるって、連絡用紙が回ってきていたじゃないですか……もしかして、忘れていたのですか?」

「そう言えば、そんな用紙も見た記憶が……合宿? 男子ザクロス部で?」


 恐ろしいコトに気づいてしまったルチエは、椅子から立ち上がる。

「ち、ちょっと待ってください……合宿って、男子生徒しかいないんですわね。殿方の集団の中に、わたくしが入るのですか?」

「当たり前です……連絡用紙には、数人の相部屋って書いてありましたから」

 悲鳴を発するルチエ。

「ひえぇぇぇぇ!」


 数分後に気を取り直したルチエが、アスナルに訊ねる。

「合宿に持っていく荷物の中には当然、生理用品も入っているのでしょうね……周期的にそろそろ合宿と重なりますから」

「生理用品?」

 ルチエの顔をジッと見ながら、アスナルが言った。

「いらないでしょう、男に生理用品なんて」


 キザムがアスナルに続いて言った。

「いい機会じゃないですか男のコトを深く知るには合宿は最適です……ちなみに、わたしも特別医務者として合宿には同行するコトになっています、合宿から帰ってきたらルチエさまの主治医をしながらの学園医として、常任するコトにもなっています……これで、いつでもルチエさまのお体を診察できます……保健室で真っ裸に剥いて」

「ひぇぇぇぇ」


  ◇◇◇◇◇◇


 合宿初日、いきなり事件は起こった──ザクロスの練習中、クモのボールがルチエ〈セイ〉の股間を直撃した。

 股間を押えて、その場にうずくまるルチエ。

「ぐぬおぉぉぉぉ!」

 男のサブ・シンボルが、体の中に押し込まれるような鈍痛。

 ルチエの男体での急所初体験。


(これが噂の、殿方の急所の痛み……声が出ない、体の中に響く痛みですわ)

 心配して近づいてきたザマが、背後からルチエを抱えて。

 ピョンピョンと飛び上がらせる行動をする。

「どうですか? 痛みは少し収まりましたか?」

「だいぶ楽になりました……初体験でした、ザマさまも練習中にあんな痛みの体験を?」

「男性なら一度は体験しますよ」

「そうですか」

 ルチエはなんだか一歩、ザマに近づけたような気がして……嬉しくなった。


  ◇◇◇◇◇◇


 練習が終わり、ルチエは男子部員たちと一緒に脱衣場にいた。

 合宿場の入浴施設──室内風呂と露天風呂の両方が繋がっている掛け流しのいつでも入浴可能な天然温泉。


 ザクロス部員の男子生徒は、脱衣場で雑談をしながら躊躇ちゅうちょなく、自然に脱衣していく。

(これは、目のやり場に困りました……でも、わたくし一人だけ入浴しないというワケにも)

 ザマの入浴グループは、先に入浴を済ませている。

 覚悟を決めてルチエは男子部員の中で脱衣して全裸になると、体の前をタオルで隠して、風呂場に向かった。

 体の前を不自然にタオルで隠しているのはルチエ一人だけで、他の男子部員は腰にタオルを巻いたり。

 堂々と男のシンボルをさらしていた。

 ルチエは、できる限り男子から離れて、背を向けて頭を洗いはじめた。

(まさか、複数の殿方と一緒に入浴する日が来るなんて)


 鏡の前で頭髪を泡だらけにして洗っているルチエは、頭の上に棒状の異物感を覚えた。

(なにか棒状の物体が頭に?)

 触れてみると、柔らかくもあり、固くもある不思議な物体だった。

(ソーセージ……ですの? それにしては弾力が?)

 お湯で泡を洗い流したルチエは、自分の頭の上に乗っていた物体を鏡で見て言葉を失う。

 頭の上に一人の男子部員の、男のメイン・シンボルが乗せられていた。

 男のシンボルをふざけて、ルチエの頭に乗せた男子生徒が自慢げに言った。

「〝チョンマゲ〟」

「ヒイィィィィ⁉」

 ルチエは、あまりの衝撃に悲鳴を発して逃げ出した。


  ◇◇◇◇◇◇


 腰にタオルを一枚巻いただけの姿で走ってきたルチエは。

 廊下に置かれていた椅子に座って、冷たい飲み物を飲みながら、休憩していたザマに息を切らしながら言った、

「風呂場で男子部員が、あた……オレの頭に汚らしいモノを乗せて〝チョンマゲ〟と」

 ザマはニヤニヤしながら、特に驚いた様子も無くルチエ〈セイ〉に言った。

「おめでとう、セイもザクロス部伝統の新入部員への合宿洗礼〝チョンマゲ〟をやられたか」

「アレが新入部員への洗礼?」

「これで、セイも正式にザクロス部に迎え入れられた……わたしも、先に入浴したグループで、下級生の新入部員の頭にチョンマゲを乗せまくった」


 絶句したルチエは。

(ザマさまも、殿方のシンボルを新入部員の頭に乗せて洗礼を……きゃあ)

 ルチエは、また一つザマの性癖を知ってし

まったような……そんな気がしたのと同時に……腰に巻いていたタオルが床に落ちて、ルチエは赤面した。

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