おまけ

転生g@me


BONUS―STAGE


 本作の主人公 、安斎藤雄あんざいふじおはあらゆる試練を乗り越えて、幸福ハッピーエンドを手にしたわけだが、謎はいくつか残る。

 

 本作で登場したザゼルとはいったい何者なのか、可能な限り触れようと思う。彼は万物を管理する部門で働いているようだが、本当にそんなものが存在するのか…


 ザゼルは神の遣いエンジェルでも異星種族エイリアンでもなく、れっきとした人間であった。ただ、彼の居場所は高度な文明で栄えている未来の世界で…


 遥か遠い未来の世界。人類は新たな居住地を求めて、宇宙を飛び出して開拓することに成功した。さらに科学の進歩で、生命や空間・時間のような複雑なものを意のままに操る能力ちからを手にしていた。

 そして…


〝万物を専門に管理する惑星ほし〟があり、そこは人工知能により制御されていた。そこには、宙に浮く飛行艇や物体をあらゆる場所に転送させる装置、異星人など、見慣れないものが存在していた。


 ザゼルはというと、天を貫いてそびえ立っている超高層建造物に訪れていた。どうやら、彼は職場の上司に呼ばれたようだ。


 ザゼルがいる場所は暗い空間で、何とも殺風景であった。彼の職場の上層部は人間ではない。

 万物を管理する惑星では、時系列処理機構、通称<ユニヴァースメーカー>という組織の管轄下にあった。いわゆる役所で、組織上層部は4体の人工知能だった。


<ユニヴァースメーカー>は、〝探求クエスト〟〝創造クリエーション〟〝破壊デストロイ〟〝構築リプート〟という人工知能が存在して、それぞれ役割があった。

 ザゼルは〝創造課〟という部署に属しており、彼は上司のクリエーションに呼び出されていた。


職務しごとの方は順調か?]

 ザゼルは静寂な空間の部屋で一人ぽつんと立っており、上司の人工知能の声が室内で響いた。彼はクリエーションに任された仕事の現状を訊かれて、報告するのだが…


「はい、時間軸の修正、及び除去は進行中です、予定より遅れていて…もう少しお待ちください」

[構わんよ、急ぐことはない、そのまま続けてくれ、慎重にな…]

「承知しました」

[君に現場指揮を任せて正解だった、期待しているぞ]

「ありがとうございます」

 ザゼルはクリエーションに一礼して、その場を後にした。そして…


[用事は済んだ…始めようか]

 ザゼルが去った後、クリエーションは別の者に話しかけた。静寂な空間で<ユニヴァースメーカー>の人工知能が集結した。人工知能たちは何やら密談を始めた。



[優秀な部下をお持ちのようだな]

 クエストがクリエーションに話しかけた。

[ああ、特に問題はなさそうだ]

[…これで我々の計画は一歩前進したわけだ、破壊したいものがあれば言ってくれ]

 デストロイが話しかけた。

[壊すだけの担当は気楽でいいな、創りなおすことがどれだけ大変か…]

 リプートがぶつぶつと文句を言っていた。

[しかし、要らないものを処分しないと新しいものが生まれないからな]

 クリエーションが冷静な口調で語った。

 

使は徹底的に利用しないとな…]

[部下たちはよく働いてくれる、我々が自ら手を汚すこともない]

[足りないものを求めるのは罪ではない、理想を実現してみせようじゃないか…]

 人工知能たちはきな臭い会話をしていた。何を目論んでいるか不明だが、ザゼルは渦中にいることを知る由もなかった。

 

 ザゼルは上司たちに報告を済ませると、仕事の時間から解放されて羽を伸ばす時間を得ていた。しばしの休息のとき、彼は街中をブラブラして、どうやって暇を潰すか模索中であったが…


「!」

 ザゼルはすれ違う美人女性が気になり、何をするか決まったようだ。


「やあ、暇だったら俺と遊ばない?」

「…今日、君と出会えたのは運命かもしれないね…付き合ってみない?」


 何時いつの時代にもどんな世界にも、チャラい奴はいる。ザゼルはガールハントを始めて、時代遅れの言葉で周りの女性に歩み寄ったが、全く相手にされることはなかった。


「今日は調子悪いな~…!」

 ザゼルはめげずにガールハントを続けて、気になる女性の後ろ姿を捕捉したが…


「どうも~そこのカフェで一緒にお茶しな…!?」」

 その時、ザゼルは声をかけた女性と顔を合わせると、何故か表情を一変させた。

「…あの、何か御用ですか?急いでいるんですが…」

「いや…ごめんなさい…昔の知り合いに似てたんで…人違いでした」

 ザゼルはどうにか誤魔化して、声をかけた女性と別れるが…


 実はザゼルには悲しい過去があった。彼はかつて、時間犯罪を取り締まる〝時空機動隊=モバイルポリストリッパ-〟通称MPTに属していたのだが…


 ザゼルは勤務中の事故で同僚を亡くした。同僚は彼の恋人でもあった。


 ザゼルは同僚=恋人の死の悲しみに耐えられず、喪失感を味わった。そして、彼は自己都合で退職、転職して現職に就いた。

 ちなみに彼の名はではない。本名は〝ハルマ〟だった。

 ハルマは苦しい記憶かこと断ち切るために自身の情報を変えた。この時代では容易いことのようだ。彼は新たな人生を歩んでいたが、偶然、亡き恋人と似た女性と接触したことで心が揺れた。


 ザゼル《ハルマ》は亡き恋人に似た女性が気になり、ガールハントを止めて彼女を尾行した。


ザゼルがける女性が向かったのは、公共交通機関がある場所であった。


「ここは…」

 ザゼルは女性が利用する公共交通機関と何かと縁があった。公共交通機関といっても、電車やバスではない。時間旅行ができる〝次元転位交通機関タイムマシン〟であった。

 タイムマシンはザゼルが務める行政機関が管理・運営しており、時間旅行が可能に。タイムマシン利用者は増大していった。


「…行き先は西暦1998年8月19日…日本…」

 女性が目的地を確認した後に、タイムマシンの装置が正常に作動した。そして、まばゆい光に包まれて姿が完全に消えた。彼女の名はナギ。宇宙暦2349年3月某日のことであった。


転生g@me 完

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転生g@me(てんせいゲーム) 小説家志望dai @daichans

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