2. ゾティークの珠
咳とともに、ごぼりごぼりと、
血と、痰と、菌の息とがまざりあった、けがらわしい腐臭のながれ。
窓を見やれば、
そんな空からふりそそぐ、病魔のはなつ矢をおもわせる雨が、なに
そんな雨に掻きたてられるかのように、湿った土の吐息のかおりが、
ああ、
この雨も、雨のもたらす
私のからだにはびこったこの病巣と呼びあって、肉も、血も、心さえも腐らせてゆく。
そうしてこの病んだ胸から吐き出された血痰をかたづける女中どもは、汚物を見るがごとき目を私の顔からそむけて去り。
胸に、
めそめそした涙と嗚咽を垂れながす陰気な父母。その声からは、
ああ、
日が
引き出しからつかみ出したのは、すこしいびつで
――― 日に一度、かなうならば二度でも、三度も、その奥を覗きこんでみなさい。
――― きみに素養があるのならば、その
言い残された叔父様は、この館をおとずれる人びとのなかでただ一人。清らかに
この
そのお言葉にすがり続けて、水晶の
いまや珠は、かすんだ目の代わりとなり、この
空は明るく晴れていました。
湿って
乾いた肉をおもわせる
その紅をうつして染まった大地もまた、一言もなく、咳こみも嘆きも発せず。
ときたま砂を風に舞わせつ、静まりかえっているのでした。
人類という猿のあゆみがついに絶え、乾ききった大地のみの
すべての文明がついえ、砂による、砂のために在る、砂の王国と変わり果てたタスーンの地では、ただ砂だけがその沈黙をもって語り、その静けさをもって歌い、ときおり思いだしたがごときに、風とたわむれ踊るだけの楽園。
この
そんな
地球最後の乾いた紅き砂たちは、羽毛よりもやわらかくこの手をつつみ、うるおすのでした。
その感動にうち震えながら、
ただ清らかな骨だけが、砂のうえへと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます