第20話 結成

時間も時間なのですぐにギルドに向かい、金貨三枚と銀貨六枚の報酬を受け取る。

今日は特に買い直すことも宿代で減ることもない。

ウキウキで宿に帰れば、上位ゴブリンの頭を消し飛ばした斧の少女がいた。


「あっ!今日はありがとうございました!」

「いいえ。僕も大したことをしたわけではないので…」


あ、そういえば。


「これ、どうぞ。」


上位ゴブリンの左耳を少女に向けて差し出す。


「えぇと…女性へのプレゼントに耳はあまり喜ばれないかと…」


困った様子で笑う少女。

いやそうじゃなくて。


「あなたが倒したゴブリンの耳ですよ!帰り道に偶然拾ったんです!」

「え!?あったんですか!?ありがとうございます、えっと…お名前をお聞きしても?」

「僕はグラドと言います。」

「私はシフォンです!グラドさん。ここは一つ、私に奢らせてください!」


ぐわんと体を掴まれたまま食堂の椅子に座らせられ、少女、シフォンは向かい側の席に座る。


「いいんですか?」

「ええ!元々諦めていたというのもあるし、同じ冒険者同士、これもなにかの縁ですから。」


僕の注文はパンとシチューのセット。彼女も同じものにしたようだ。

ここはパンがおかわり無料だし、そもそもの量が多い。

その他のサービスもすごく良くて、僕には非常に助かる店だ。

その分ほんの少しだけ高くもあるのだが。


すぐに提供され、食べ進める。

内容は黒パン、シチュー、サラダだ。

黒パンは転生当初は酸味もありなれなかったが、今はとても美味しいと感じる。

焼いてからそこまで時間が経っていないのかそれなりに柔らかく、シチューにパンを浸して食べる。

ホワイトシチューにパンは小学校から日本人が学ぶ組み合わせだが、これがまた美味しいのだ。

シチューだけでもこの店のものは美味しいのに、更に美味しくなるなんて!

料理に夢中になっていると、


「そういえば、グラドさんって何歳なんですか?」

「僕ですか?十一歳ですね。」

「え!そうなんですか!?ちょっと年下じゃん!じゃあ敬語使わなくてもいっか!」


唐突な距離の縮め方に戸惑う僕だったが、この後も色々なことを質問されたり、質問したりしながら食事した。


__________


昨日の一件でだいぶ仲を深めた僕らは、毎度の如く朝一でギルドへ向かっていた。

一番混む時間帯だが、いいクエストを探すためにも朝一はマスト。ここ試験出るよ。


「そうだ!私達でパーティ組みまない?」


嬉しいお誘いだが、


「でも、僕らだけじゃ攻撃しかできなく無い?タンクもヒーラーもいないし…」


ちなみに回復魔法は水魔法で使える。

タンクはゲームなどの通りヘイト管理が主な仕事だ。


「でもほら、この街に斧と剣士の二人組みもいるじゃん!いけるいける!」

「あの人達も両方アタッカーだけど…どっちもヘイト管理できるからな…シフォンさんはできるの?」

「いや?ぜんぜん?」

「まあ僕が頑張るか…」

「よし!じゃあパーティ結成だね!名前はどうする?」

「名前って…そんなのつけるんだ。」

「もちろん!あったほうがいいよ!」

「そうなの?どんなのがいいのかな…」

「うーん。どんなのだろう…」


こうして僕には同年代の仲間、シフォンができた。

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