第19話 少女

宿から朝一番で街に出てギルドへ向かう。

昨日はゴブリンが二十匹ちょっとだったから…今日は三十超えを目指そう!

自分の中で目標を立て、今日も出ているゴブリン退治クエストを受注する。

そのまま森に向かい石を拾う。

こいつに魔力のカバーでもつけたら操れるかな…?

そんな事を考えて魔力を石にまとわせる。


ドンッッッ


「キャァァァァァァッ!!」


大きな爆発音のようなものが聞こえ、同じところから女性の悲鳴が聞こえる。

ゴブリンに襲われたのか!?

悲鳴を上げているということは武装していない可能性が高い!

時間がない。

魔駆を使用し木々をすり抜け最速で声のもとへ向かう!

先制攻撃とばかりに左の剣に手をかけると、頭部のない大きなゴブリン(おそらく上位個体)の死体と慌てた様子の斧…?を持った茶髪の女が立っている。

女が持っている斧らしきものは斧と呼ぶには大きく、分厚く、大雑把すぎた。

見た目は人の身長ぐらいのバットに漫画冊子一・五冊分ぐらいの厚み、大型テレビぐらいの面積の金属部分がついている。まさに鉄塊である。


「どうしようぅぅ…ゴブリンの頭消し飛んじゃったようぅ…討伐証明部位なくなっちゃった…」


確かにその斧でなら納得といった感じですが…

え?振れるのそれ?


「え?振れるのそれ?」


女…いや少女か。少女が勢いよく顔を上げる。


「はい!こんなふうに!自慢の武器です!」


ヒュンヒュンと見た目にそぐわない速度で振る眼の前の少女。

音はゴゥンゴゥンといった感じだが…


「そ、そうですか。」

「ところでこれどうすればいいですかね!」

「う、う〜ん…とりあえず死体を見せて事情を話したらどうですかね…?」

「それ、いいですね!使わせてもらいます!」


そう言った少女は袋から縄を取り出し、ゴブリンの死体に巻き付けていく。

簀巻きになったソレを少女は引っ張っていく。


「それじゃ、ありがとうございました〜!」


頭部がない死体でも成人男性以上の重さがあるであろうものを引っ張っているとは思えない速度で少女は去っていった。

元気と勢いが凄かったな…


「……切り替えて仕事しよう…」


石をまた拾い、何も込めずゴブリンに向かって投げる。

いや、忘れるの無理でしょあんなん。


__________


今日はゴブリンが昨日より見つからず、空もオレンジになってしまった。

もしかしなくてもあの少女が狩り尽くしたとかなんだろうか…

見た目も活発そうな美少女!といった感じで強さはあの通り。

彼女は冒険者としても人気になるだろう。

同じ街に同年代の強力なライバルが現れるとは…

負けてられないと思い今日は少ない中執念で三十四匹。

目標も達成したので帰路につく。

帰る途中、あの少女とあった場所の近くを通りかかる。

足にグニっとした感触。

足元を見れば、普通のものよりも大きいゴブリンの左耳が!


「っ!!!!!!」


突然のホラーに驚きを隠せないが、十中八九これは、


「あの子のだろうな…」


これ渡したほうがいいよね…?

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