第14話 僕なりの戦い方

全能感に支配されかけた理性をもとに戻そうとする。

しかしそう簡単に戻るものでもない。

息をする。

僕、グラド・ネフォークの戦い方が今、一つできた。


「すごいねグラド!」

「やるな!」

「すげぇじゃねえか!」


いつの間にか集まっている騎士団のみんなから大歓声を受けながら、呟くような声を僕は聞き逃さなかった。


「見込んだとおりだ。グラド。」


__________


僕の二刀流の師匠のサック、その相棒のルドーは自分の拠点の王都に帰ってしまった。

冒険者になるなら、と手紙をくれた。

何でもギルド証発行の際に手数料が免除になったりなど、いいことがあるらしい。

僕も王都で冒険者登録をしようと考えている。

幸い、馬車で丸一日程度でついてしまうとのことだ。

我らがネフォーク家がかなりいい領地を任せてもらっていることがわかったところで、両親と騎士団長にも冒険者になりたいということを伝えた。


「ああそうか。危険なことはしてほしくないというのが親心だが、ここは喜んで送り出そうじゃないか。」

「ええ。なんとなくそんな気はしていましたよ。しかし定期的に顔は見せてほしいですね。…私も心配性がうつったかしら…」

「まあそうだろうな。お前はこの街を飛び出して世界を見るべきで、世界に見られるべき人だ。あと数年はこの街で訓練をしていくんだろう?いや、ならいいんだ。」


父さんは穏やかな笑顔で、

母さんは静かな笑顔で、

団長は茶目っ気のある笑顔で、

僕を応援してくれた。

期待を無駄にする訳にはいかないし、するつもりもない。

もう後悔は十分だ。


__________


「グゥゥッッッ!」


僕は後ろに下がらされる。


「どうしたぁ!まだやれるだろぉ!?」


その次の日からは、あの日の戦闘を自分のものにするための訓練もした。

ゴブリンを直接倒した『魔斬』

脚に纏い戦闘の幅を広げた『魔鎧』

魔力を毎日使う訓練はしていたが、魔鎧の消費が半端ないので常に魔力切れ寸前まで追い込んで、必要なときだけ薬で魔力を回復するというトレーニングで魔力総量を増やせた。

何もしないだけなら十分まで展開できるようになったが、まだ常に使う…といった技じゃない。あくまで奥の手だ。

ただ、『魔斬』と魔弾を使って移動したときの魔法を改良した『魔駆』は戦術の一つに組み込めるほどになった。

『魔駆』はあらかじめ作り出した小規模な魔鎧を射出することで高速移動を可能にした魔法だ。

利点は眼の前の空間すべて使えるようになること。

欠点は気持ち悪くなることぐらいだ。

ただ欠点は訓練と慣れでなんとかなる。

『魔斬』は魔壁の応用で作った鋸の歯を高速回転させ敵に放つ魔法だ。

『魔槍』と回転の部分が似ているが、切断と貫通で使い分けができそうだ。


「いきます!」


サックに教えてもらった二刀流の訓練もしている途中だ。

防御を捨てるといった感じの戦い方だが、相手の攻撃に自分の攻撃を被せることで弾く技を習得した。

やはり手数の多さが魅力で、威力など身体強化でどうとでもなるこの世界では攻撃力において最強かもしれない。

ただ一辺倒というわけではなく、片手剣、盾、両手剣と、それなりの数の武器が使えるようになったが、槍と棍棒は一旦お預けになった。

というか剣だけで精一杯だ。

元々相性を測るためのものでもあったので大丈夫だ。

修行期間中、ゴブリンの大量発生などはなく至って平和だったネフォーク領。

五年間の修行を経て僕も十一歳だ。

アバン兄さんは十七歳。イケメン度合いに磨きがかかっている。

そして二年前帰ってきたライフ兄さんも二十歳だ。

かなり久しぶりに見たライフ兄さんは父さんに良くも悪くも似ている。

父さん似ならきっとネフォーク領を発展させてくれるだろう。


そして、王都に向かう日が来た!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る