第10話 無属性の特性
ゴブリンと初めて戦ってから数ヶ月、魔法を使った戦闘を試す時が来た。
一対一ならゴブリンに圧勝できるレベルまで近接戦闘ができるようになったからだ。
的にしか打ってこなかったが、騎士団の的でも魔槍なら難なく貫通、魔弾でも多少はへこませることができる。
「前に一匹。グラド、頼んだぞ。」
あの日、ゴブリンと戦えることを証明したおかげで一匹なら単独で任せてもらえるようになった。
ゴブリンが最近増えてきたので定期演習の回数が増えたが、それだけで対処できているし、戦闘経験も積めているのでありがたいといったところだ。
万全を期すために魔槍を準備し、射出する。
ドガァンッッッ
ゴブリンの首が木っ端微塵になり、首から血が吹き出す。
「…加減したほうがいいかもね…」
アバン兄さんがちょっと引きながら言う。
次は魔弾で挑む。
ボゴォ
頭が陥没し、軽く五メートル吹き飛ぶ。
「いつの間にそんな魔法が使えるようになったんだね…」
「アバン兄さんの魔法はこういった事はできないんですか?」
「僕は炎の魔法だから…頭を砕いたり陥没させたりはできないな…」
引きつった顔の兄さんはそう言った。
「じゃあ次は僕が使うよ。」
兄さんはバスケットボール大の火の玉を作り、それをゴブリンに向けて放つ。
ヒューン…ゴウッッッ
寸分違わず当たった火球はすぐに燃え広がり、ゴブリンを焼いていく。
「ええ…」
消し飛ばすよりも残酷なんじゃ…?
__________
兄さんの魔法を再び間近で見たことで、今持っている魔法だけだと戦っていけないかも…という心配が出てきた。
楽に物理遠距離攻撃ができるのが無属性の良いところだが、弓と今のところ対して変わらない。
もっと強力な魔法を作らなければ…
だが、本は読み終わってしまい、ヒントになるようなものもない。
せめて無属性だけの特性を見つけたい。
魔法の訓練の時間、ひたすらに魔法を使いながら考える。
少し疲れてしまったので休憩を取る。
見えるのは魔法を使う騎士たちの姿。
聞こえてくるのは連続した金属が打ち付けられる音。
それぞれは間隔が空いているが、人の多さによって連射されているように聞こえる。
そういえば、魔法の連射をしたことはなかった。
今までは一つ一つ魔力を出し、整形してから飛ばしていたが、予め作っておく、もしくはわざわざ出す必要がないようにすればできるだろうか。
一番簡単な魔弾を五個出し、的に向かって打つ。
確かに打てはするが、タイミングが何個か重なってしまうしそれぞれで同じところを狙うのが難しい。
ウンウンうなりながら工夫していると、
「グラド、よくそこまで魔法を撃ち続けられるな…」
「そうですかね?そこまで苦労ではないですよ?」
わずかに青い顔をしたハンクが言う。
「俺は魔法は苦手だからな…魔力量ならお前が騎士団で一番なんだろうが、それにしてもおかしいぞ?」
「そうなんでしょうか…?」
あまり気にしたことはないが、なにかのカラクリがあるのだろうか。
突然、閃きのようなものが降ってくる。
魔弾を作成し、ありったけの魔力を込める。
そのひらめきとは、『属性は魔力消費を増やすのではないか』ということだ。
属性魔法は自分の属性に通すことで魔力を炎や水、風、土にして操れるが、その際に何割かが属性を通るためものに変わってしまっているならば、無属性は魔力をフィルター無しで操れる無属性は継戦能力が同じ魔力量でも高いことになる。
作った魔弾を空に放つと吐き気が襲ってきた。
「そこから魔法を一発打ってみてもらっていいですか?」
「ああ…一発ぐらいならなんとかなりそうだ。しかし大丈夫か?」
「僕は大丈夫です。何でも良いので魔法をお願いします!」
「いつになく押しが強いな…はぁ!」
ザシュッ
風の刃が的を襲う。
すぐさまハンクの魔力の残量を見る。
そして僕はハンクの魔法を構成していた魔力と同じ量の魔力を使い、魔法を打つ。
そして僕の魔力の残量を見る。
結果として、魔法に使った魔力は同じなのに、体内に宿る魔力は僕のほうが多い。
僕の仮説は正しいらしい。
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