第6話 強さ
目が覚めたとき、部屋の外から見える空は暗かった。
「グラド、起きたようですね。」
母さんが僕の部屋に入ってきた。
「おかゆです。熱いので気をつけてください。」
おかゆを食べながら考える。
属性魔法と僕の魔法の威力はかなり違っていた。
成長する速さもかなり違うみたいだ。
工夫や年齢だけじゃ説明できない差が僕のものと父さんと兄さんのものの間にある。
無属性は属性持ちより確かに珍しいが、この状況でやっていけるのだろうか。
段々と積もっていく悩みを見透かしたのか、
「いいですか、グラド。自棄になっても何も生まれません。自分が他の人よりも成長するのが遅くても、グラドは一歩ずつ、前に進めています。グラドは魔法への興味が人一倍あるから急いでしまうのはわかります。ただ、無理に他の人に合わせようとしても失敗するだけです。まずはそこまでできた自分を褒めたらどうですか?」
ゆっくりと母さんが言ったことは、今までの頑張りを肯定してくれるものだった。
「時には立ち止まってみることも大事です。母から一つ提案ですが、なぜ自分が魔法を使いたくなったのかを考えてみるのはどうでしょう?グラドは三歳でも頭がいいので大丈夫だと思いますよ。」
母さんからの期待がじんわりと胸に入ってくる。
「おやすみなさい、グラド。」
おかゆの容器を持って母さんが出ていく。
魔法を使いたい理由は…個性になると考えたからだ。
ただ、改めて考えると、僕の言う個性はあまりに漠然としすぎている。
無属性で魔法使いは前例がないこと。
だから特別だと考えたが、父さん、兄さんの魔法を見て、それは甘いと思った。
使えるだけじゃ意味がない。
きちんと戦えて、強くないと特別…個性にはなり得ない。
今までは、魔法を使うために魔法の練習をしていた。
ここからは、強くなるために魔法を練習するんだ。
しかも、魔法だけが強さじゃない。
剣でも、槍でも、何でもいいが、強くなるために使えるものは覚えよう。
強さを証明するためには冒険者だろうか。
冒険者になって魔物を倒し、強さを証明しよう。
そこで初めて、無属性の魔法が特別になる。
そうすれば、僕が前世ではできなかったことができる。
この世界では、強さは特別になるものだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます