第5話 属性魔法
ただ、やはりというべきか密度を上げたことによる弊害もある。
実体とそれなりの質量を持つようになり、重力に引っ張られて下に落ちてしまった。
ただこれは速度を上げれば問題ではないだろう。
窓の内側にアバン兄さんを見つけ、声をかける。
「にいさん!まほうでこうげきできるようになったよ!」
「本当かい!ちょっとまっててね。」
アバン兄さんが自分の部屋に一旦戻ったかと思えばすぐ庭に来た。
兄さんは動きやすい服装に着替えており、準備体操をしている。
「魔法を使って戦ってみようよ!」
兄さんの目は輝いている。
でも
「さすがにあぶないですよ。」
「そうですよアバン。怪我でもしたらどうするんですか。」
音もなく母さんが近くに来ていた。
いつの間に…
「うーん…分かった。じゃあ僕の魔法を見せてあげよう!」
アバン兄さんは僕と同じように薪を立てると、
「ファイアボール!」
手を前に向け火の玉を飛ばした。
火の玉はハンドボール大の大きさで、吸い込まれるようにして薪に向かっていく。
ゴゥッッ
火の玉は薪に当たり、強く燃え上がった。
おかしい。
「にいさん。あれだけつよいまほうはまりょくのしょうひもおおきいんじゃ…」
「いや?今の魔力ぐらいだと普通の三歳の子でも十数回打てるよ?」
何がおかしいって、威力だ。
「…つよいまほうをうつときになにかしていますか?あっしゅくしたり。」
「圧縮?難しい言葉を知ってるね。あれぐらいの魔法だったら覚えて二週間も練習すれば打てるようになるよ。懐かしいな。あの頃は燃やす前に薪をふっとばしちゃったっけ。」
これが、炎属性の魔法か。
「ちょっととうさんのところにいきます。」
「ん?いってらっしゃい。」
これは炎属性だけなのだろうか。
父さんの執務室のドアをノックし、
「いいぞ。」
「しつれいします。」
「おおグラド。何かあったのか?随分と早いが。」
「とうさんのこうげきまほうがみたいんです。」
「それぐらいならすぐだな。」
庭に出た父さんは、アバン兄さんが燃やした薪に向かって手をかざし、魔法を使う。
ザンッ
父さんの魔法は薪を真っ二つにし、火を消した。
「どうだ?参考になるぐらいの魔法にしてみたんだが…」
「…とうさんはなんさいのときにこれをおぼえましたか?」
「どうだったかな…お前よりは年上だったが…5歳頃かな?」
これが、属性を持っている人たちの魔法か。
僕が今三歳だとしても三ヶ月練習してやっとまともな形になったぐらいなのに。
「気を落とすなグラド。お前はまだ三歳だ。魔法を使うにしては早すぎるし、母さんから聞いたが、薪を倒したんだろう?まだ諦めるには早いぞ。」
父さんはそう言った。
だが、属性がこんなにも大きな恩恵をもたらすとは思っていなかった。
そりゃあ無属性の魔法使いがいないわけだ。
誰もいないところに向かって魔弾を使う。
遅い。
もっと速く。
もっと力強く。
密度を高めてイメージし、全力で腕を前に突き出す。
まだ遅い。
更に魔力を圧縮し、密度を高める。
僕の体と同じぐらいの短剣を普通サイズまで圧縮する。
全く透けないぐらいに濃くなった魔力の短剣を作ることができた。
飛ばす際のイメージは銃。
筒の中に短剣があり、その後ろ側で魔力を爆発させる。
爆発させるための魔力をためているうちにもどんどん短剣分の魔力が維持のため吸われていく。
「ああぁぁぁぁ!!」
魔力が爆発し、短剣が前に飛んでいくのと同時に、僕の目の前は真っ暗になった。
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