第4話 密度
次の日、父さんの前に僕は立っていた。
「行くぞグラド!」
出された手から風が吹いている。
父さんが魔法を使ったらしい。
かなりの強さの風に腕で顔を覆ってしまう。
「これが魔法だ。私の場合は魔力を外に出して風にすれば魔法になる。」
「どうやったらかぜにすることができるんですか?」
「いや…かなり感覚的なものでな。今でも原理は調べている途中らしい。」
この世界はやはりイメージで魔法を使っているらしい。
属性がどこにあるのかはまだ分からないが予想するとしたら体の表面だろうか。
体内を移動した魔力は体外に出るときに属性を通って魔法になるのだろうか。
予想は尽きないがひとまず自分のことだ。
「イメージはできたか?」
「はい…なんとか。」
「いいぞ。やってみろ。」
体内の魔力を移動させ、外に出す。
外に出た魔力は薄い青紫色のモヤだった。
それをボールの形に整形する。
「いいぞグラド。その調子だ。」
…これ、どうやって飛ばすんだろう。
悩んでいるうちにも魔力はどんどん吸われていく。
「参考になるかわからないが…風の魔法は初速をつけるんだ。あとは勢いで飛んでいく。」
初速をつける…強く押し出すイメージだろうか。
フヨ‐
「おそい…」
「まあ初めはそんなものだ。魔力の移動が速くなるとそれに伴って速くなる。」
もう一度やってみよう。
魔力を出して、ボール型に整形、さっきよりもっと力を込めて押し出す!
フヨ‐
「おそい…」
「こればっかりは日々の練習だからな。仕方ない。魔力は使っていると宿る量も増えるから魔力を動かしておけ。」
__________
練習を毎日いついかなる時もし続けて三ヶ月、飛んでいく速さもフヨ‐とした動きから少し早くなった。
そういえば、
「とうさん。まとにしていいものはありますか?」
「ああ。えーっと…あった。薪のあまりだ。しけっているからすぐに使えない。」
「ありがとうございます!」
「父さんはこれから仕事だから、何かあったら言いに来てくれ。」
父さんが出ていったあと、いつものボール形無属性魔法『魔弾』を使う。
イメージが楽だからボールにしていたが、それ以外の形でも使えるだろう。
矢は…複雑だな。
かっこいいし短剣にしよう。
薪を少し離れたところに立てて、魔力をざっくりと短剣の形にする。
そして、初速をつけるっ!
ポトッ…
落ちてしまった。
なぜだろうか。
考える間にも作っては飛ばすを繰り返す。
十数回繰り返した頃、気づく。
おそらくまっすぐ短剣を押せていないのだ。
今までは壁で押し出すといったイメージだったが、細い棒で押し出すイメージにし、角度にも気を使って押し出す。
するとこれまでが嘘のように真っ直ぐ飛んでいった。
ただ当たると霧のようになって消えてしまう。
どうすれば薪を倒せるのだろうか。
作った短剣が軽いのかもしれないと思い、魔力の密度のようなものを上げてみようと魔力を注ぐ。
すると短剣が大きくなってしまう。
そのまま外から押さえつけるように小さくしていく。
小さくなると同時に少し濃くなった短剣を細い棒のイメージで飛ばす。
スゥ‐…コツン
当たると同時に霧散してしまったが、的を倒すことに成功した。
魔力は密度を高めると実体を伴うと言うことだろう。
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