第3話 稽古
「わかった。明日…いやこのあと直ぐ庭で稽古をしよう。」
「いいんですか!」
「もちろん。私は仕事が一段落したら行くから先に準備しておきなさい。」
稽古の約束が取れた。
魔法だけで戦うスタイルもかっこいいが、近接戦闘と魔法を同時にこなす魔法戦士に憧れるので近接戦闘の稽古も頼んでみようか。
いやまずは魔法だけでやるべきだろうか。
夢は膨らむ。
父さんの行った通りに準備をしよう。
といっても、この年の準備体操ってなんだろう?
__________
体育の授業でやった順番で準備体操をしていると、
「よしグラド。準備は大丈夫か?」
「はい!だいじょうぶです!」
「そうか。だがまずは魔力を感じることだ。すぐに魔法を使うわけではないぞ。」
父さんと一緒にストレッチをした後、
「魔力とは体内に宿る力の一つだ。手を出して。」
言われた通り手を出すと、かすかに暖かいものが手から伝わってくる。
「これが魔力だ。へその少し下あたりにこれが集まっている。」
集中すると、たしかにさっきのものと似ている。
「その顔はわかったようだな。この魔力を体外に出してイメージすると魔法になるというわけだ。」
「でもとうさん、まりょくってちょっとからだからでてないですか?」
「それに気づくか、魔力が漏れ出るのは自然なことだ。もちろんコントロールすれば多少は減るが、体から出ていく魔力をなくすことはできない。その量は人によって異なり、現在の魔力の量に比例するぞ。」
読んだ本は魔法の基礎情報と魔法の種類に関する本だったので、魔力の話は初耳だ。
新しいことを知れて少し喜んでいると、次のステップに進む時が来た。
「グラド、魔力を動かせるか?」
「やってみます!」
意識を魔力に集中し、動かそうとする。
重い。全くと言っていいほど動かない。
「少しでいいんだ。いきなり全部動かす必要はないぞ。」
当たり前のことに気づかなかった。
一部分だけをつまんで伸ばすイメージをすると、ゆっくりだがたしかに動く。
「うごきました!」
「もうか!グラドは筋が良いな。では次に右腕を通ってへその下の溜まり場に帰ってくるように動かしてみてくれ。」
動かしてみる。
「よし、動いたな?じゃあさっき魔力が通った道に魔力を流し続けるイメージで出し続けてみろ。」
さっきの道に魔力を流し続ける、そしてへその下…溜まり場といったか。
溜まり場に魔力を戻す。
血管を流れる血液のように魔力が動くイメージをする。
「もうできたのか!すごいなグラド!じゃあ今やったことの説明をするぞ。いまグラドがやったことは身体強化だ。筋肉が魔力によって活性化し、普段より多くの力を出せる。流す速さや量によって出せる力も大きくなっていく。」
「これはまほうではないのですか?」
「そうだ。魔法ではない。ただこれは極めればどんな魔物だって倒せる。そういう意味では魔法のような技術だな。」
意外と父さんは脳筋なのかもしれない。
「魔力の動く速さが遅いのは慣れていないからだ。毎日やると段々と早く、簡単に、正確に動かせるようになるから、普段の生活でもやっておくと良いだろう。明日の稽古からは初歩的な魔法を見せるから、グラドの魔法を考えてみてくれ。」
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