第7話 三年後
僕が魔法を使う目的を定め直してからは、これまで以上に魔法の訓練をした。
ヒントを探して属性魔法の本を読み、その間も魔力を動かし、身体強化をしておく。
それまでは抵抗があってできなかったが、食事中にも少し動かしてみた。
魔法の方も、魔力を整形し、飛ばす『魔弾』の他に、前方に密度の高い魔力を展開する『魔壁』、魔弾の派生でライフル弾のように整形した魔力を回転をかけて飛ばす『魔槍』を使えるようになった。
三年間毎日欠かさず動かしていたら、魔力もかなりスムーズに動いてくれるようになった。はじめはゆっくり歩くようなスピードだったが、今では一番早いときには矢と同じぐらいに早いだろう。
三年前、魔力を使い切って倒れた日、倒れる前に使った魔法と同じぐらいの速度が普通に出せるようになり、アバン兄さんの魔法を打ち消したりもできるようになった。
僕も六歳になり、アバン兄さんは十二歳。今年から、アバン兄さんは騎士になるためにネフォーク領の騎士団に本格的に入団した。
訓練自体は一年前から参加していたので、兄さんの訓練に僕もついていき、片手間ではあるが騎士団の人に少しずつ体の動かし方、剣や槍、棍棒、盾の使い方を教えてもらった。
そんな僕は今、防具をつけて12,3歳の少年の前に立っていた。
「始め!」
審判役の騎士の声が響く。
自分の力を試すために少年が組んでくれた試合だ。
僕が持っているのは木剣と盾。相手は大きめの剣だけだ。
しばらく動きがなかったので、僕から仕掛けに行く。
ヒュン
縦に振った僕の剣は回避され、そのまま横薙ぎに少年の剣が振るわれる。
僕は後ろに下がり、それを回避する。
少し離れると、今度は向こうから攻めに来る。
縦に振り下ろされるのと同時に少し横に回避し、脇腹に突きを入れる。
入ったと思ったら、僕はひっくり返っていた。
足払いだ。
僕の喉元に相手の剣が添えられ、
「試合終了!勝者、ハンク!」
審判の声が響いた。
兄さんが僕の方へ駆け寄って来て、
「すごいじゃないかグラド!いつの間にあんなにうまくなるとはな!」
「いや、でも負けてしまったので…」
体格差があっても、負けは負けだ。
「そうだなぁ。グラドは防御の出が回避に比べて遅いから、そこを直したほうがいいかもしれない。」
「アバン兄さんはどうやっているんですか?」
「そうだな…僕は盾を相手の攻撃の位置にざっくりと置いておいて防御しているかな。先に防御の姿勢を取っておくんだ。まあ戦い方がグラドとは違うから参考になるかわからないけど。」
アバン兄さんは防御し続け、隙を見つけて攻撃するカウンター型、僕は回避主体で戦っている。
「グラド、魔法の訓練もやっていくか?」
「もちろんです!」
騎士団長に聞かれた僕はそう答える。
二メートル近い団長は気さくで、こうやって僕にも話しかけてくれる。
渋くて強くてかっこいいので僕も騎士団のみんなも憧れている存在だ。
__________
魔法の訓練が始まり、そこら中で魔法が使われる。
金属製の的がしっかり用意され、そこに各々魔法を撃ち込んでいく。
魔弾を使う。丸く整形した魔力の後ろでもう一つ魔力を溜め、爆発させる。
すごい勢いで飛んでいった弾は当たると同時に大きな音を出し、霧散した。
魔弾だけでも前とは違い、色もかなり濃く、重くなった。
もう薪ぐらいなら軽く吹き飛ばせる。
次は変化球だ。
銃のイメージだと真っ直ぐにしか飛ばせないので、細い棒で叩く位置を調整していく。
精度もだいぶ上がり、百発百中…とまでは行かないが、それに近い割合で狙い通りに当てることができる。
こうして魔法の工夫をして、訓練が終わったあとは、家に帰ってご飯を食べて寝る。
これが今の僕の生活だ。
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