#13『殺した後』

というわけで、ケルベロスはぶっ殺しました。


イエーイ。


「ふぅ。やっと殺せたな、リナ」


「あ、うん。ちょっと待ってて。今、状況が整理できてないから」


「……? 整理も何も無いだろう?」


「いやそうじゃなくて……」


なんか。


なんか、頭が痛いような……


「あ」


瞬間。


壊れた。


***

夢を見るのは数週間ぶりだ。


夢を見られたのは数週間ぶりだ。


その日の私は、夕焼けの教室で告白していた。


「――好きです」


言って、後悔する。


言った後に吐いたからだ。


吐いて、吐いて、吐いた。


「私で、いいなら」


応えたのも、なぜか私だった。


なんて、傲慢。


なんて、矛盾。


なんて、気持ちの悪いことだろう。


うえっぷ。


***

「おーい大丈夫か、英雄」


気が付くと。モーゼが膝枕していた。


私を。


「ちょ……ぇえ⁉ 展開早ない⁉」


「早いも遅いも、お前が倒れたのが悪いんだろう。まーったく」


「……ごめん」


恐らく。


あの、世界を赤くする技は、なんかしらの負担が掛かってるんだろう。


心なしか、目がかゆい。


「おい。目が赤いぞ」


「まじ? ちょっと鏡貸してくれない?」


言ってすぐ、彼女の言葉に硬直する。


「いや。鏡は、持ってない。たぶんこの洋館のどこにもないだろう」


「え? 鏡だよ。鏡。トイレとかにあると思うんだけど――」


「というか」


その後の言葉を。


聞かなければよかった。


「この街、鏡ないよ」


「え」


そして始まる。私の異世界(?)物語。


――あぁ、やっと言える。


この世界に、およそ鏡と呼べるものは無かった。

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ロマンチストと鏡のない街 夏眼第十三号機 @natume13th

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