#12『戸締りは忘れずに』

「モーゼ⁉ アドレナリン出しすぎじゃ無いの⁉」


「リナこそ! これは一体、どういうことなんだ!」


弾きだした答えは、ケルベロスを押し切り、なんとか隙を作り出す。


「今はあいつ倒す! だって、そうじゃないと出られないでしょ!」


「そうか――そうだなッ!」


瞬間。


モーゼの体がはじけた。


はじけるという表現は些か美味しすぎる。


これは飛んでいったというものに差し替えよう。


急速にケルベロスへ向かうモーゼ。


だがその隙を、ヤツは逃さなかった。


「右、危ないッ!」


気が付くと、右側の頸が伸びて、モーゼを狙っていた。


即座に声を掛けたからか、モーゼは難なくそれを弾き飛ばし、尚も進んでいく。


「まったく、つまらない攻撃をする。さっさと――面白くなることだ」


よくわからないことをモーゼが呟くと、左からもやってくる。


「似たような真似をッ!」


剣ではじく。


だが私の『流れ』によれば、どうもそれは叶わないらしい。


――モーゼは、左頸によって殺される。


イメージは拘束。即ち――


「逃げてモーゼ! あれ多分、巻き付いてくる!」


しばらくしたら、予想的中。


首はぐるぐると円を描き、やがて結びつくように落ち着き始めた。


そこを――斬る。


迷いは、ほぼ一切無かった。


「右八、左四! 弱点箇所は勘でなんとかごまかして! 今殺さないと、そいつ死なない!」


接近した瞬間。噛みもせずよくもこんな事を言えたものだ。


と、思っているとモーゼがトドメを刺している。


私がイメージした以上に、彼女の剣技は――美しかった。


「りゃああああああああああああああああああああああっ!」


見事に弱点を突き、モーゼはこちらを振り向いた。


「殺せたよ、リナ」


次の瞬間。


ケルベロスの体は外魔力マナとなり霧散し、大気中に溶けていった。


爆破エフェクトみたいなもんで、ちょっとビビって漏らしちゃった。


てへぺろ。

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