下書き ⑤ 会話作成

 「結奥!」

 「ごめんなさい。彼女は連れ去られてしまった」

 「あ、貴方は・・・・・・?」

 「高峯直央よ」

 「・・・・・・広束君。彼女は最初ここに来たとき寝ていた人だよ」

 「助けていただいたんですね。有り難うございます」

 「新見くんから連絡を受けて、彼女が急行したんだ。だが君は不自然なほどに蹴飛ばされたそうだが」

 「対峙してたのは二人組でした。一人は男でもう一人は女。男は重心の使い手で、多分・・・・・・反発というか。そんな能力だと思います」

 雨の日に傘を差していないと思えば、組み敷かれた時に体が濡れていなかった。蹴りも凄まじい威力なのではなく、多分弾かれたのだ。

 「体中痛いですけど、蹴りの痛みじゃないです。十何メートルも人がすっ飛ばされる蹴りなんてあるのか知りませんけど」

 「僕なら、結奥を安全に連れて帰る事ができる」

 「結奥は何処にいるんですか」

 「それが分からないんだ」

 「アイツら・・・・・・少なくともあの女は結奥の事知ってるみたいでした。友達になろうって何度も言ってて」

 「その事なんだが一つ気になっている事があってね。ニュースを見て欲しい」

 「その被害者は全て、同じ中学校に所属しており・・・・・・」

 「・・・・・・知ってます」

 「結奥はここで、虐めにあう所だったんです」

ーーー

 「そんな事があったなんて」

 「それが性格の変わった原因?」

 「うん、あれから完全に人が変わった」

 「もしその時の続きが起きてるとしたら」

 「卒業アルバムなどで犯人の名前が分かれば、行動できるんじゃない」

 倫毅は難しい顔をした「甘木の家にあるかな・・・・・・虐められてたから」

 受け取ったとしても、それを保管しているか。そして両親にそれを説明したとて信じてもらえるか怪しい。どのみち伝えなきゃいけないけど。

 「そっか、ごめん・・・・・・ネット上を漁ればあるかな」

 「生徒一人一人がSNSであげている事はあるだろうけど、それが実名に結びつくことはまず無いだろうし。効率が悪い」

 「確認なんだが、君たちを最初襲った犯人とは違った?」

 「・・・・・・はい。全然違いました」

 自分が全然冷静じゃない事に気づかされた。そうだ。それを皆さんに伝えなきゃ何の事やらだった。

 「物の手がかりは卒業アルバムで、人の手がかりは最初の女子、実行犯と区別した方がいいかもしれない。事情を知っているかも」

 「何かその虐めグループの顔は思い出せる?」

 「映像に取ってあります。場所も・・・・・・はい、分かります」

 「今回の二人組と違うか、判断するだけでいい。それが終わっても暫く待機していてくれ」

 「間違っても一人で出ようとしてはいけない。君の重心の能力がバレていたんだ、君の顔も割れているという事になる。分かるね?」

  

 「待って。同じ中学の問題だったって言うなら、そこにマスコミとか集まるんじゃ」

 「私がそれを盗み見る事で何とか」

 「・・・・・・そのビー玉って僕も使えるの?」

 「そうだよね、ゴメン。出来ない。映像にして記録するような能力も無いし、他人に分ける事も出来ないんだ。だから結局、その謎の人の顔が分からないと」


 「いや、有効な手段だ。僕と直央さんで記者のフリをする。そこで甘木結奥さんの名前を出そう。虐められていた子がいるはずだと」

 「そ、それはッ」

 

 「広束君、君は・・・・・・」


 「彼女が重心を持っている事に感づいているな?」

ーーー

 「え?え?」

 直央さんも驚いている。

 「すまない、カマをかけた」


 「マスコミの取材が彼女に押し寄せる事になる」「それはマズいと踏んだ理由はなんだ?」「彼女は多分、重心を持っている。だがそれをどういう絡繰りか自覚してない」

 「いや、おそらくは遠ざけている。自分の意志でだ」


 「違和感があるなら聞かせてほしい」


 「ずっと考えてたんです。結奥がどうして新見さんの事を嫌っているか」「新見さんは、昔の結奥に似てる」「昔はもっと、明るい性格だったんですよ」

ーーー

 倫毅視点の回想 能力発現のきっかけ 結奥の性格


ーーー

 「もしかしたら、結奥は。感情が見えているんじゃないかって思ってました」

 「根拠は?」

 「結奥にとっては、触れられたくない傷なんだと思います」


 

 「どうしてそんな事を隠してたの?」


 「ストップ」「・・・・・・当ててもいいかい?広束君」

 「恥ずかしかったからだろう」「君は自分の重心に納得が行ってないんだ。だから重心を持っていると予想したとき、彼女は重心に負い目を抱いているのではないかと感じた」

 「はい」

 「新見さんと直央さんは、自分の重心に誇りを持っているからね」「勿論どちらが悪いという話ではなく、どっちかに考えを合わせるべきという話しでもない。君なら分かるだろう」

 「備海さん、本当に能力を持ってないんですか」

 「本当に持ってないよ。ただ色々あっただけ」


 「でも、聞いたことないんですよ。もしかしたら・・・・・・って思ってるだけで」


 「お互いに見て見ぬ振りをして、それで疎遠になっていたんだ」

 「でも、だって。結奥にとっては触れられたくない事なんです。それに手を突っ込んで仲良くなろうって言ったって・・・・・・」

 

 「じゃあマスコミに伝えずに僕らで解決する方向で行くしかない」


 





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