(下書き)初対面会話 新見
「・・・・・・どんまい」
鴨居はその女子生徒の面影を見るなり、今までの熱が引いたように広束に同情した。
ーーー
「面白い事が起きてそうな予感がする!」
誰が聞いた訳でもなく、その女子生徒は宣言した。
ぱっと見の印象は正直、子供っぽいと思った。背丈は結奥と比べたら小さめで髪型はツインテール、その手には手帳とボールペンを持つ。モーセの十戒のごとく人波をかき分けてズンズンとこちらに向かってきた。
彼女のツインテールを縛る髪留めにはビー玉が付いている。左右に二つずつのビー玉が揺れるが音は鳴らない。きっとあれが子供っぽいイメージに直結するチャームポイントなのだろう。
「高等部1年A組、広束倫毅君ですね」
彼女は出会い頭で既に僕の名前を把握していた。
「え、そうですけど・・・・・・お会いしましたっけ?」
鴨居が隣で「社会人かよ」なんてボソリと呟く。
「私は新聞部の新見眞子。1年D組だよ。今日の遅刻についてお話聞かせてください!」
・・・・・・そりゃ遅刻は事実だけど危険な目にあったんだから手心を加えて欲しい。
新聞部だから一応、取材の体なのか。元気一杯で明るい、いわゆる陽キャだと一目で分かる。まともに対話してきた異性が結奥しかいないので温度差と距離感が凄い。
「新聞って、あの図書室の近くの?」
「そう!」
新見さんが目をキラキラ輝かせた。図書室の入り口そばには学内新聞が貼ってある。僕と結奥は高等部から受験してきたので存在を知ったのもつい最近の事なのだが。
「何か目に付いた記事はあった?」
「・・・・・・えーっと」
僕は困った。ハッキリ言って見てないからだ。そもそも図書室にしたって禄に利用してない。ただ他教室へ移動する際にチラと目にするだけで。
「ぐぅ。もしかして見てないの?」
「あの、ごめんなさい。今度から絶対見ます」
「広束、やめとけ。絶対なんて言ったら新見は真に受けるぞ。暇な時って言っておいた方が」
「放課後に通りかかってもらうからね」
「ホレ見ろ」
鴨居はいつの間にか僕のセコンド的な立ち位置を取ってくれている。
「それに新見の新聞は人を選ぶ」
「過激な論争をふっかけるって事?」
「とにかく一人の人間を掘り下げるんだよ」
ーーー
「だから二人に話しておきたいの。特に重心持ちの広束君には」「」
ーーー
「そんなの警察に話す事でしょ」
「そうも行かないよ。犯人は重心持ちなんだから」
「私は観察の重心。」
「でも、そのビー玉を警察に持ってっても何もしてくれないよ?いたずらか何かだと思われてサイアク公務執行妨害かも」
「ついでに言っておくと、私からすれば君も結構怪しいんだよ」
「何処からでも手を合わせるだけで帰る事ができる・・・・・・アリバイ作りに持ってこいじゃん」
「だから、警察に話すかどうかはともかく。重心が使える人の見解を聞いた方がいいんだって。今朝の一件を見るにどちらかが狙われてるのは事実だし」
「・・・・・・新見さんを信用できる理由にならないんだけど」
「今からそれを確かめて欲しいって言ってるじゃない」
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