第2話 彼女の首輪を外したい
勢いよく家を飛び出した綾野の表情が青ざめていて心配になった俺は綾野を追いかけることにした。
俺の家から綾野の家まではさほど遠くはなく走って5分くらいの所にあった。
息を切らしながらドアを開けた綾野は何故かピタッと止まった。
俺は壁に隠れて綾野の様子をうかがう。
「お父さん、ごめんなさい遅くなりました」
体を震わせながら綾野は誰かと喋り始めた。
「澄香、お前今何時だかわかってんのか晩飯も作らずにどこほっつき歩いてたんだよ。お前は俺の犬だろうが!ペットのくせに飼い主の言うことも聞けねーのか」
男(父親)は怒鳴りながら綾野の髪を引っ張った。
俺はその光景を見ていてもたってもいられずその場に飛び出した。
「おい、あんた綾野さんの父親なんだろなんでそんなこといえるんだよ!」
「は?なんだお前」
「綾野さんのクラスメイトだ」
そう答えると少しの間男は黙り何かを考えているようだった。
「なあ、お前澄香を助けたいとかこの状況を見て思ってんのか?」
謎の質問に俺は困惑した。
誰が見ても異常な状況なのだから助けたいと誰でも思うだろう。
「この状況でそれ以外ないだろ」
そう返すと男は笑ってとんでもないことを口にした。
「30万出せるなら澄香をやるよ」
親の言うとこじゃないだろ。そもそもお金と自分の子を交換条件にするとかどんな神経をしているのかが理解できない。
「わかった。30万払ってやる」
怒りで反射的に答えてしまう。
男は驚いた。
それもそうだろう高校生が軽々と払える金額ではない。
「じゃあ明日もってこい、本当に持ってきたらお望み道理澄香をお前にやるよ」
男はその言葉だけを放ちドアを思い切り閉めた。
次の日学校に行くと綾野は欠席だった。
昨日の件でなにかされているのではないかと授業中心配になった。
約束道理30万用意した俺は放課後綾野の家へと向かう。
俺がなんで30万用意できたかはあまり触れないことにする。
自分でもあまり使いたい手ではなかった。
勘違いを産みそうな言い方だが決して闇金などではない正規の方法で得たものだ。
インターホンを鳴らすと男がドアを開け姿を現した。
「約束した通り30万持ってきたぞ」
分厚い封筒を男に見せ言った。
「マジかよ本当に持ってきやがった高校生のくせに大金持ってるってことは家が金持ちとかか?」
「俺のことはどうでもいい早く綾野さんを出せ」
笑いながら無駄話をしてくる男に少々むかつきながらも俺は我慢して綾野を要求する。
男は綾野を呼び彼女が姿を現す。
俺は30万の入った封筒を渡し、綾野をこちらに寄せる。
「これで要はすんだだろ」
そう一言いい男はドアを強く閉めた。
あっさりとこの話が終わるとも思わず俺の中で怒りと安心がぐるぐるとまわる。
俺たちは公園に向かい、ベンチに座った。
「ごめん、綾野さんお金なんかで君を...」
綾野は口を開かず黙ったままだった。
それもそうだろうお金と引き換えにされ親からは何の躊躇もなかったのだから。
「綾野さんが戻りたかったら戻っていい本当に余計なことをしてごめんなさい」
俺は立ち上がって綾野の正面に立ち頭を下げた。
その瞬間彼女がおれの胸に飛び込んできた。
「なんで雨野さんが謝るんですか」
泣くことを我慢しているのが分かる今にも泣きそうだ。
「だって君が本意でもないことをしたかもしれないそれに人をお金で買うようなマネをしたんだ」
「確かにお金と私を交換した父にはショックでしたでも雨野さんが私のためにしてくれたことは本当に嬉しかったです」
俺は何も言わず彼女を抱きしめた。
「雨野さんの言うこと何でも聞きますこれからよろしくお願いします」
彼女は晴れた笑顔で言う。
「よろしく、でも別に言うこと聞かなくてもいいよ」
次の日、俺たちはあの出来事以降同棲することになったのだが...
「雨野さん!何かしてほしいことはないですか?」
すごく積極的になった。
「いやー特に今はないかな」
グイグイくるのはいいのだが距離のつめかたがすごくて俺の理性が持ちそうにないしただでさえ女性と喋らないのに学校でも美人で有名な人につめられたらなんかもう色々とヤバい。
「雨野さんなんか顔赤いような気がします大丈夫ですか?」
綾野は心配をし俺との距離をさらにつめる。
それはもう顔が目と鼻の先くらい近い。
あーもうヤバいやわらかいものが腕に当たって限界。
恥ずかしくなった俺は彼女と距離を置き話を変える。
「そういえば綾野さんって制服と着替えが1枚しかないよね今日学校休みだし買いに行かない?」
綾野が少し困ったような顔を見せる。
「私お金持ってないですし大丈夫ですよそれに元からあまり服持ってなかったので気になりません」
綾野はお金のことを心配していた。
「大丈夫だよお金は気にしないでそれに食器とかほかにも買いに行くものあるから一緒にいこ!」
実はお金は親の仕送りでどうにかなっている。
この前の件も実は親に頼み込んだ。
お気づきだろうけど俺の家はお金持ちだ。
俺は渋る綾野を何とか説得して市内の大きなショッピングモールへと向かった。
色々と日用品などを買いそろえ綾野は渋っていたが替えの服と下着も買った。
難易度が高かったのは下着屋だ。
何故か綾野は買い物中俺に引っ付いてくるので仕方なく俺も下着屋に入るしかなかった。
綾野が下着を選んでいる時終始店員さんが俺を見てニヤついていたので恥ずかしい思いをした。
「よしこれで全部買えたかな綾野さんかえ...」
綾野が何かを見つめていたので目線を同じ方向に向けるとクレープ屋さんがあった。
「ちょっと待ってて」
俺はクレープ屋さんに足を運び頼むことにした。
「すみませんイチゴのクレープとチョコバナナクレープください」
「はい少々お待ちください」
クレープが出来上がるまで数分待つ。
「お待たせしましたイチゴのクレープとチョコバナナのクレープです」
店員さんからクレーブを受け取り綾野のもとへ戻る。
「お待たせイチゴのクレープでいい?」
綾野はぽかんとしている。
「私のために買ってくれたんですか?」
「食べたそうな顔してたからさ」
綾野はクレープを受け取り笑顔で受け取った。
クレープを食べ終わり俺たちは家に帰ってきた。
リビングに入ると丁度お風呂が沸いたというお知らせが鳴った。
「綾野さん先お風呂は入ってきていいよ俺荷物整理するから」
「わかりましたではお先にお風呂いただきます」
綾野は着替えを持ってお風呂に向かった。
「よし、整理するか」
今日買ったものは結構多く、見るだけでやる気を失いそうだ。
やる気のある間にと思い早速整理に取り掛かる。
(食器はこっちに寄せて後は綾野さんのものだから置いておこうそれと...うん?)
見覚えのある袋を見つけたが中身が思い出せない。
「なんだ?何買ったんだっけ?」
袋の中身を確かめると女性ものの下着が入っていた。
俺は急いで袋から手を放し周りも見回す。
そういえば下着屋さんの袋はしっかり見ていなかった。
(綾野さんはまだ出てきてないよな)
誰もいなかったことに安心した。
「そういえばバスタオル用意してなかったな」
ふと思い出しバスタオルを洗面所に置きに向かった。
洗面所のドアを開けるとシャワーの音が聞こえる。
そっとバスタオルを置いたその時お風呂場のドアが開いて綾野が現れた。
俺は反射的に目をそらす。
綾野も顔を真っ赤にしてとっさにドアを閉めた。
「ご、ごめんわざとじゃないです」
「見ました?」
その質問には答えられない。
見たと言えばこの場合どうなる?俺が持ち合わせている答えそれは死だ。
大げさに言ったがよくない方向に行くのは間違えないだからここで答える答えは...
「ミ、ミテナイヨ」
「絶対見たじゃないですか!」
「じゃあ俺まだ整理終わってないから戻るねバスタオルここに置いておくから」
話を誤魔化して俺はリビングに逃げ込んだ。
こんな感じで俺たちのドキドキな同棲生活が始まった。
クラスで人気者の彼女は家では首輪をつけられて親に犬扱いされているらしいので飼いとることにしたのですが思ったより犬系の彼女で俺に甘えてくる danmari @danmari
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