クラスで人気者の彼女は家では首輪をつけられて親に犬扱いされているらしいので飼いとることにしたのですが思ったより犬系の彼女で俺に甘えてくる

danmari

第1話 首輪をつけられている彼女

俺の名前は雨野俊あまのしゅん17歳、わけあって一人暮らしをしながら高校生活を送っている。


俺にはこれといった特技も趣味もないが強いて言うなら読書が人の2倍くらい読むのが早いくらいだろうか。


こんなこと何の自慢にもならないしこんなことを特技としている自分が悲しい。


今日も静かに教室で読書をしているのだが、突然クラスの男子の数人が集まり喋っている。


「おい、聞いてくれよお前ら昨日さ部活の帰りにコンビニに寄ったんだけどさ綾野さんっぽい人影があってしかも犬の首輪つけてたんだよ」


野球部の石田が男子数人に話しているのが聞こえた。


そんな馬鹿な話があるわけないだろうと心の中で俺は思った。


アクセサリーで首につけるチョーカーか何かと間違えているのだろう。


実際につけている人を俺も見たことがないので知らないのも仕方ないかもしれない。


石田は本当に付けていたのかを確かめるためか綾野澄香あやのすみかに近寄り声をかけた。


「綾野さん、昨日さ学校近くのコンビニで綾野さんを見かけたんだけど、なんか犬の首輪みたいなのつけてなかった?」


それを聞いた綾野さんは困った表情になった。


「え、見間違いじゃないですか?人が犬の首輪なんてつけるわけないと思うのですが」


「うーん確かにそうなんだけどでも俺確かに見たんだよ綾野さんっぽい人影が首輪つけてるのをさ」


人影かよとツッコミを入れたくなったが俺が出ると話がこじれると思い、じっとこらえた。



石田がしつこく聞くとイケメンでクラスの人気者、前村透まえむらとおる が現れた。


「石田、澄香が困ってるだろもうやめろ。それに首輪のアクセサリーでチョーカーってのがあるしそれじゃねーの?後お前それっぽい人影で澄香って決めつけるのやめろよ」


「すみませんでした!」


石田は綾野さんに謝って自分の席に急いで戻った。


綾野さんのフォローを入れた前村は誰が見てもイケメンだった。


女子からの黄色い声で教室も盛り上がっている。


「澄香、大丈夫だったか?困ったら俺になんでも言えよ幼馴染なんだしさ」


「あ、ありがとうございます前村くん」


この二人が幼馴染がなのはみんなが知っていることで裏で二人は付き合っていてお似合いの美男美女カップルだと言われている。


そうしてこの話題は終わりいつも道理の学校生活に戻った。





下校のチャイムが鳴り、雨野は覚悟を決めた。


「よし、行くか」


そう、今日は卵の特売日なのだ。


俺はスーパーのチラシを持ち、最寄りのスーパー(戦場)に駆け込んだ。


中に入るともうすでに主婦の皆さんの激しい戦争が始まっており、俺もお目当ての卵のために戦場に駆け込んだ。


(な、なんて激しい戦いなんだ。だが、これに勝たなければ今日の晩御飯のオムライスが作れない何としても取らなければ)と心の中で叫びながら俺は何とか卵を1パック勝ち取ることが出来た。


「ふぅー何とか1パックとれたな。後は明日の食料もついでに買って帰ろう」


買い物を終えた雨野は買い物袋を持ちまっすぐ家に帰ることにした。


帰り道を歩いていると錆びた遊具が目立つ誰も寄り付かなさそうな小さな公園が見えてきた。


この公園を見るといつも家に帰ってきたなと俺はなぜだか思ってしまう。


特に意味はない、学校から家までの距離も徒歩10分と遠いわけじゃないしこれといった思い出があるわけではないのだが家までの目印的な感じのところとして見ている。


そんなことを思っていると草むらからガサガサっと音が聞こえた。


「何かいる?」


いつもならスルーするのだが今朝の学校での話を思い出して雨野は無性に気になり草むらへと近づいていく。


「おーい何かいるのか」


草むらにいる何かに呼びかける。


葉っぱはさらに強く揺れ、白い毛のようなものが少し見えた。


(なんだ?やけに動物にしてはでかくないか)


草むらの奥を俺はのぞき込んだのだがそこには犬の首輪をつけて食パンをくわえた綾野澄香だった。


「んんんんんーーーーーーーーーーー‼」


「うわあああーーーーーーーーーーー‼」


お互いに驚きすぎてものすごい奇声をあげた。


その直後綾野が何かを俺に訴えかけてきた。


「み、みず。んぐっ」


綾野は顔を真っ青にして胸部を強く何回もたたいている。


「大丈夫!?お、お茶あるからこれ飲んで!」


俺はさっきスーパーで買ったお茶を袋から出し綾野に差し出すと同時に彼女の背中をさする。


勢いよくお茶を飲みほした綾野は落ち着いた様子でこちらに振り向いた。


「驚かせてすみません。まさかこんな小さい公園に人が来るなんて思わなくてそれにすごくお腹が空いていてパンに夢中になって気が付かなかったんです」


パン一枚に夢中になるくらいお腹が減っていたのだろうか?というか彼女のしゅんとなった姿がものすごく犬が悪いことをして飼い主に怒られている様子に似ている。


「綾野さんは何でこんなところでコソコソとパンを食べてるの?」


「それは、家に居場所がないからです。あとこれがあるので」


これと言って彼女は首輪を差した。


「そっか、何というか大変だね」


お互いに沈黙してシーンとした空気になった。



しばらくして空を見上げるともう夕方のオレンジ色の空が徐々に暗くなっていくのを感じ取り立ち上がろうとした時綾野さんに俺は制服の裾をつかまれた。


「首輪のこと内緒にしてくれませんか?」


綾野さんは上目遣いで俺に頼んできてものすごくドキドキしてしまった。


「わ、わか...」


俺が了承しようと声を出そうとした瞬間彼女のお腹からぐぅーーーという大きな音がした。


綾野さんの顔を見ると顔を真っ赤にさせて小さく「すみません」と言った。


思わず俺は笑ってしまった。


綾野さんはものすごく恥ずかしそうにしている。


「よかったら家でご飯食べていく?」


「い、いいのですか!」


彼女は目を輝かせて聞いてきたので俺は「うん」と一言いって彼女を家まで案内した。


目を輝かせていた彼女が俺の目には尻尾を振った犬のように見えた。





家に着くと俺は早速キッチンに向かいエプロンを着る。


「綾野さんはゆっくりしてて出来上がったら呼ぶから」


「はい、わかりました」


と言っていたのに...


「あ、綾野さん?そんなに見られるとやりずらいんだけど」


彼女はすごく俺の料理している姿を見てくるそれもものすごく近くで。


「すみません、ですがじっとしているのも落ち着かなくて」


「そっか、でももう少し遠目で見てくれると助かるよ」


綾野は少し離れた場所に移動してくれた。


数分後料理は完成し、テーブルに出来上がったオムライスを運ぶ。


俺たちは席に座り「「いただきます」」をし、出来上がったオムライスを食べた。


我ながら今日はうまくいったと思う。


卵はとろとろに仕上がり、俺はデミグラス派なのでたっぷりとかけたのだ。


「おいしいぃー」


卵がトロトロのせい...ではないと思うが綾野の言葉が若干とろけている。


「雨野さんは料理が上手なんですね」


「そんなことないと思うけど」


「すごく、お上手です。私こんな卵とろとろに仕上げることできませんし、自信持った方がいいです」


「あ、ありがとう」


少し出れ臭い。こんなに褒めてもらったことはないので俺はものすごくうれしかった。


食事を終え温かいお茶お準備して綾野に渡した。


「雨野さん、さっきも言ったことなんですけどこの首輪のことは誰にも話さないでほしいんです」


「わかってるよ誰にも言わない」


そういうと綾野はホッとしような顔を見せた。


ふと時計を見ると結構時間は過ぎており綾野さんに大丈夫なのか聞くと彼女の顔が青ざめた。


「ごめんなさい、もう帰ります」


綾野は立ち上がり帰りの準備をした。


「おくっていくよ」


「大丈夫です。ご飯ありがとうございました」


お礼を言って綾野は勢いよく玄関を飛び出した。

































         




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