第26話

 オレフィスとカタリナの兄妹間の関係は崩壊し、オレフィスとイーリス、イーリスとその他の関係者との関係も次第に崩壊していった。

 カサルから力の正体を聞き出すに至ったオレフィスは、泣きつくようにエレーナの元を訪れた。


「た、頼む!!このままじゃ僕の王国が崩壊してしまう!!き、君が王宮に戻って来てさえくれれば、すべてはうまく行くとカサルは言っていた!」

「無理です♪私にはもう心に決めた方がいらっしゃいますので♪」

「バ、バラン伯爵の事か!?あいつは絶対やめておいた方がいい!この僕の失脚を狙って、次期国王の座を狙っているという噂がある!あんな男に国王となることを望むなんて、まともな人間の神経じゃないとも!」

「彼に国王となっていただくことを望んでいるのはこの私なのですけれど、それじゃあ私はまともな神経ではないみたいですね♪」

「う…」

「どうせ合わない人間同士が結ばれるほど、時間の無駄なことはないと思いますよ?イーリス様との関係がお気にいらないというのなら、他の肩を探されてはいかがですか?」

「だ、だからこうして君に…!」

「無理です♪」

「う…ううう…」


――――


 身内との関係が崩壊していく中で、王座の維持などできるはずもない。彼への忠誠心を切らした者たちは続々と王宮から姿を消していき、最後には全く誰も残らなくなっていた。

 一方で、次期国王には第一王子であるレイブンではなく、バラン伯爵がつくことが決定した。というのも、聡明なレイブンは自分が無理矢理王になるよりも、人気の高いバランを王の座に置き自らはバランを支える立場につくことが、弟オレフィスのしでかしたことに対するせめてもの”けじめ”となるのではないかと考えたのだった。


「バラン様、なにぶん急な形ではございますが、ぜひとも王の椅子にお座りになっていただきたい」

「わ、分かりました…。た、ただ私は王の政治などには無縁の人間ですので、ぜひともレイブン様には私のそばで私の事をお支え頂きたい」

「もちろんでございます」


 そうなると当然、まだ独身であったバランの婚約者は一体誰になるのかという事になるが…。


――――


 ある日の事、バランもまたカサルから知らされたのだった。エレーナに宿る女神の力が、【愛の女神】であると…。

 それを聞かされた彼は、次第にその表情を青白くしていった…。


「(そ、それじゃあ僕はほかでもない、愛の女神に目をつけられているという事に

…。それってつまり、僕はもうエレーナ様と結ばれることが運命によってきめられているという事に…)」


――――


 今日もまた、バランのイラストをみて体を悶えさせているエレーナ。二人の運命には愛の女神が微笑んでいる以上、これから結ばれることを防ぐことは誰にもできないのだった…。

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念願の婚約破棄を受けました! 大舟 @Daisen0926

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