第3話
「パパ……」
振り返ると上着を一枚羽織った、下はパジャマ姿のままの蓮が立っていた。
「なんでママ、すなばのなかでねてるの? うめちゃったらママくるしいよ」
五歳の子どもだから言い逃れは何でもできるだろう。しかし、このことを保育園の先生や友達に言ってしまう可能性がある。怪しんだ誰かが通報したら、私の人生終わりだ。
「ママ、やっぱりまだパパのことが許せないんだって。だからもうちょっとここで寝るから先に帰っててって言ってるんだ」
「さむくないのかな」
「砂は意外とあったかいんだよ。砂風呂っていうおふろもあるからね」
私は蓮の手を繋いでもと来た道を引き返した。蓮の手は冷たくなっている。暖かい部屋に変えればすぐに取り戻せるはずの体温を、私は蓮から奪ってしまうしかないのか。
砂場 佐々井 サイジ @sasaisaiji
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