第2話

「ねえパパ」

「うん?」

「ママ遅いね、朝もいなかったし」

「最近忙しいんだって」

「パパはママと仲直りしたの?」

「もちろん。蓮の前で喧嘩して悪かったと思ってる」

「ううん、大丈夫」

「寝ようか」


 おやすみと蓮に言って部屋から出た。航を起こさないように眠たくなるまで蓮と話すのは神経を使う。リビングでネットニュースをどこまでもスクロールするといつの間にか三十分立っていた。


 もう一度子ども部屋を覗くと二人とも寝息を立てて眠っていた。音を立てないようにゆっくりとドアを閉めた。


 息を深く吐きながら鍵をゆっくりと回し、チェーンを触れないように外してドアを開けた。一気に冷気が玄関に入り込んだ。それが子どもたちの眠る部屋に入らないように体を横にしてドアからすり抜けた。大気中に舞う要素一つ一つが氷っているのかと思うくらい寒かった。家の裏に寝かせていたスコップを持ったあと、フードを目深にかぶり、監視カメラのついている電柱の立つ道を避けて近所の公園に向かった。


 公園に着くと、街灯に照らされた滑り台が弱弱しく光っている。私は横を通り過ぎ、砂場に入った。スコップで掘り起こすと、埋めた妻がそのままの状態で砂に埋もれていた。


「考えすぎか……」


 蓮が航に不気味なことを言うからもしかして殺してしまった妻を砂場に埋めて隠したのがばれてしまったのではないかと思うと気が気ではなかった。思考が冷静になると異臭がし始めた。もうバレるのも時間の問題だ。早く違う場所に移して処分しないと。妻の死体に砂を被せていった。


 殺すつもりはなかった。冷静になった次の日に謝って仲直りしようと思っていた。でも妻は感情が荒いまま私に包丁を突き付けた。脅しているだけだと思ったが、妻はそのまま私に襲い掛かり、もみ合ったときに包丁が妻の体にズブズブ沈んでいった。あれだけ揉めて蓮や航に見られなかったのは奇跡に近い。

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