エピローグ

 美香のことは絶対に許せない。プロポーズする前で良かった。ケースを開けるとリングの中央でダイヤがまぶしく輝いている。ため息が漏れる。ケースを閉じてポケットにしまった。美香からの通知が届いていたが読む気にもなれずすぐに消した。どうせ嫌がらせしてきた男と浮気して、俺と別れさせたかったんだろう。もうあの二人でくっついておけばいい。


 久しぶりに自分のアパートに戻ってきた。前より広くなった気がする。一人で住むには問題ない。しばらく彼女もできないだろうからちょうど良かった。あんなにひどいことをされたのに、俺はまだ美香のことを考える時間がある。


 チャイムが鳴った。時計は日を跨いでいる。まさか俺にまで嫌がらせをするようになったのか。


 ベッドから起き上がってインターフォンの画面に近づく。鼓動が突然大きくなった。真っ白い肌に黒目しかない顔。でもそれは美香だとわかる。その目は画面越しに俺を睨んでいた。

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会ってよ 佐々井 サイジ @sasaisaiji

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