精霊さまとお料理教室

「ん、これうま」


俺はリビングにある2人用位のサイズの食卓テーブルで、先程涼風に貰ったカップ麺を啜っていた。


「チーズトマト味」という、今まで食べたことの無かった味が気になりさっそく1つ取り出して食べてみたのだが、これがまた美味い。


トマトの酸味とチーズの強めの味が合わさっていて、今までのカップ麺の中ではかなり俺好みの味だ。


(これは今度見つけたら何個か買っておこう)


そうこうしているうちにカップ麺の容器は空になり俺はその空箱を水で洗って捨て、浴室の方に向かった。


× × ×


「お、これか」


学校の放課後、俺は近くのスーパーマーケットに夕飯の買い出しに来ていた。


夕飯の買い出しと言っても俺は料理をしてこなかったし、何となくし始めるタイミングもなかった為カップ麺や冷凍などの保存食品だけなのだが。


そしてそのカップ麺を買いに来たのだが、実はまだ涼風に貰ったカップ麺が残っている。


しかし昨日の夜に食べたカップ麺の味が思いのほかに好みの味だったため、何個か買い置きしておこうと思ったからだ。


そんなカップ麺を何個かカゴに入れて奥の方に進んでいくと、調味料の棚の前で座り込んで悩んでいる長く伸びた青藤色の髪の少女が居た。


「…涼風?」


「…?ああ、月城さんでしたか。こんなところで会うなんて奇遇ですね」


「だな。そっちも夕飯の買い出しか?」


「そっちもって…まさかそのカップ麺が夕飯ですか…?」


涼風は少し困惑した顔をしながら俺の持っているカゴの中身に向けて指を指し、そう確認してきた。


「もちろん、これが俺の夕飯だ。だが今日はまだ涼風に貰ったカップ麺があるからそっちを食べようかと思ってる」


「…私がお渡しした物で喜んでくれているのは嬉しい事ですが、その様子だともしかして毎日そのカップ麺なのですか?」


「いや、カップ麺ばかりでは無いぞ。たまに冷凍食品とかも食べるし…」


俺がそう答えると涼風は少し困った顔をしてからため息をついた。


「…あのですね、月城さん。別に他人についてとやかく言うつもりも私はありませんが流石に食生活を見直しましょう。そのままの生活を続けていると早死しますよ?」


「と言ってもどうしろと」


「自炊をしろ。という事です」


「出来たらもうやってるよ。学校の調理実習を除くと今までやった事もほとんど無いし勝手も分からない」


「では、こういうことにしましょう」


涼風は少し考え込んだ後に自身の手のひらを前でパチンと鳴らした。


「私が月城さんにお料理をお教えします」


× × ×


「涼風が俺に料理を教えてくれる…?」


学園の男子達が聞いたら飛んで喜びそうな内容だが俺にはそんなに喜ばしいことのようには思えない。


「ええそうです。私的にも月城さんの食生活には言いたいことが山ほどありますが、本日のところは別にいいでしょう。しかし毎日カップ麺を食べ続けるとなるといつかは飽きる時が来るでしょう」


「…確かにそうだな」


「自炊の場合だと自身の作りたいものを作りたい味付けで作ることが出来ますし、値段に関しては作るものによりますがそれ以上に健康のための栄養がまるで違います。それに…」


「涼風。ここでこの話をしていると長くなりそうだからまずは買い物を終わらせてからその話をしよう」


「…そうですね」


俺は熱弁する涼風は止めて買い物を先に終わらすよう促した。


その後俺と涼風はそれぞれ買いに来たものを回収しつつ歩いていたのだがカップ麺と冷凍食品、そして飲み物しか買わない俺のカゴを見てから俺の方を睨んできた。


× × ×


「ではひとまず月城さんには『料理をする』という感覚を掴んでもらおうと思います」


「お、おう。よろしくとお願いします…」


現在何故か俺は涼風の家にいる。


というのもあの後色々話を聞き、「お料理ができると何かあった時にどうにかできる」と言われ涼風に料理を教わることになった。


そしてさっそく今日から始めようと意気込んだはいいものの、うちの家には見事なまでに調理器具が無かった為涼風の家にお邪魔して台所を借りることになったのだ。


「あいにく今日は金曜日で明日は休日ですし、お家もここから歩いて数秒なのしっかりと教え込んでいきますよ」


「…お手柔らかに」


そこから涼風のお料理教室が始まった。


「涼風。ここから先はどうすればいいんだ?」


「そうですね、そちらの野菜を全て乱切りで切ってもらってこちらのボウルの中に入れといてください」


「了解」


現在、俺は涼風に指導をしてもらいながら夕飯の予定のカレーを作っていた。


何故カレーなのかといえば元々涼風の夕飯の予定がカレーだったのと、簡単だけど工程自体は複数あるからという理由だ。


「まさか月城さんの家に全く調理器具が置いてないとは思いませんでした」


「普段料理をしないからな。親から一人暮らしの為にフライパンや食器は貰っていたがそれ以外は全く使わないから買ってないんだ」


フライパン自体もほとんど使っていない為綺麗なままの新品で残っている。

恐らくこのまま売ったら元値の8割くらいで売れると思う。


「ひとまず明日あたりに調理器具を買いに行きましょう。これから自炊をするのなら無いと行けませんしね」


「俺は何がいいのか分からないから涼風に厳選してもらいたい」


「そうですね。月城さんに任せっぱなしにしたら『安いから』とか『デザインがいい』とかの理由で選びそうですしね」


「ごもっともです…」


どうやら涼風には考えていることがバレていたらしい

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学園の精霊さまは恋を知る。 ろくねこ @AR1a

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