Part,12 Official enlistment
テスト用紙が配られる。光斬が目にしたのはテスト用紙に文字がビッシリと埋め尽くされている光景。右端には回答欄があり、回答は記述で全て単語で指定されているように見える。問題は全てさっき学んだ内容であり、話を聞いていれば簡単に解ける問題であった。
(あれ……? 意外といけるぞ?)
馬鹿だが話は真面目に聞いていた光斬。問題の意味がなんとなくだが頭の中に入ってきて、それに対応する答えがパッと浮かび上がる。ーー一通り答えを書き終わると、横目でネセントの姿を一瞬見る。すると、そこにいたのは爆睡を決めているネセント。とても余裕そうにしていたので少しムカついた光斬は、見直しをじっくりした後にテスト用紙を裏返しにした。
「んじゃ、終わりかな」
ネセントと同じような体制を取ろうとした瞬間、羽澄はそれを遮るようにテスト終了の合図をした。光斬は爆睡を決めることができず、羽澄の顔をただじーっと見つめた。
「……恋してる?」
「してねぇわ」
テスト用紙を回収した羽澄は教室から去ると、ネセントは急に頭を上げた。
「……わっ!!」
ネセントは光斬を驚かそうと大きな声を出すと、彼は思惑通りめちゃくちゃ驚いていた。座っている椅子に重心をかけていたため、椅子を倒して崩れ落ちた。同時に情けない声まで出していたため非常に滑稽な姿となっており、ネセントは腹がよじれるほど笑った。
「脅かすなよ……」
弱々しい声で彼は話すも、その声は笑い声によって掻き消される。
「あー……。お腹痛い……」
光斬は椅子を立てて座ると、羽澄が戻ってきた。
「……何かあった?」
「何もありませんでしたよ?」
「そう?」
「はい」
ネセントは羽澄の疑問にゴリ押し、無理矢理話を終わらせた。
羽澄は2人にテスト用紙を返却する。すると、テスト用紙の名前を書く欄の横に、2人とも「合格」と書かれていた。
「六波羅 光斬君が73点、ネセント・セラスちゃんが100点ということで、2人とも文句なしで合格。長い時間の座学、お疲れ様」
羽澄はそう言うと、教室に福岡支部所属の隊員が全員入ってきた。右京は教卓の前に立ち、右京以外の全員が席に座ると話を始めた。
「現在、うちの支部は『松風隊』しかない。だが、10人になったことで2つの小隊が作れるようになった。そこで、改めて小隊を編成することにした。六波羅とセラスが授業を受けている間に考えていた」
どうやら、それは支部長の松風 右京と現松風隊の第一副隊長の桐生 武蔵の2人で決めたらしく、それ以外の隊員はここで初めて聞くのだという。緊張感は皆等しくあり、それと同時に光斬とネセントもしっかり戦力として計算しているらしい。
「まず第一部隊の発表から……」
全員が息を飲む。
「隊長は
「続いて第二部隊の発表……。隊長は
光斬の横に座っていた風葉は、自分が隊長に任命されたことに驚きを隠せなかった。必死に驚きと喜び、そして責任感を同時に感じており、その証として鼻息がかなり荒かった。光斬はそんな風葉を、右京が話をし終わって松風隊が教室を出てからずっと見ていた。
「……はっ!!」
正気に戻ったのか、風葉は全員を手招きして近くに集めた。
「まずは自己紹介をしようか」
風葉はそう言うと、自分から時計回りに紹介すると言わんばかりに腕を時計回りに回し、紹介する順番を明らかにして話し始めた。
「神楽隊の隊長を務めることになった、神楽 風葉、16歳の大尉です。神の代行者元帥の神楽 真宮が姉だけど、私自身は姉ほど強くないから、それだけは覚えておいてください」
朱髪ショートに灼眼を持つ160cm弱の大きさの女の子が話した。
「持ってる魔剣は『へし切長谷部』で、刀とは別に火縄銃を生成できます。適正属性は火属性で、今は
風葉の横にいた黒髪ロングに青眼を持つ165cm程の大きさの女の子が自分の番かと確認すると、自己紹介を始めた。
「えーと、瑠璃 彩葉、20歳の少佐です。何故か第一副隊長に任命されたんですけど、まあそんなに気にしなくてもいいよ。ゆっくり仲良くなっていきましょう。持ってる魔剣は『炎夏』で、魔剣から炎を出せます。まあ、適正属性は風なんですけど。今は
瑠璃の横にいた青髪ショートに黒眼を持つ、風葉と同じくらいの大きさの女の子が静かに自分の番を確認すると、自己紹介を始めた。
「鳳 夏芽、19歳の少佐です。彩葉と同じく何故か第二副隊長に任命されたんですけど、同じ立場だと思って仲良くしてください。持ってる魔剣は『媒鳥』で、端的に説明すると高速で戦闘できます。適正属性は水で、彩葉と同じく
ネセントは事前に自分の番が次だと確認していたため、自己紹介が終わったことをしっかりと確認すると自己紹介を始めた。
「ネセント・セラス、15歳です。今日入ったばかりの新人ですが、強さには少し自信があります。気軽に話しかけてください。よろしくお願いします。持ってる魔剣は『信愛』で、身体能力がめちゃくちゃ高くなります。それと『フラガラッハ』も持っていて、こっちも身体能力強化です。適正属性は火、光、闇、風の
ネセントが光斬の背中を押すと、光斬は今ようやく自分の番かと認識した。それに気づいた光斬は自己紹介を始めた。
「えーと、六波羅 光斬、15歳です。ネセントと同じく今日入ったばかりの新人です。ネセントとは違ってそんなに強さには自信が無いですが、戦う気力だけは人一倍あると思ってます。持ってる魔剣は『斬奸』なんですが、正直記憶が曖昧で剣神から概要を聞けませんでした。けど、身体能力が上がるだとは言ってた気がします。適正属性は測った時に測定不能って言われたのでわかりません。不明だらけですが、よろしくお願いします」
「今回の新人、癖が強いなぁ……」
彩葉はボソッと呟く。夏芽も同感するように首を縦に振った。
「じゃあ、とりあえず今から自由時間にするから、話したりしていいよ。ネセントちゃんと光斬君は……、まず自宅から色々荷物取りに帰った方がいいんじゃない?」
風葉は2人に荷物を取りに帰った方がいいと言うが、2人はなんの事かさっぱり分からない。
「……それっていったい?」
「え? 羽澄さんから言われてない?」
ネセントはよくわからなかったため質問するが、風葉はさっきの時間に説明されたものだと認識している。その瞬間、風葉は何かを察したのか説明を始めた。
「神の代行者ってね、全寮制なんだ……。これは本当に羽澄さんが悪いから、私から色々言っておくわ」
落胆する風葉の指示に従い、2人は光斬の自宅に一旦帰ることになった。
美しい月と、残酷な世界。 ひょうすい @Hyosui1123
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。美しい月と、残酷な世界。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます