Part,11 I don't want to think it's real



 『神の代行者かみのだいこうしゃは、未来暦1387年9月8日に西暦から続く名家である神楽家、轟家、織田家が主体となり結成された組織である。東京に「神の代行者軍対フェミーバー司令庁本部」を、札幌、仙台、名古屋、大阪、徳島、広島、福岡に「神の代行者軍対フェミーバー司令庁支部」を設置し、3年以上の月日をかけてフェミーバーの侵入を阻む魔力による巨大なバリケードを構築した。以前にはユーラシア大陸にも支部があったが、全て基地自主破壊シグナルロストしている。

 階級制度を導入しており、1番下である准尉から少尉、中尉、大尉、少佐、中佐、大佐、少将、中将、大将、元帥の11段階である。元帥と大将は本部にしか存在しなく、それよりも下の階級の者は本部には存在しないため、支部長の階級は必然的に中将となる。階級が上がるにつれて与えられる権利も増えていくが、それに対する責任も大きくなる。階級が上がるには相応の実力と成果が求められ、本部の最高責任会議で判断する形となっている。

 神の代行者は5人1組の小隊を編成することが支部に義務付けられている。それは複数のフェミーバーを相手にした場合や強力なフェミーバーを相手にした場合、単独で勝つことが困難であるからだ。例外として、大将が直々に招集したものと編成した場合は5人以下でも構わない』



 「てな感じ。要するに君達は1番下の少尉になったわけ。で、現在福岡支部には8人いて、君達2人を入れて10人になるの」



 その瞬間、ネセントは何かを察して発言する。



 「ってことは、前まで8人で小隊を組んでたんですか?」


 「そうなるね。4人ずつでは流石に組めないし。もし組んだら本部の人に滅茶苦茶言われると思うよ」



 光斬はここまでの話をなんとかリアルタイムで整理すると、1つ疑問が思い浮かんだ。思い浮かんでしまった。



 「ひとついいですか?」


 「何?」


 「2つに分かれるってことですか?」



 光斬の考えはこうだ。即戦力として図った試験に合格した俺とネセントは、計10人の福岡支部で即戦力として換算され、2つの小隊に正式に加入できるのか。だが、今はこうして話を聞くに留まっている。そのため、俺達が神の代行者にとって戦力として考えられているのかわからない。ーー光斬はこの考えを上手く言語化することができず、端的な結果である「戦力として考えた場合、2つの小隊に分かれるのか」というかなり先の質問をしてしまった。羽澄はそんな光斬の質問の意図を汲み取り、何となくで理解した上で返答した。



 「そうなるね。神の代行者は入隊した以上、本部の最終決定がない限りは正式な隊員として即戦力として換算されるよ」



 羽澄が次のページをめくる音がする。2人も同じように次のページを開くと、そこには魔剣についての説明文が書かれてある。



 「魔剣についてなんだけど、2人共持ってるよね」


 「ありますよ」



 そう言うと、2人は魔剣を実体化させる。



 「そんな簡単に実体化って使えたものだったっけ……?」



 羽澄は目線を上に逸らして、2人にはギリギリ何を言ってるか分からないくらいの声量でボソッと呟く。過去のことを思い出そうとするが、思い出すのがめんどくさくなったのか、まあいいかと自身も魔剣を実体化させる。



 『魔剣とは、魔剣職人が魔力を込めて作る「全ての生命に対して効果的な武器」である。メリットも存在するが、その分のデメリットも存在する。そのメリットとデメリットの具合で、「上位魔剣」、「中位魔剣」、「下位魔剣」と呼称が変動する。現存する上位魔剣、中位魔剣、下位魔剣の割合は、1:3:6である』



 「で、この魔剣なんだけど、教科書に書いてある通りメリットとデメリットもあってね。ここには書かれてないけど、上位魔剣っていう滅茶苦茶珍しい魔剣はデメリットなしでメリットを得ることができるの」


 「えっ……。チートじゃないっすか」


 「そう、チートなの」



 羽澄は自身のナイフのような魔剣を教卓の上に置くと、同じように光斬は斬奸を、ネセントは信愛を机の上に置く。



 「私の魔剣は撃滅っていう魔剣なんだけど、魔法を使った時の魔力消費量を減らしてくれるんだけど、私の持つ魔力総量が減るって言うそもそもからトチ狂ってる関係なんだよね」



 羽澄が言うに、メリットが魔力消費削減でデメリットが所有者の魔力総量減少というわけだが、メリットとデメリットが良さを殺しあっている。だが、羽澄はこの能力を「トチ狂った関係」と言うだけで悪いものだとは言っていない。ーー羽澄は短剣状の魔剣を消すと、2人も同じように魔剣を消す。

 羽澄は1度教科書を閉じると、教室を退出する。



 「何があったんだ?」


 「さぁ……?」



 2人は顔を見合せて困惑していた。

 数刻流れて現在午後6時。2人は暇すぎたが故にダンスをしていた。そのダンスも飽きた頃、ようやく羽澄は戻ってきた。



 「さて。話すだけなのもなんだし、確認テストでもしましょうか」



 そう言いながら扉を開ける羽澄の手には、大量の問題用紙があった。それを見るや否や冷や汗が止まらない光斬と、瞬きが止まらないネセント。



 「そんなに難しくないからさ? 冷や汗出しなかまら机に頭ぶつけるのやめよ?」



 光斬は頭をぶつけて夢かと疑い続けていた。だが、額に通る感覚神経が脳に強い刺激の信号を送る。脳はそれを受け取り痛みとして変換する。それでも頭をぶつけるのをやめない。それを現実だと思いたくないから。光斬はテストを受けるという現実を受け入れたくなかった。



 (なんで受験してから1ヶ月以内にテスト受けねぇといけないんだよ!!)


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