Part,10 The threat suddenly appeared on Earth
光斬とネセントが連れられた場所は、小学校や中学校、高校でよくある教室だった。彼らは2人を教卓から1番前の席から1つ後ろの席に横並びで座らせると、右京以外も適当な席に座る。
「えー、改めて合格おめでとう」
教卓の前に立った右京が、2人に向けて祝福の言葉を贈る。右京はそのまま話を続けると2人は思ったのだが、……祝福はそれで終わりだった。
「……めちゃくちゃ急で悪いんだが、今福岡支部は人手不足なんだ。……徹夜で働くほどには。だから、基礎的な情報をここで叩き込む」
すると、2人の真後ろに気配を消して立っていた女の人が、顔と顔の間に顔を出して突然2人に話し始める。
「で、その情報を叩き込む……。もとい授業は私が担当するから、よろしくね」
とその瞬間、右京含め全員が教室から退出し始めた。光斬は勉強が嫌すぎて逃げようとしたが、立ち上がろうとした瞬間にネセントの手が肩に乗り、軽く止められる。光斬は片手で顔を隠して嫌がりながらもその状況を受け入れる。
(どんな顔してんだろ……)
光斬は彼女の顔を伺おうと、目を左に動かして彼女を見る。すると、彼女は光斬に向かって「諦めろ」と言わんばかりの表情で訴えかけている。
ネセントが彼の肩から手を離すと、2人はガチガチのとても姿勢の良い座り方で授業を受ける体制に入る。女の人は息が合っている2人を見て「相性いいな」と心の中で思ったが、それよりもパッと見た時に生まれる瞬間的な感想が口に出てしまった。
「……なんでガチガチなの?」
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「まず、私は
紫髪ショートで茶色の瞳を持つ160cmほどの身長の大人びた女性。2人の顔の間に突如として顔を出した者が羽澄である。教卓の前に先生風に立ち、指し棒を伸ばしたり縮めたりして話を始める。ちなみに、ネセント程ではないが大きなおっぱいをお持ちである。
「これから神の代行者について、フェミーバーについて、魔剣について、諸々授業を通して教えていくよ。Are you ready?」
「お、おー」
「Year!!」
ノリに乗り切れなかったネセントと、いきなり振ってきた羽澄のノリに一瞬で順応した光斬は、早速羽澄の授業を聞く体制に入った。
「まあ、最初は神の代行者についてだね。といっても、神の代行者がどんな感じでできていったのか、時系列で説明していくよ。まず、3ページを開いて読んでみて」
羽澄の指示に従い、2人は「神の代行者入門知識教科書」という白黒の表紙の教科書を読み始める。
『未来暦1384年3月28日、突如として月面から地球外生命体がカナダのエドモントンに降下。即座にアメリカ軍は地球外生命体に対抗するため戦闘を開始した。が、西暦1900年代前半の技術力までしかなく対抗する術が限られ、かつ地球外生命体には現代技術の攻撃は足止め程度にしかならず、核兵器でない限り殺すことは難しかった。そのため、翌月30日に北アメリカ大陸が陥落し、地球外生命体は休む間もなく南アメリカ大陸に進軍する。その僅か1ヶ月後の5月28日、南アメリカ大陸が陥落した。その頃から南北アメリカ大陸の住民の大半はヨーロッパに避難し、ヨーロッパにて地球外生命体に対抗する術を探し始めた。
3年の時が経った未来暦1387年9月8日、ナスカ・ロッゾが地球の核から魔力と呼ばれる発生、月からも流れてきていることを確認する。それによって人類は地球外生命体に対抗する手段を得た。巨大かつ強固なバリケードを構築し、その中に居住区を確保した。また、地球外生命体の討伐を目的とした組織「神の代行者」が結成され、神の代行者の名のもとに地球外生命体を「フェミーバー」と名付けた。
同月11日、大西洋沿岸にて大量のフェミーバーを観測したことによって、ヨーロッパ戦線が生まれた。この戦線は3年に渡って徐々に押されていくことになり、1390年2月26日にヨーロッパ全土が陥落した。
同年10月31日、フェミーバーは更に進軍し中国の重慶にまで到達していた。アフリカ大陸は既にフェミーバーの手によって落ちており、東南アジア、オセアニアもほぼ陥落していた。重慶で神の代行者は大規模な防衛作戦を行ったが敗北し、江東省にまで後退せざるを得なかった。同年11月1日、慶安でも大規模な防衛作戦が行われたが、ここで人型のフェミーバーが初めて観測される。この時点で五大陸の全てを人類は放棄し、世界人口が3000万人にまで減少していた。
1391年1月1日、太平洋の人類支配域の外枠を魔力で構成された巨大なバリケードで囲み、フェミーバーの進軍を防ぐことにした。その間に神の代行者の戦力を増強し、フェミーバーとの戦いを有利に進める戦術も編み出された。
1395年1月17日、バリケードが少しずつ崩壊を始め、少量のフェミーバーが進軍するようになった。神の代行者は反撃の一手に出るまで、耐えるしかなかった』
「人類……、こう見たらかなり絶望的なんだな……」
光斬は感想が思わず口に出てしまうと、ネセントも光斬の発言に改めて共感しながら、右手を膝の上で強く握りしめる。
「そう、人類ってかなり絶望的な状況なの。それに加えて今は人手不足。だから右京君はあんな暴挙に走ったわけ」
羽澄はページをめくって5ページを見ると、それに合わせて2人もページをめくる。一瞬で気づいた羽澄はページをめくる指示を出さずにそのまま話を続ける。
「1387年に結成されたこの神の代行者だけど、『この組織はどのような運営の元動いているのか』っていうのを今から教えていく」
「羽澄さん。それってフェミーバーをぶっ殺す上で必要なんですか……?」
光斬の目的は「フェミーバーをぶっ殺す」こと。それと羽澄が教えようとしている「神の代行者の組織内容」には、果たして因果関係があるのか? と光斬は思ったのだ。だが、その質問が飛んでくることをまるでわかったかのように、模範的な回答を羽澄は返す。
「いい質問ですねぇ。結論から言うと、1人で戦う上では必要ないの。けど、私達も神の代行者っていう組織でフェミーバーを討伐しているわけ。じゃあそれなりに連携が取れた方が効率的でしょ?」
「確かに……。連携が取れれば、1人の時よりも多くのフェミーバーを殺すことができる……」
ネセントはそう独り言のように呟く。それをしっかり聞き逃さなかった羽澄は、笑顔で頷く。
「そうなの。じゃあ、さっき言ったように『この組織はどのような運営の元動いているのか』っていうのを教えていくよ」
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