Part,6 Procedural Obstacles
ショッピングモールから出た光斬とネセント。そのネセントが、ショッピングモールから出る時、かなり怪しげに周りを見渡しながら歩いていた。光斬はそんな彼女を見て、呆れながら言う。
「……何してんだお前」
「魔剣の残穢のせいで私が殺したってバレないか不安でさ」
残穢。光斬にとってそれが何かはわからなかった。だが、この調子では彼女が確実に疑われるだろうと本能的に悟る。しかし、ネセントはそれに気づく様子が全くない。ため息をつき、彼女に向けて警告する。
「その調子だったら、多分バレるぞ」
「……え?」
本当に気づいていない様子。光斬は呆れながらもバレない方法の一つを伝えた。
「平然を装え。繕え」
「わ、わかった……」
ネセントは光斬に言われると、不自然にならないように徐々に平然とした態度になり、挙動不審な行動がなくなった。光斬はそんな彼女を見てホッと一息つくと、神の代行者福岡支部へゆっくりと向かった。
髪の代行者福岡支部に着いた光斬とネセントは、正面入口から入って窓口に向かう。すると、2人の大柄な男達が話そうと近づいてくる。
「あんたら、買い物帰りに入隊希望の手続きか? 余裕ぶっこいてんな」
「しかもカップルか? こっちは命懸けてんだよ!!」
どうやら、彼らは光斬とネセントの入隊希望が気に食わないらしい。「光斬とネセントの持ってる荷物の量が、生活感がありすぎて戦いに来る者の格好ではない」と主張する彼らだが、ネセントは反論する。
「私だって命懸けてるよ。先にやるべきことやってから来ただけ。文句ある?」
「それがその買い物か?」
「うん、そうだけど?」
すると、2人の男はネセントに殴りかかった。ネセントは持っていた荷物を全て彼に預け、彼に向かって誰にも聞こえない声で言う。
「光斬、これ大事なものだから」
「お、おう……」
大事なものだと言う彼女の意味がよくわからなかった光斬だったが、彼女が大事なものだと言うため、光斬は大事そうに慎重に持って壁まで離れる。
右前から飛んでくる左拳と、左前から飛んでくる右拳。ネセントはその攻撃を避けるために後ろに跳ぶ。男達は本気で殴ろうとしていたため姿勢を崩し、視界にはさっきまでいたはずのネセントが消えていた。
(どこに行った……!?)
常人の動体視力では動きを捉えることができない身体能力の高さに、客観的に見ていた光斬も驚いていた。
(直立の体勢から床を蹴るだけであんなに後ろに跳べるのか……。改めて思うけどあいつ、ちゃんとフェミーバーの身体能力してんだな)
ネセントは前傾姿勢で着地すると、体に魔力を纏い、走って男達の目の前に一瞬にして現れる。まだ体勢を崩している男達の内の1人が見ている視界に現れ、視界がネセントの殺意が籠った顔で埋め尽くされる。すると、次の瞬間にネセントは男の首を手刀で叩き、気絶させる。
(……は?)
すぐ横でその瞬間を見たもう1人の男は、ネセントの異常なまでの強さを見て戦意を喪失した。体から力が抜けたように崩れ落ち、圧倒的な力の差に絶望する。
「命、懸けてんじゃないの?」
上から見下すように煽るネセント。男は為す術がなかった。そのため、煽りを素直に受け止めることしかできなかった。
「中々にいいものを見せてもらった」
すると、職員専用の扉から現れたのは、銀髪短髪オールバック、横髪刈り上げに銀の鼻下髭と顎髭を生やしている、黒眼の目を持った190cm程の厳つい見た目をした男が現れた。
「桐生中将!!」
職員が口を揃えて、厳つい男に向かって言う。桐生は「気にするな」と言わんばかりに手のひらを向けて止めるようなジェスチャーを、職員達の方向を見ながらする。
「俺は桐生 武蔵だ。階級は中将。んでお前ら、何で戦ってた?」
「いいよ、この人の事気にしなくて。俺見てたし」
すると、光斬の横にいた人が歩き出し、桐生に向けて言う。光斬はその存在に全く気づかず、静かにその声に驚いていた。
「お前が入ると色々拗れる。俺がここまとめるから、さっさとやることやっとけよ」
「ああ」
桐生が職員専用の扉の中に入ると、その人が座っている男の元へ歩いて向かう。光斬は口を半開きにしながら、ネセントは魔力の多さや歩き方を
「君達の掲げる正義感はまあわかる。けど、それは我々の掲げる正義とは違う。入隊希望なら、ちゃんと募集要項を見てください」
そうひと声かけると、男の肩を2回叩いて労う様子を見せて立ち上がる。そして、ネセントを見る。
「君、中々に強いね」
「こいつらが弱すぎただけです」
「まあ、確かにそうかもしれない。君のその強さは人類に対して大きな貢献を成すだろう。入隊することを強く望む」
「じゃあとっとと手続きさせてください」
「あっ……、それはごめん」
そう言うと、職員専用の扉のドアノブに手をかけると、振り向きざまに光斬の方を見て言う。
「俺、松風 右京。階級は中将でさ、一応ここの支部長やってるからよろしく」
そう言うと、職員専用の扉を開けて奥へ入っていった。なんだったんだと思うネセントを見て、光斬は彼女にに近づいて小声で囁く。
「早く手続き済ませて帰ろうぜ」
「そ、そうだね」
タイムリミットの18時30分が迫っていたため、ネセントは手続きを急いで済ませ、家に帰った。
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神の代行者福岡支部から3人の隊員が、光斬達のいたショッピングモールにいた。ネセントが使ったフラガラッハの残穢を、3人の隊員はくまなく探す。すると、1人の隊員がフラガラッハの残穢を発見する。
「風葉、あったよ」
「本当?」
風葉と呼ばれる赤髪ショートに灼眼の目を持つ160cm程の女性は、報告した女性の元へ少し急ぎめに走って向かう。風葉は目に魔力を集め、残穢を確認すると、そこにあったのは昨日発見した未知の魔剣が残した残穢。
「この残穢、まだ新しい……」
風葉が呆気にとられていると、報告した女性が風葉の言葉が意味することの確認を口に出してする。
「魔剣を使った人がまだ近くにいるってことね」
風葉はそこで何か思いついたのか、全員ををこの場に集めようともう1人の隊員を呼び出す。
「夏芽、ちょっと来て」
別の残穢から情報を得ようとしていた夏芽と呼ばれる、青髪ショートの黒眼の目を持つ160cm程の女性が、風葉に呼ばれてその場に集まる。すると、風葉は2人に伝える。
「近くに魔剣を使った人がいる。残穢が明らかに濃かったからなんだけど、魔剣の残穢から魔剣の特徴を掴むから、その間に残穢に纏う魔力を元に、魔剣の持ち主を探してほしい」
「わかった」
すると、夏芽が残穢に纏う魔力の特徴を既に掴んでいた。それを2人に向けて伝える。
「この魔力の波長は女性特有のもの。属性は火、光、闇、風の
「それはまたとんでもない才能を……」
風葉は
「じゃ、探しに行きますか」
「彩葉、夏芽。いってらっしゃい」
彩葉と呼ばれる黒髪ロングの青眼の目を持つ女性と夏芽は、ネセントを探しにその場を離れた。すると、風葉は魔剣の特徴を探ると共に思うことがあった。
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