【IT】のスキルを持つ転生者の少年が主人公の物語。ITの「あ」の字もない異世界において、主人公が持つスキルは、なんの役にも立たない。それでも前世の知識を活かし、どうにかパーティに貢献していた。
そんな主人公が、冒険者パーティを追放されるところから物語は動き出す。自身を追放した仲間を見返すことを誓った主人公は、ひょんなことをきっかけに、自身が持つスキルの新たな可能性に気づく。
「これなら魔王を倒せるかもしれない……!」
電子ゲームも電話もスマホも無い異世界で、IT革命の狼煙があがる──。
三人称で進む物語。過不足ない描写と程よい会話文のおかげでとても読みやすく、描かれている物語がスルスルと入ってきてくれます。
そんな“分かり易さ”のもと描かれるのは、追放された少年の革命ストーリー。
スキルとともに地球で培った知識を活かして異世界を変えながら駆け抜ける様は“チートモノ”ならではの爽快感に溢れています。
また、本作は、異世界にあるものを壊すのではなく、異世界になかったものを新しく創造していく物語なんです。
新しい物で、人々に新しい“楽しい”を届け、新たな笑顔を生み出していく。そんな笑顔の創造こそが、本作最大の魅力。作品全体に、人々の笑顔が満ち溢れているんです。
だからかもしれませんが、読んでいてホッとするんです。
地球では当たり前のアレコレが、異世界をより快適に、より楽しくしていく。人々を幸せにする。そんな、いわば“幸せの革命”を、辛い仕打ちに遭ったはずの主人公が行っていく姿は、もう、応援せずにはいられません。
異文化の流入……。きっと、本当はそんなにうまくいかないのかも知れません。貴族、商人など様々な権力争いに巻き込まれたり。そこあった文化を破壊してしまったり。
実際、本作でも、主人公を利用しようと様々な人物が近づいてきます。
ですが、だからこそ。物語の中でだけは、未知の文化に人々が心躍らせ、熱狂し、笑顔になるような。そんな理想を叶えて欲しい。そして、最終的には主人公にも心から笑って欲しい。本作を読むと、そう願わずにはいられません。
追放モノ・チートモノの中でも、暗すぎる物語が苦手な方や、知識チートが好きな方にオススメしたい作品です!
ITの祖「ジョブズ」の教えを胸に、齧りかけのリンゴ……ではなく、齧りかけのオレンジを掲げて歩む1人の少年による異世界IT革命。その行く末は、果たして──。