第15話 罪深い魂の行き先
ふたりでとある有名な心霊スポットに出向いた時の話である…
そこは、土地の所有者であった老夫婦が自殺した場所らしく、「幽霊が出る!」とか「幽霊を見た!」とか話題になっていた場所で、そんなに遠くはなかった。実際に居るのか自分たちの眼で確かめる意味も含め、話によっては、その霊を“行くべき所に行かせるため”に行くことにした。ところが実際に行ってみると、そこに居たのは聞いた情報とは異なる幽霊三人組。中年の女性の霊がボスで、両側にいるいずれも中年男性の霊がしもべのようになっていた。身に着けている洋服は昭和と思われるデザイン、恐らく数十年ほど前に生きていたのであろう。それぞれが他人同士の霊たちであったが、力関係でそうなったらしい。霊も日々の練習次第で空き缶のひとつくらいは倒したり転がしたり出来るようになる。本物の心霊スポットなどにはその力を使い、肝試しに来た人間たちを脅して楽しむものさえいる。
三人の霊は(正確に言えば魂に対しては三体と呼ぶのだが)こちらがその存在に気づいたと知り、鬼の形相で威嚇してきたのだ。ひるむことなく呪文を唱えたところ、幽霊たちが悲鳴をあげた…「熱いーっ、助けてください!焼けるーっ!」これでも手加減したほうである。取り合えず呪文をやめて、老夫婦の霊の所在とその三人の霊がなぜそこに居るのかを問いただした。
事情はこうである…三人組は静かで快適な居場所を探して浮遊していたところ、老夫婦の霊が住むその場所を見つけ、庭には井戸もあったので(水の気は霊体にとって重要)、すぐに気に入り、力にものをいわせ横取りした…老夫婦は他に行く場所が無いので、敷地の片隅にある竹林に追いやられたのだった。もともとの所有者である老夫婦の霊を間近に呼び、見ている目の前で三人組の霊をたしなめて、老夫婦の霊の居場所を確保した。(すると老夫婦は責めることもなく、行き場のない三人組に同情したのか、そこに住み続けることを許した)
当初の目的である“行くべき世界に行かせることについて話をした。自殺は殺人と同罪で罪が重いことも説明した。隣で黙って聞いていた三人組の霊も怯えながら聞いていた。老夫婦の霊は「三日ほど考える時間をください」と言ってきたので了承した。そのあとで三人組の霊はどうするかを訊ねたところ、「もう少しこの世に居させてください」と嘆願してきたので、悪さをしないことを条件に聞き入れることにした。約束の三日後、老夫婦の霊のもとへ行くと、ふたりの霊は覚悟を決めて待っていた…すみやかに“行くべき所”に導く案内役を呼んで取り次いだ。
“重罪”を犯した者の行く世界とは…人間世界レベルの裁決など比較にならない厳しい審判の後、“無間地獄”と呼ばれるもっとも厳しい場所へ続く急流に流されるのだ。
殺人を犯した者は立場が入れ替わり、自分が相手にした方法と全く同じやり方で同じ場所で同じ時刻に“永遠に繰り返し殺され続ける”のだ。その時の“痛みや苦しみ”はリアルに伝わり、繰り返し味わい続ける。
また、自殺した者は自分が死ぬためにした時と同じ行為を同じ場所と同じ時刻で“永遠に繰り返し”、その時の“痛みや苦しみ”も同様に味わい続けなければならない。どちらもはっきりと意識はあり“もうやめたい!”と願っても繰り返し襲われる想像を絶する苦痛から、魂であるわが身はもはや死ぬことも逃げることも出来ずに永遠に繰り返されるのだ。生きている時の“おこない”がいかに大切なのかを肝に銘じなければならない。
神が設けた裁きの世界(地獄)は決して甘くはないのだ。
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