第7話 人間の欲望と愚かさ

 神は人間に決して争いごとをせず平和で高度な文明を築けるよう願った。

そのために人類の成長に合わせ、太古の時代からお互いが協力し合い、生活していけるようにいろいろな知恵を存分に与えてきたのだ。教えられ身についた知恵をもとに、皆で考え、作り、利用していく習慣を身につけることで脳は活性化し、さらに新たな発想が生まれる。それがさらなる技術の進歩に結びつき、人間の進化を促す。お互いが知恵を出し合い、発明したものを共同利用していくことで増々高度な社会を形成していく…理想はそうなるはずであった。

 それがいつしか生活道具は「武器や兵器」に代わり、人々は平和で平等に暮らせるはずが力づくで弱い人々を支配する者が現れ、貢物を要求し、出せなければ奴隷にして重労働を課す暗黒社会へと変わっていった。当然のごとく、弱肉強食化した人間社会の格差は激しくなり、安定した生活など何処にも存在しなくなる。いたるところで不満は爆発し争いが勃発、犯罪が増え、殺戮まで起こる始末。

 人間の持つDNAの中には決して消し去ることの出来ない良ろしからぬ「欲望」が根付いていたのだろうか…人間は悪いことをすると神から「天罰」が下ると口にするが、指導者としての役割を果たした神々は、その後の人間たちのする行いや過ちには一切の干渉をしてはならない。それは規則でありルールなのである。見える範囲にいたとしてももはや経過を傍観するしか成す術は無いのである。きちんと指導されても結果を駄目にしていくのは“人間のエゴ”であり、「自己責任以外の何ものでもない」のである。

 人類が進化し、科学がいくらか進歩しても地球人に争いが絶えることはない。

そして行き着く先で待ち受けるのが人間にとっては最終で最悪の発明兵器、「核」である。まさしく人類の愚かさの象徴である。人間は核による破壊や事故を起こすだけで、薬には「抗体」を造るのに核に対する抗体は造ろうとしない。何かあればただ放射能を漏れないよう閉じ込めようとするか、どうにかして薄めようとするかだけで、何の解決にもならない。自然界に拡散した放射能は赤ちゃんが普通に呼吸していい安全値まで下がるのに100年以上の歳月を要するのだ。拡散した放射能を速やかに消失させる抗体を先に造って欲しかったものだ。これほど愚かな人間はハッキリ言って「失敗作」以外の何者でもなかったのである。

 神々が住む惑星の大きさは太陽の数万倍である。地球がちっぽけに見えてしまう大きさのあの太陽でさえ広大な宇宙では極小サイズなのだ。地球が消滅しても宇宙規模の中では何も影響しない、ただ迷惑をこうむるのはお隣の月位である。ただ前にも伝えたが、宇宙の他の巨大惑星からみた地球は例え顕微鏡サイズであってもこれほどまでに自然環境の整った美しい星は類を見ないのである。そこに住む人間は他の惑星人たちからはとても羨ましがられているのである。

 高度な他の惑星人は身体や船体の大きさを自由に変えることが出来るため、地球人サイズで暮らそうと思えば可能なのであるが、勝手に住んだりましてや侵略などは重罪に当たり、法による厳格な裁きを受けることになるのだ。彼らは宇宙の管理局に許可されれば大気圏外から地球を眺望することが出来るが、その際は異次元シールド(機体の中を旅客機が通過しても接触することもなく、人間にも見えずに気づかれない)に切り替えないとならないのが規則である。研究対象である惑星において、不必要な興味を与えてしまうのは進化を阻害する要因になりかねないので、当然(関係者を含め)自らの機体や姿形をその星の知的生命体に見られることも、何か(飛行機や衛星など)と接触したりなど到底許されない行為なのである。存在が気づかれた場合は処罰を覚悟しなければならない。


※ 予録ではあるが、地球では最終兵器として名高い「核」、実は宇宙においての破壊エネルギーランクでは下から数えたほうが早いレベルだそうである。

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