青くて遠い

@AtArAyA8B

終わらない旅

生まれたところが寂しくて、孤独な人が旅に出ました。

ある時、大きな大きな青い屋根を見つけました。

同じような人が集まっています。ここでなら、雨も陽射しも凌げます。

みんな好きなところに椅子を持ち寄り話し合ったり、面白い話を語る人、何かしらか見せ物をする人、そしてその近くに集まったりしています。

だんだんと人が増えてきました。

たくさんの人に出会いました。屋根の下にはいつも誰かがいます。

楽しいからでしょうか、時は瞬く間に流れます。

居場所ができた人が去ったり、ずっと仲のいい人が死んでしまうことがありました。

でも、昔からいた人は人気者になり、それまで楽しくてしていた見せ物やお話を仕事にしたりしています。ここにいる人たちのみんなに聞こえるように話すだけで、それが真実になることもありました。


遠くから来た知らない誰かが、多く人を集めることが出来た者には素敵な宝物をあげよう!と言いました。


多くの人に集まってほしくて、みんな前よりも大きな声で話します。遠くから宝物欲しさに人が集まります。自分の言葉では話せない人も増えました。話しかけても応えてはくれません。段々と喧嘩も増えました。誰かが今日も泣いています。

屋根の下にいるのに寂しくて孤独な人が増えました。

ふと気づくと、あの大きな青い屋根が震えています。


屋根が外れて、初めてみんな気づきました。

その屋根は見たこともないほどに大きい青い鳥の翼だったのです。

大きな青い鳥は羽ばたき、あっという間にどこかに飛んで行きます。飛んでいくときの風で色んなものが飛ばされました。色んなものが壊れました。でもみんなそこが大好きです。

寂しくても孤独でも、帰る場所はもうないのです。



屋根がなくなったので風が吹きます。

どこからか見たこともない蝶が人々の間を飛びさります。

ふと見上げると、青い空が広がっていました。


みんな空なんか見ないで大きな声で必死に話します。喧嘩の声が聞こえます。口々に攻め合い、泣いてる人も増えています。

「どこへ行っても同じだよ、どうせみんな寂しいよ」誰かが言います。

蝶はどこから来たのでしょう。

ずっといたところが寂しくて、孤独な人が旅に出ました。

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