五話 君はウィッチ
今日は俺は一人で薬草集めに来ている。
そう、一人で。
レガリアに帰還した俺達はしばらくCランクのクエストをこなしていたのだが、ラクサス率いる『白光の剣』が高難易度のB、それからついでにCランクを尽く潰したため、とても平和になっているのだった。
平和になると、その時に物資を溜めておかなければならない。そのため、滋養キノコ(被膜に包まれた栄養のある液体を生成するキノコ。通称万能水茸)や回復薬に必要な薬草を拾い集めて来いというクエストが頻発。
そのため、複数の採取依頼を請け負い、大してかさばるものでもないので、個々人で行くことになった。無論ファーミはアスカちゃんと一緒だが。ムーユエは俺が一人でクエストに行くと言っても特に触れなかった。
ということは、だ。女の子に声を掛けるまたとないチャンス!
でもさ。ダンジョンに出会いを求める方が間違ってますよ。
人っ子一人いない草っぱらで薬草を採取。森に行けば滋養キノコもあるだろうし、それも採取して……
そこそこの量が溜まり、ふと森の中で思う。
それは、森の中で感じる清々しさではなく。草原で感じる大地の息吹でもなく。
ただ単純なことが脳を支配していた。
……ここ、どこだっけ。
「そーか。そうだよ。どこだよここは!?」
ムーユエが先導してくれるからよく分かんないんだった! 馬鹿! 俺の馬鹿! やっべえどうしよう! マジでどうしよう!
捜索隊が出ているなら動かないのが上策だけど、普通に探しに来るとは考えにくい。来るとしても二日、三日くらいしないと大掛かりな捜索などしてもくれないだろう。ならば自分で動くしかない。何より、一発ヤるまで死ねるかってんだ!
森を彷徨い歩くこと十五分程度。なんか急に視界が開けていった。
「うわ、すげっ……」
背の低い花々が咲き乱れ、温かい風が吹く。ぽっかりと円状の空間に出てしまったが、まるで楽園のような風景に思わず息をのんだ。奥にはレンガ造りの家があり、手前には川が流れていた。助かった、喉乾いてたんだよね。
俺は駆け寄って、水を手ですくった。
「ダメ!」
急に言われ、水を川に落としてしまう。
振り返ると、そこにはハニーブロンドの髪の女の子が立っていた。身に付けているものはどれも高級そうで古めかしい。ブーツに紅い軍服のような上着、下は白のミニスカートにガーターベルトの紐が覗いている。インナーは黒く、腰には携帯用の魔術書が。その上に重たい質感のレザーコートを羽織っている。
背はそこそこある。ムーユエとかファーミとかアスカちゃんとかが小さいだけで、普通程度だが大きく見えた。百六十センチジャストって感じ。まぁ詳細な数字は知らんけど。
顔は……可愛い。まだあどけないけど、綺麗な顔立ちだ。印象としては素直そうだが少し勝気っぽい感じもする。翡翠のようなグリーンの瞳が、こちらを咎めるように細められていた。
「生水は飲んだらお腹壊しちゃうよ! はい、これ」
「え……? なにこれ」
「ポーション。回復薬だよ。甘くないから男の人でも大丈夫」
「男にだって甘いの好きなやついるって。ありがとう」
特に怪我をしたわけでもないのだが、渡された瓶のコルクの蓋を抜いて、中身を喉に通していく。清涼感溢れる味わいの、爽快系。どこか柑橘の風味が香るものの、全体的に味はほぼしない。ただ貼りつくような冷たさがあり、歩き続けて火照った体が冷えていくのを感じた。そして、嘘のように疲労感が消えていく。
「これ、いいな。冷たくてうまい! スゲーじゃん! 体も絶好調だぜ!」
サムズアップを返すと、彼女は目を輝かせて近寄って来た。
「でしょでしょ!? これ失敗ポーションとか言われるんだけど、あっつい時には役立つし、ちゃんと疲労感も消えるでしょ!? ちゃんと上手くできてるんだから!」
「あー、錬金術師さん?」
「うーん、それも領分! 魔力を扱う全般のことができるから、何とも言えないなあ。一応ジョブは賢者。もっとも、錬金術の方は破門されたけどね。今はこういうポーションとか売ったり、レガリアでクエストを受けたりして暮らしてるんだけど……討伐依頼が消えて、ちょっとお金に困ってるんだよね……」
賢者か。俺のソードマスターと同じ中級ジョブ。魔力と知力に補正が掛かるジョブで、なるほど、彼女はそこそこ利発そうだった。というかラクサスの影響パねえな。こんなところにまで被害が波及してんじゃん。
「あ、薬草がいっぱい! 採取してたの?」
「そそ。滋養キノコもたくさん! でも道に迷ってさ……」
「あー、森はなれてないと厳しいもんね。送ったげる!」
「マジ!? うおおお、女神! 女神様、名前は?」
「クルエイティ・クリストフ。好きに呼んでいいよ!」
「じゃあクルティで。街に戻ったらポーションのお金渡すよ」
「い、いいよ! それは私が好意であげたんだから! お金は取れない!」
ほほう、しっかりしているな。しかし俺の気が収まらん。メッチャ親切にされると少し罪悪感があるのだ、一般人ってやつは。
「じゃあお茶でもご馳走させてくれよ。君がいなけりゃ俺は今頃お腹がスゲーことになってたかもだし」
「う、うーん……分かった! ありがとう! 君の名前は?」
「ユウヤ。ユウヤ・オコノギ」
「あーっ! く……おっと、い、いやー、あはは……」
「屑って言いかけてたでしょ。そーだよ、屑のユウヤ。PTで女の子に守ってもらってるヘタレ童貞ですとも」
「ど、どうて……」
顔を真っ赤にしてしまうクルティ。下ネタは苦手らしい。ファーミはよく知らないし、アスカちゃんは耳年魔、ムーユエは男性同士以外なら免疫がある。リューアも性に関しては聡く堪能な方だろう。たまに出る下ネタに臆せず突っ込んでくるし。
構わずに、俺はつづけた。
「クルティ、あの小屋に住んでんの?」
「うん。けど利便性が最悪で、移住検討してる。どっかいいとこ知らない?」
「ウチ、一部屋余ってるけど。多分相談したらOKくれると思う」
「ホント!? ありがとう! ユウヤっていい奴だね! ホントに屑なの?」
「俺としては違うって説を推したいんだけどさぁ……」
「本人も強気に出れない何かがあるってことだね。なるほど、納得。さ、いこっか!」
「納得すんなよぅ……行くけども」
彼女に先導されながら、俺は気になったことを訊ねてみる。
「あの小屋、何で住んでたんだ?」
「去年亡くなった師匠と住んでたんだ。お婆さんだったんだけど、まぁ、これがまた嫌味な人でさ。ここに住んでて研究ばっかしてたら一生男できないね、って酷くない!? も、もしかしたら出会いがあるかもしれないじゃん!? ナンパされるの、ちょっと憧れというかさ! こう、本みたいな出会いがあるかもしれないし!」
「へい、クルティ。俺で妥協しない?」
「あはは、斬新なナンパ! でもなんだろう、どことなく古臭いような気もする……。まぁ、ありがと、気持ちは嬉しかったよ!」
「うわー、さりげなく俺振られるの巻」
地味にショックだ。ナンパとかしてほしいのかと思うじゃん……? 夢をかなえたのに本人は微妙そうでがっかり。彼女は真っ赤になって怒っている。
「そ、そりゃ初対面だもん! 後、ロマンチックじゃないし!」
確かにロマンチックには程遠い出来だったが。そう思うと申し訳なく思える。
「だよなー。ごめんな、クルティ」
「いや、いいけど……いや、やっぱよくない! がっつりご飯奢ってもらう!」
「なんでまた」
別に構わないけれども。そこそこ、貯金もできてしまったし。
クルティはお腹を押えつつ、猫背気味になっている。
「魔物とも遭遇せず、野生動物とも出会わなかったので……三日間、薬草とキノコしか食べてなくて……」
「お、おう……いっぱい食べな」
「ぐすっ、ありがとう……」
なんでもできる気立ての良いしっかり者、のイメージから貧乏な薄幸少女の印象が根付いてしまった。
そんな彼女はかなり健啖家だった。キノコと鶏肉のクリームパスタ、バッファローのステーキに野菜を煮込んだソースをかけたもの、丸いパン、ピザっぽい四角いチーズの乗ったやつ、具だくさんの野菜とベーコンのスープ、シーフードのピラフ、パンケーキ山盛りを注文して、もっしゃもっしゃと口に運ぶ。こんなに食うなよ人の奢りだと思いやがって、と思わなくはなかったが、彼女が本当に幸せそうなので、黙っておいた。俺はスライスされたリンゴの入ったアップルティーの香りを楽しむことにする。結局すべて食べ終えたのはきっかり一時間くらいだったが、全部美味しそうに食べていて、また食べ物ごとに表情が変わるのがとても面白かったので、まぁ良しとしておいた。美少女は何をしていたって美少女なのだ。
明らかに張っているお腹を撫でながら、クルティは満足そうにうなずいていた。
「美味しかったー! ありがとね、ユウヤ!」
「いーよ、クルティの可愛いところ見れたし」
「え、どのへん? ご飯食べてると、師匠からはこの無駄飯喰らいがってお尻蹴っ飛ばされてたのに」
「美味しそうに食べてくれるから、奢りがいがある」
「じゃあ明日も奢って!」
「それはムシが良すぎ。きっちり稼ごうぜ。むしろ俺に奢れ」
「ですよねー……あはは。って奢らないよこっちもピンチなのに! ……ちょっと遠くまで行って討伐クエスト受けたいんだけど、ユウヤもどう?」
「えー……? まぁ、仲間を紹介するくらいならできるけど」
「ホント!? どんな人たち!?」
「女神、聖騎士、ロード、槍使い、んで俺が一応ソードマスターかな。野郎でいいならウォーリアーがいる」
「ロードと槍使い以外中級から上級ジョブじゃん! すっご!」
「賢者も中級でしょ。確か、大賢者が上級だっけ?」
「うん。レガリアでは中々中級から上っていなくってさ。遠慮なくBの依頼受けれるね!」
「か、勘弁してくれ! 戦闘はしんどいんだって!」
「あっはは、ユウヤは知らないだろうけど、私、ケッコー強いんだよ? 魔術の威力と魔力だけは師匠の折り紙付き! ま、制御甘いんだけど……えへ」
「制御大変だよなー、魔術って。俺なんて才能無いから一メートルほど進んだところで霧散するんだぜ、魔術」
「それは多分ね、属性の相性だと思う。そもそも、自分の魔力が神聖魔術に向いてるのか、古代魔術に向いてるのか、自然魔術に向いてるのか傾向を知ってから会得するものだよ」
「……そんなこと、したことないや」
ムーユエのやつ適当だったのか。いや、そもそも女神ってどういう魔術体系なんだ? よく分からん。ファイアーボール知ってるなら普通の魔術くらいは知ってそうだが。まぁ火なんて、恐らく自然魔術の類だろうけども。
そう呟くと、おかしそうにクルティが笑った。
「あははははっ! それで魔術が一応使えてるの凄いよ! 住む場所決まったら教えてあげる! 一日銅貨三枚でいいよ!」
「そうだな、俺も便利になるし、クルティも儲かるしウィンウィンだな!」
「え、いいの?」
「それなりのコンテンツにはそれなりの金を払うべきだろー。本職の魔術師から教えてくれるんだぜ? 金払うって。それに、明日生きる金も、クルティにはなさそうだし」
「うぐっ、正解……お願い、雇って? 魔術の家庭教師として! ね? ね!?」
「わーったよ。んじゃ、早速頼むわ」
「ん!」
俺達はお会計を済ませ、近場の広場にやってきた。広場とは言っても街外れにある人気のない場所で、たまーにラクサスが素振りしてる。あいつは見えないところでも努力している凄い奴なのだが、その性欲の矛先がこちらに向いていることが大問題だ。人としてちょっと尊敬とかしている場合ではない。
「はいこれ」
「なにこれ」
剣だ。半端な長さで、彼女の大きなリュックに存在し、柄だけ見えていたもの。紫色の半透明な剣。刃がない……? どういう剣なんだろう。
「君がソードマスターなら、これだけでこの剣の理が分かるはず。これは師匠の代から継がれてきた魔法剣なんだ! 魔法っていうのは、まぁ超強力的な魔術とか強制執行される魔力で結界作って自分のルールの押し付けというか、まぁそう言う類の失われた魔術をそう呼ぶの。この魔法剣は、古今東西、あらゆる魔術を封入してるの。魔法剣・オール。運がよければ、全部使えるようになっちゃうかも!」
「おお、こんなズバリ虎の巻が!」
「とらのまき? まー、普通は無理だけどね。さ、握ってみて」
剣を受け取って、柄を握ろうとした瞬間だった。
「あ、いたー! よかった、探したでありますよ!」
アスカちゃんだ。こちらに駆け寄ってくる。
「どしたのアスカちゃん」
「危険度Aランクの魔物です! 緊急クエスト、ワイバーン襲来ですぞ! ユウヤ殿、それと……えっと、どなたでありますか?」
「あ、クルティって言います! ってワイバーン!? そんな山陰の希少種が何でこんなところに!?」
「説明は現場に行きながら! 中級以上の人間は全員招集なのです!」
「はー……っ、もう嫌。俺はゼッテーいかねえからな」
「行かないとラクサス殿をけしかけるとムーユエ殿が」
「あんにゃろう……!」
行かないわけにはいかなくなってしまった。ラクサスがすっかりトラウマと化していることを見抜いていたか、ムーユエ。それともただ単に俺がラクサスと絡むシーンが見たいだけだったりするのか。どちらもあり得そうなのが悲しくなってくる。
スライムの奥地にやってきていたが、そりゃもうてんやわんやだった。森が燃えてるし。魔術師の連中は氷魔術や水の魔術で事態の鎮静化を担ったが、空を飛び、現在進行形で火球をこっちにぶっ放してくるワイバーン相手に為す術がない。こういう飛行系の敵には弓が有効だろうけど、普通に強靭な鱗や翼膜に弾かれてる。わー、こえー。
「ありゃ爬虫類の分類だろ? 氷魔術でどうにかならないのか?」
「む、難しいと思う。あんな上空だと距離減衰が……」
クルティはそう返してきた。うーむ、どうしたものか……。
「あ、やあ。ご覧の有り様なんだ、愛しい君」
大盾を持つラクサスとウィンが手招いていた。近づいていく。
「ラクサスか。ま、お前がいれば人に被害は出ないだろうけど……」
「信頼してくれて嬉しいよ。でも、なんでワイバーンがこんな田舎に……? 普通、北の山陰から出てこないんだ」
ラクサスは悩んでいるようだったが、俺はベッタベタな線を疑ってみた。
「あれじゃね、ベタだけどこいつの赤ちゃんとかがレガリアに匿われてるとか!」
「ねーって。ドラゴンは子供でもフツーに始末しなきゃならん。しかも普通は群れで行動すんだよ、ワイバーンってのは。一匹だけぽつんとか珍妙すぎ」
ウィンが手をパタパタと横に振って俺の考えを否定する。
クルティは、とみれば、魔術師の列に加わって消火活動に勤しんでいる様子だった。アスカちゃんは目を輝かせているファーミを押えている。飛ぶトカゲの何がそんなにファーミを惹き付けるのやら。カッコいー、という歓声も聞こえる。ねえ空気読んでファーミ。ムーユエは要救護の人間に治癒の魔術を施しているようだ。
このままではジリ貧だ。俺は先ほど貰った剣を、とりあえず握ることにした。
――――脳裏に焼き付く、経験の嵐。その膨大な知識と魔力の奔流に、俺は一瞬気を失いかけた。
「お、おい、ユウヤ。どうしたんだよ、ふらついて。ってお前、それ魔剣か? それとも魔法剣?」
「……魔法剣の類。よし、とりあえず最低限の仕事はするぜ。動きを止めて地上に引きずり下ろす。後はよろしく!」
「お、魔剣術でも覚えたのか?」
「ま、見とけよ」
いつもの剣を抜いて、ごく当たり前のように、風の魔術を剣に宿す。
しかし、風の魔術はあの上空には届かない。減衰して強い風がワイバーンを撫でるだけだろう。
けれども、もう一つ。空いた手で魔術を発動する。
「届き得る――次元!」
空間と空間を繋げる。そう、丁度、ワイバーンが通りそうな進路に。そして、風の魔剣術を放つ。
「いけ、竜殺し――アスカロン!」
魔剣術は繋がれた空間の間を走り、風の刃は威力減衰することなく、ワイバーンに直撃した。真っ逆さまに、え、こっちに落ちてくる!?
「ラクサス!」
「さすがユウヤ、分かってるさ! グランドシールド!」
盾の防御術、光の壁を顕現させるグランドシールドが巨躯を受け止める。すっげー、さすがラクサス。Aランクのクエストも引き受けられる最強の盾。
ムーユエが駆け寄ってくる。クルティまで近寄って来た。
「凄いです、そう言えば風の光力変化は最初から使っていましたね。ですが、今のは風の魔術と、次元……つまり古代魔術を感じましたが」
「おう! クルティに貰った剣が教えてくれたんだ! クルティも教えてくれたしな!」
「わ、私こんなの教えてない!? わ、ワイバーンを一撃で叩き落とした!? そんな馬鹿な!? ユウヤの魔力の量じゃ、風の魔術はともかく次元魔術なんて発動できっこない! 一体どうやって!?」
「剣を握った時、ぶわってなんか魔力が広がった感覚が……って、あ!?」
なんか、クルティに貰った剣が透明になってる……? それを見て彼女は大慌てでそれを奪い返した。なんかすっげえ泣き顔だ。
「ああああああああっ!? ま、魔法剣の魔力が消えてる!? き、貴重な魔法剣が……! 売れば屋敷が五件くらい建つ師匠が残してくれた頼みの綱がぁ……!?」
さめざめと泣き始めるクルティに、人々が寄って来た。
「屋敷五件しか建たないのですか……魔法剣って意外としょぼいのですね。わたくしの剣の方が高いです」
「姫様、その情報は今引き合いに出さない方がよいかと」
こいつら死体蹴り過ぎるだろ。
よほど怒っているのか、クルティは地団駄を踏んでいる。頭掻きむしっちゃってる。あー、マジでごめん。
「むがああああ! 金がなんじゃー! 想い出と思い入れがいっぱいいっぱい胸いっぱい詰まってんじゃー! 弁償しなさいよ、弁償! ユウヤ、弁償!」
「……ファーミ、その剣くれてやったら?」
「むう、ユウヤ様が仰るなら……」
「ななななりません!? 王家の宝剣をごくあっさりとどこぞの魔術師に売り飛ばさないでくださいませ!」
「え、王家? ……って、ああああああああ!? ふぁ、ファミロフォン様ぁ!? ひ、ひえええええええ! は、ははぁー! あ、あんな剣はどうでもいいので打ち首だけは勘弁してくださいお願いします……!」
クルティは国家権力に死ぬほど従順だった。面白いな君。
「ユウヤ様、この方は愉快なお方なのですね!」
「う、うーん……俺は未だにどういうキャラか掴みがたい」
「ひええええ、ユウヤ~! 姫様と友達なの? なら処刑だけは! 処刑だけは回避させてぇ~!」
「分かった、魔法剣のあれはチャラな」
「そ、それとこれとは別! 私の想い出の剣をあんな魔力なしのペーパーナイフ以下にしてくれた恨みは……!」
「ファーミ、俺こいつに借金背負わされようとしてんだと」
「え? ねえ、わたくしの将来の夫に何か?」
「いえ、なんでもありません。川の流れのように私の意見は流してください……!」
「良かったですね、ユウヤ様!」
「超絶ラッキー!」
「や、やっぱり噂は本当だったんだ……! クズのユウヤだったんだ……!?」
いや、その噂最初から俺は否定していなかっただろ。
そうして、一行に、かなり不承不承ながらも、クルティが加わるのだった。
ちなみに、少しはお金を返してほしいらしく、俺のへそくりである金貨十枚をこっそり彼女に渡して事なきを得るのだった。
最強×チキン=0 最強最弱なゲス主人公の非英雄譚 鼈甲飴雨 @Bekkou
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