最終話 貴方の名は



「すまない…アリシア……人狼族の為なのだ…」


「そんなの嘘よーーーー!!!助けてーーーーー!!!お父様ーーーーーーーー!!!!!!!!」



……………………………



朝日が差し込む自室で目が覚めた。


またあの夢だ…


ヴォルフガング王国の侯爵令嬢となり悲惨な結末の悪夢を見たり…


ある時は空を飛び回り詠唱も無しに王国筆頭魔術師ですら不可能な威力の

火球魔術(ファイヤーボール)を放つ戦士になる。


「姉さん起きてる?父さん達はもう農作業に行ったよ」


今年で18歳になった弟のルークが私を起こしにきた。


私はアリス・ヴォールク


父のリチャードと母のアリアは貴族でも何でもないヴォルフガング王国に住む、ただの農夫で私は、よく居る人狼族の村娘だ。


「姉さん、明日は王国魔術師の試験だろ?姉さんほどの実力なら落ちる事はないけどさ遅刻で受けられないほうが心配だよ」


やれやれと呆れた顔を向けるルークは既に弓を携えていた。

そういえば今日はルークと狩りに行く予定だった。


「すぐに用意するから外で待ってて!」


バタバタと飛び起き、ローブを纏い、森を散策できるブーツを履き、12歳の誕生日に父さんから贈られた杖を取る。


貧しい村娘が持つに相応しくない、この杖は父さんが無理をして買ってくれた宝物だ。


10歳の頃、人狼族には極稀な魔術の才に目覚めた私は村の期待を一身に背負っていた。


あれから10年…


私は誰の教えも無く独学で魔術を学び、村長の本や街の図書館に通い、それなりに魔術を使えるようになった。


だけど魔術に目覚めると同時に10歳の頃から頻繁に夢を見るようになった。


断片的に見る夢は、ヴォルフガング王国であったり知らない不思議な建物だったり

様々な景色と不思議な体験…そこには、ある男が英雄として存在していた。


英雄と言うには似つかわしくない三枚目の黒髪黒目の青年……


だけど、その男は常に私を慈しむ優しい眼をしていた。


「姉さーん!まだーー?」


「今行くーーー!」


窓から返事をして外に向かう。 


…………………




「また、あの夢を見たの?」


森林の獣道を歩きながら尋ねるルーク。


「今回のは久しぶりに見たけど…堪えるわね…あれは…」


初めて見た時は、優しい父さんや母さんに怯え手のつけられない程の暴れ方をしたらしい。


「フェンリルだっけ?聞いたことない神様が出てきて僕は食べられてしまうんだろ?」


茶化すように笑いながら森を進むルーク。


「シッ!何か居るわ!」


ニオイからして野生猪(ワイルドボア)、この辺りに生息する魔物。


「ラッキーだね姉さん、まだ出発して間もないのに獲物が見つかるなんて」


「油断しないのルーク!たまに死人が出るほどの凶暴な魔物よ」


意気揚々と木の枝に飛び乗りニオイの元に向かうルーク。


「子供じゃないんだからさ、野生猪(ワイルドボア)くらい狩れるさ」


全く……小さな頃は、あんなに可愛かったのに……もうすぐ一人前の男になり、父さんの元も離れてしまうのだろう。


私も魔術師試験に受かったらギルド宿舎…成績優秀なら城の寮に住むことになる。


「うわわ!!姉さん!そっちに行った!」


「ブモーーーーー!!!」


大きい!!ルークの矢が刺さり激昂した野生猪(ワイルドボア)は通常の二倍のサイズはあり、こちらに向かって突進してきていた。


「森羅を司る神々よ…我が求めに応じ地を這う罠となり、敵を翻弄せん!アース・トラップ!」


マナを集め詠唱すると地面の土が融解し泥となり、そこに突っ込んで身動きが取れなくなる野生猪(ワイルドボア)


暴れまわり、こちらまで泥が飛び散る。


「ナイス♪姉さん!」


十数の矢が降り注ぎ、身動きが取れない野生猪(ワイルドボア)は断末魔を上げ動きを止めた。


「ルーク……あんたね〜!!」


泥だらけになった私を見て、しまった!という顔をしてバツが悪そうなルーク。


「はは…まあ、デカい獲物を狩れたんだから結果オーライと言う事で♪」


屈託のない笑顔は子供の頃のままだ。


「しょうがないわね…川で洗ってくるから家まで獲物は運んでてよね」


「はーーい♪」



………………………………



「明日は魔術師試験か〜…」


服を脱ぎ川で身を清めながら、明日の事に思いを馳せる…


人狼族の魔術師は珍しいとはいえ試験は厳しく

毎年各地から数十名という魔術師の卵が集まり、合格するのは数名だけ……


私以外に魔術を操る者を見たのは王国筆頭魔術師のデモンストレーションだけ…


あの域には達してないものの、近づける努力はしたつもりだ。


周りは絶対に合格すると言ってくれるのだけれど……



!?


このニオイ……


知っている……初めてなのに懐かしく……胸を締め付けるような…


石をニオイの元に投げてみる。


「いったーーー!」


この声…


「誰なの!?居るのは分かってるわ!」


ゴソゴソと茂みから申し訳なさそうに現れる黒髪黒目の青年…


「いや!違うぞ!!覗いていたわけじゃない!訳があって…」


洗いたてで濡れたローブを着て男に近づく。


「貴方……名前は…」


「そんな事を聞いてどうする……憲兵に突き出すか逃げるかと推測したが?」


この雰囲気……その瞳は……


「姉さーん!助…けて………」


ふいに遠くに響く声を聞き逃さなかった。


全速力でルークの声の元に向かう!


………………………………



オーガ・キング……


獲物が転がり、ルークを掴む巨人…


そんな…こんな場所に…なんで…


本で読んだことがある、秘境に生息する最悪の魔物……国家が一個小隊で挑む化け物…


「グルルルゥゥ…」


「姉さん!なんだよ!こいつ見たこともない…ガァァ!」


ミシミシとルークを握るオーガ・キングに火球魔術(ファイヤーボール)の連打を見舞う!


夢で見た無詠唱の火球魔術(ファイヤーボール)を見様見真似で習得したが、威力は……


「グオオォォォォ…」


一瞬怯む程度でビクともしない!


「姉さ………ん………」


ルークが!!!!ルークが握り潰される………助けて…



ザン!!!



オーガ・キングの首が飛び…先程の男が剣を振り切った形でいつの間にか立っていた…


全く見えなかった……人狼族の動体視力を持ってしても…


「あぶねー、もう少し遅れたらヤバかったな…借りは返したぜ!あばよ」


この男は……


「待って!名前を」


「ですよね〜♪許して貰えませんよね〜♪仕方ねー逃げも隠れもせん!そのナイスバディーを拝めたんだ!捕まる価値がある!」


「憲兵は呼ばない……」


この人は……私の……


「その代わり…」


夢で…見た……英雄…


涙がこみ上げてくる…


「なんだ……金なら無いぞ…!!?泣くなよ…悪かったから…」


「私の恋人になって!」


「はえ!?」


「いい加減名前を教えて」


「全くもって意味がわからん女だ…まあいい…話を聞こう…俺の名は……………」






〜story end〜



あとがき





やっと目標である完結まで書けたぞーーーーー!!!!


12月頃から色々、精神的に辛い事が頻発し

書かないと……書かないと……と朝起きて昨日書けなかった事後悔したり。


下手…読まれない……なんで俺はこんな事してんだろう…

なんて…趣味なのに何故苦しんでたのだろうか



内容としては昔からあるパターンを逆手に取ったカウンター作


主人公最強→主人公弱くしよww


ちょっと助けたら初対面で惚れてくるヒロイン→初対面で主人公殺しにくる


惚れられてるのに気が付かない鈍感主人公→積極的に自分からガツガツ行くかw


ヒロイン以外の美女にも好意を持たれるハーレム→子供以外の主要女性はヒロインただ一人!


惚れてくる美女→ムキムキのオッサンに惚れられおっさんずラブww


最初に転生しファンタジー世界へ→エンディングで転生!


等など!天の邪鬼なアンチテンプレ!


こう書くと作者はテンプレ嫌いで流行りも嫌いと思われるでしょうが

実はテンプレ展開好きだったりします。


ただ……これだけ似たような話が溢れるウェブ小説界で同じ雛型で書いたとしても


経験も無い自分より上手く面白く書ける作者は山程存在していて

同じ展開だと飽きているというのもあり


自分が読みたい物を好きに書いてみることに

そして地味に大昔…神話時代からあるテンプレ


英雄旅路(ヒーローズジャーニー)


を意識して話の構成を考えたりしてました。



まあ…読まれない!


[祝!10万PV達成!]


なんてSNSで見る度に、嫉妬でハンカチを噛みちぎる日々…


書いて公開しているのだから、読まれて共感されて面白かったと思われたいのは、どんな作者でも共通する想い!


だが数は問題では無いのだ、こんな拙い文章の小説でも伝えたい事があり、ブックマークは9件だが


確実に読んでくれてる人が居る!



世の中のリアルは大概クソでリアルでも大勢から肯定されたり、好意を持たれるなんて

そんなん、よほどのカリスマじゃないとあり得ない


それどころか悪意をぶつけて来られるのも珍しくない。


そんな時、少ないかもしれないけど…大切な人が自分の事を想ってくれる。


小さな…強い縁を大切にする気持ち…


そりゃ人気作者と比べたら少ないかもしれないけど

最後まで読んでくれた、希少な方々には本当に感謝しております。



何度も言いますが世の中クソです!誰でも悩みがあり辛い思いを持ってたりします。

だけど……楽観的に希望を持てば!きっと上手くいく!!


主人公のように、どんな時でも楽観的に投げずに希望を持って進めば、未来は開ける!


この小説で伝えたい事はそれだったりします。


貴方の未来に幸あれ!



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異世界最弱伝説 〜最弱の英雄〜 みりんタイプR調味料 @mirin-type-r

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