付箋11:食の軌跡~ジョイタイムの想い出~

 皆さんに質問です。


 初めて自分でお金を払い、何かを食べたのはいつですか?


 私の初めては中学3年の時だった。卒業記念として仲良し4人組で吉祥寺に遊びに行った。人生初、友達との遠出。遠出と言っても家から1時間かからない程度の場所だけど、嬉しくて楽しくて。その日にみんなで入った吉祥寺駅前のケーキ屋さん「レモンドロップ」。(現在は閉店しています。はい……閉店してしまいました……※付箋10参照)


 とても美味しかった。こんなに美味しいケーキを食べたのは初めてだ、と感じた。


 初めて友達同士で店に入り、

 自分で食べたいものを選び、

 お金を払う。


 ものすごくドキドキしたし、なんだか大人になった気分だった。いつもならお小遣いが無くなるのが嫌で財布の紐をかた結びしている私なのに(笑)その素敵なシチュエーションに酔いしれながらここぞとばかりに美味しい時間を満喫していた。


 高校生になると使えるお金も行く場所もかなり自由になった。都内の私立に進学した私は電車通学になり、お小遣いに加えバイトも始めてリッチになったのだ(笑)


 食べたいものを買い、店にも入る。帰りに友達と寄り道。とはいえマックやサーティワン、ケンタなど、学生御用達のファストフードだ。スーパーの中のラーメン店等もよく行った。


 そんな中、下北(下北沢)にパスタが美味しいカフェのようなレストランのような店があった。なぜその店を知ったのかは覚えていないが、友達と通うようになりその店の常連になった。比較的優しい価格設定の店だったが、高校生の自分たちにとっては贅沢をしよう、という感覚で通っていた。


 高校生の(私の)食欲は凄まじく、ここでパスタを食べ甘いものを食べ、帰宅してからも晩ごはんを食べてスナック菓子まで食べていた(ぽっちゃりMAXの生活だったのであくまでも個人の話です※付箋5参照)


 それは置いといて(笑)


 高校卒業後は保育士になる為に専門学校へ進んだ。この頃は友達との遊びももっと深くなり、それと同時に友会というものも頻繁にあった。バイトは専門学校で紹介された保育の仕事をしていた。


 学校へはお弁当を持っていく日もあれば何かを買って行く日もあったり、友達と学食に行ったりお店へ食べに行ったりとまちまちで、バイト代はほぼ食費で消えていった。そして、私はこの頃に初めてジョイタイムと出会う。


 渋谷にあったファミレスだ。ジョイタイ、と呼んでいた。

 

 初めてジョイタイに行った時の事はもう思い出せないが、足しげく通っていた。学校帰り、夜遊んだあと、何も予定がない時も。


迷っても

迷わなくても

ジョイタイム


そんな存在だった。


 専門学校を卒業後、就職。勤務先は都内某所。仕事を始めると行く店もだいぶ変わった。飲み会や仕事終わりのご飯会、気になるお店の新規開拓等、行動範囲も視野も広がりを見せた。ファストフードももちろん食べる時もあったが、学生の頃とは違う感覚だった。


 でもジョイタイだけは別だった。何故か無性に食べたくなる衝動にかられるのだ。もうあの頃のようにお金が無い学生では無いけど(そうだ、ジョイタイム行こう)となるのだ。


 あのハンバーグの味や100いくらかのコーンスープも嬉しかった。友達とこの店で、今思えばくだらない事で悩んだり泣き出したり笑ったり。でも当時の私たちにとってそれはとても大切な話で。日々そうやって時を重ねてきたこの場所は心の故郷のような存在だった。


 時は流れ、職場も変わり、行く店もどんどん増え、私が登った大人の階段も少し上の方になったある日、


 (そうだ、ジョイタイ。久しぶりにあのハンバーグ食べたいな……)


 ふと思い出し無性に行きたくなった。私はすぐ(まだ営業しているのだろうか)とネットで調べた。が、時すでに遅し。既に無くなっていた。2011年に閉店されたそうだ。


 その時の私の気持ちは(はい、お察しの通りです)※再び付箋10参照(笑)


 ……皆さんにはそのような思い出の場所はありますか?


 これを読んで何かを思い出し、まだその場所があるのであれば足を運んでみてはいかがですか。


 自分が歩んできた食の軌跡を、是非振り返って味わって欲しいなと思います。


 そして(初めて自分でお金を払い、何かを食べたのはいつだったかな)と、思い出してみてはいかがでしょうか。


 きっと今の自分が(うん!そうそう!あれ美味しかったよね~!)と、時代時代の自分と対話し、美味しさに共感する事でしょう(……私だけか(笑))




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心の付箋紙たち 杉の樹 @suginoko0319

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