現場監督
ねぇ、知ってる?
実は最近、怒号が聞こえるのよ。あら、もしかして心配させちゃったかしら。ええ、私にではなく。怒られているのは、きっとあの子ね。正面に見える建物。前は尖った印象のある子だったけれど、最近は随分丸く……いえ、四角くなったみたいね。怒号のお陰かしら。今もあちこちから怒号を飛ばされて。一体、何をしたのかしら。いいえ、ダメね。詮索は。きっと色々あったのね。少し騒がしいけれど、たまには賑やかなのも悪くないわ。
ピッ
あら、来たわね。貴方、最近いつもこの時間にコーヒーを買いに来るわね。そう。丁度、怒号が飛び始めた頃からかしら。実はね。私、不思議に思っていることがあるのよ。貴方が私のところへ来ると、なぜか怒号が聞こえなくなるのよ。不思議ね。もしかして、貴方は何か特別な力を持ってるのかしら。ふふっ。何にしても、貴方がここに来るのが最近の楽しみになっているのよ。だからそうね。貴方にはお礼に、【当たり】をあげるわ。
……………………
ごめんなさい。死力は尽したわ。でもこればかりは、私にもどうすることもできないの。ごめんなさい。本当に、どうにかならないのかしらね。この【当たり】って子。どうも私とは相性が悪いみたいなのよ。反抗期かしらね。でも安心して。その代わりに。いつもより、あったか~いにしておいたわ。
「あつっ」
いつもご苦労様。何に苦労しているのかはわからないけれど、貴方はいつも疲れているわね。心配だわ。助けてあげたいけれど、見ていることしかできない無力な私を許してちょうだい。
カランッ
「よしっ」
でもね。その決意を込めた鈴の音のような声と。白い息を吐いて少し凹んだあの子を見上げる貴方の横顔。とても素敵よ。さぁ、頑張ってらっしゃい。同じ女として、応援しているわ。
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