赤信号


ねぇ、知ってる?

私って、あることが起きるとすごく注目されるのよ。私よりも高いところにね、赤や黄や緑に光る機械の子がいるの。その子が赤に光った時、私の前にたくさんの機械達が現れるのよ。


でもわかっているわ。貴方達が私を見てるんじゃないってこと。貴方達、車っていうんでしょう? それも、貴方達からは人が出てくるんでしょう。びっくりよ。


どうして機械の貴方達に入っているのかしら。もしかして、そういう仲なのかしら? あら、ごめんなさい。そういうのは野暮よね。ごめんなさい。若い子達を見てるとついね。


でも、貴方達に本当に謝るべきことは他にあるわよね。意地悪なこと言ってごめんなさい。実は、わかっているのよ。貴方達の中にいる人達はみんな――私を見ているんでしょう。


あの赤い光は、私へのスポットライトね。でも、赤というところが残念ね。私の体も真っ赤に彩られているのに。さらに赤で照らされたら、私が照れているみたいで少し気恥ずかしいわ。機械の貴方達の中にいるのは、私に見ていることを気付かれたくなくて隠れているのね。ごめんなさい、機械の貴方達には本当に悪いことをしているわね。ごめんなさい。人気者は辛いわね。


ブゥーンッ


あらあら。私に気付かれたのがわかったのかしら。みんな逃げていってしまったわ。いつもそう。あの光が緑になるとみんな急いで帰っちゃう。もっと居ても良いのにね。…………もしかして。緑の光を出してる機械の子、貴方も私が? どうしましょう。私ってば誰か一人を選ぶなんてできないわ。でもね。私はいつだって貴方達の味方よ。



あら、また赤になったわ。ふふっ、わかってくれたのね。ありがとう。

ほら、みんな。そんなところで見てないで。もう少し寄って来ても良いのよ?

……………………良いのよ?





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