自動で販売する機械の戯れ言葉

わしゃまる

自動で販売する機械


ねぇ、知ってる?

私みたいな角張った体で、でも艶ならそこらの子には負けない。頑張る貴方にそっと飲み物を置いてあげる女ってね。自動販売機っていうらしいのよ。


でも私、常々思ってるのよ。なにかしらその名前、って。いいえ、名前なんていいものじゃないわ。自動で販売する機械よ? ただの説明文じゃない。だから私、自分で名前を考えてみようかなって思うのよ。なにがいいかしらね。


…………


あら?

私に用があるのね。どうしたのかしら。ううん、言葉はなくていいわよ。でも、ジッと見つめられるのは少し照れるわね。貴方ったら、結構いい男だから。


ピッ


ふふっ、指先で触れられるとね。その人によって冷たかったり温かったりするのよ。その人の体温が伝わるの。


でね。その温度と正反対の飲み物を選ぶのよ。不思議よね。自分にないものを求めるのかしら。

あら、それって何だか素敵ね。


みんな、私と出会って少しだけ成長するのかしら。いいわね。それじゃあ私のことはこう呼ぶといいわ。


…………


やっぱり、あまり思いつかないわ。いいわ、私のことは自動販売機って呼んでちょうだい。でも、自動なんかではないのよ。ちゃんと貴方の選択が未来を照らしているのだから。あったか〜いでもつめた〜いでも。それ以外でも。貴方の未来は貴方が決めているのよ。私はそれをそっと後押しするだけなんだから。それでも私を自動販売機なんて呼ぶんだから、貴方達は本当に謙虚ないい子達ね。


カランッ


頑張るのよ。私はいつでも、ここにいるからね。





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