懐の深い味のある童話

  • ★★★ Excellent!!!

本作の作者様の作品は、ライオンの王様やフクロウの哲学者、ネズミの笛吹きなど童話をベースにした、どの話も短くまとめられた作品です。古典童話の下地があるからか舞台設定はストンと入ってきてすぐに内容に没入できます。

しかしながら、書ききらないことで余白を残すラストに、読み手に読後いろいろ考えさせる物語です。道徳の教科書に使うと良いなと思いました。

本作も笛を壊した男はそのあと懲らしめられなかったのか? とか、笛は結局元に戻らなかったのか? と色々考えさせられます。
でも、私たちの世界だって世界遺産が爆弾で破壊されたり、ミサイルの雨を降らせた当事者が懲らしめられていなかったり、と思います。
ラストの子供たちとネズミの歌は市民団体の草の根活動を想起させられました。けして勧善懲悪ではない童話。どこか私たちの社会を映している童話。
味があって実に良いなと思います。