笛吹きネズミ

@peacetohanage

第1話

清らかな音色で歌うのは誰?

そう、ネズミの笛吹き。

町の少年少女はその姿が可愛いらしくて、そこかしこから集まって来ます。

少年少女の人集りが出来た物ですから、一人の怪しい男がそこへ近付いて来ます。

ネズミの笛吹きを見るなり、小さなその肩を叩いて音色を止めてしまいます。

「おい、お前!ネズミの笛吹き。お前を有名にしてやるかわりに、今から俺に従え」

しかしネズミの笛吹きは首を左右に振ります。

「私は衣食住にも困っていませんし、好きな時に好きなだけ吹くのが好きなんです」と答えます。

怒った男は小さな笛を奪い取ると、地面に叩き付けて踏み潰してしまいます。

笛は一巻に粉々です。

嘆き悲しんだネズミは打ちひしがれると、そのまま町中を駆けて行き、森へ逃げ帰ってしまいました。

町の少年少女は自分の家に帰ると、一生懸命笛を探しましたが、ネズミに見合う小さな笛は誰一人として見つかりません。

けれど皆は逃げてしまったネズミを追って、こぞって森へ向かうのです。

ネズミは小さな切り株に腰掛けて、一人ぼっちおいおい泣いていました。

少年少女は駆けて行き、口々にネズミを慰めます。

そうしてネズミの笛はもう失くなってしまいましたが、かわりに皆で歌を歌う事にしました。

幾つかの少年少女は持って来た笛も吹き鳴らします。

森に響き渡るその音色と言ったら、実に清らかなのでした。


おわり

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