第60話 秋坂さんの「大いなる疑問を、大いなる自分語りに埋めてみた」へのお返事

大いなる疑問を、大いなる自分語りに埋めてみた/秋坂ゆえさん

https://kakuyomu.jp/works/16818093073536909913/episodes/16818093074644518621


 わたしも自分語りから入ってみましょうか。


 そもそも、文章を書くというのはどういうことなのでしょう。わたし自身にとっての話をすると、「自分の考えを伝える」手段ということになります。

 

 これだけ言いますと、「わたしが一方的に考えを伝える拡声器」のような解釈をされると思いますので補足していきたいと思いますが、わたしにとって文章を書くというのは、相手を励ましたり、相手の立場で喜怒哀楽を共有するためであるという方が正しいかもしれません。そのために考え、悩んだものを言葉にするために文章という手段をとっているのだと思います。


 ご存知の通り、わたしはギフテッドでして、人より少しだけ物事の理解力や処理能力が早い分、相手の事、特に感情面を理解する能力がおそろかになることがあります。ゆえにそのギャップをどう埋めるかということを高校生くらいから考えるようになりました。


 そこでたまたま出会ったのが大学受験用の小論文でした。わたしは理系ですので、息抜き的に始めた小論文なのですが、教えてくれた予備校の先生が非常にありがたい存在で、「自分が考えたことを整理して相手に伝える」大事さを教えてくれました。それも論理的なものだけではなく、感情的なものを伝える術を教えてくれたのです。大学受験程度では「民主主義は必要か?」に対するイエス・ノーいずれかを論理的に説明すれば十分なのですが、その先生は「相手に感情を読取り、相手の感情を踏まえ自分の考えを述べる」必要性を教えてくれました。相手に困っていることがあると感じれば、何故困っているのかを考え、論理的な解決手段を提示する前に、感情面の解決をする(癒しや救いを与えるという言葉になるのかもしれません)ことが大事だと習ったわけです。


 つまるところ、文章(わたしたちは小説になるのでしょうか)を書くということは、読者の心に何かを届けることではなく、読者の心を引き出すことだと考えております。読者の安らぎであったり、感動であったり、悲しみであったり、愛おしさであったり、あらゆる感情を優しく包み込むために書くということです。


 ですので、度々批判の対象になる、「文章の見てくれなど何の意味もない」「読書量などハンデにはならない」と言っているのは、わたしにとって物を書くというのは表現するよりも、相手の声を聞く方に重きを置いているからなのです。


 カクヨムでも、作品へのコメントや近況ノートへコメント、他の作家さんの作品を通して、「この人が今どんなことを考えているのか。何を求めているのか」だけを見ています。そして、例えば、「背中を押してあげればもっと素晴らしチャレンジができるのではないか」とか、「ちょっとした問いかけをしてあげるだけで、自分で気がついて前へ進めるのではないか」とか、そんなことを思っているのです。もちろん、作品自体を楽しませてもいただきますが、わたしは常にその向こうの人を見ているような気がします。


 本題に入りましょう。なぜ、秋坂さんにお声をかけたのか。上記の通り、文章が優れているからでも、小説が面白いからでもないということです。(もちろん上手ですし面白いですよ!)

 そんなことよりも、わたしは秋坂さん自身を見て、「この人の先にあるもの、足元にあるものを見てみたい」と思ったからです。そのために必要があれば、何らかのアクションをしてきた、というわけです。 今回のアンサ―もその一つかもしれませんね。


 わたしは小説を書いている多くの人とは相容れない考え方をしているような気がします。妄想や空想で物を書くことができませんし、文学の素養もありませんのでアカデミックな小説も書けません。ただ、「読者の○○な気持ちを引き出したい」、「読者が何度も読みたいと思ってくれる」、「読者自身がわたしの小説を通して感情を出したくなる」ものを目指して書いているだけだと思います。大言壮語も甚だしいですが、ぶっちゃけてしまえば、「教会のような、誰かにとって救いになるような存在」というのが、わたしの文章の理想です。


 個人的な希望を申し上げますと、わたしが秋坂さんに期待しているのは、「普通の人では経験できないポジションからの世界を、読者に見せてあげること」です。文章の面白さや技巧などどうでもいい。秋坂さんの生きざまってやつを読者に叩き込んでほしいなと思います。そこには遠慮や上品さなど不要です。せっかくここまで生きてきた一度だけの人生。お互い毎日が黒歴史といわんばかりに、笑いながら腹を晒していこうではありませんか。


 秋坂さんは自分が第一の人ではないと思います。だからこそ、自分の悩みや苦しみを「読者のため」に語ることができるかと思います。そういう人の前には素敵な読者が現れてくれます。それを信じて、これからも書き続けてほしいです。


(返事より)


※秋坂さんのお役に立てる回答になっていればよいですが。(2024.3.31)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る